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僕達は指で話し合おう  作者: 憲十
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第1戦 生き残って、ここから出る為に。

みなさんこんにちは、憲十です。

私としては2作目となる作品です。

こちらは作者がなるべく書き続けられるまで、終わりのないような小説になりますので末長くお付き合い頂けると幸いです。

では本編の方を、どうぞ。

現代社会、戦争というものは殆ど無くなった。人を撃ち殺し、建造物を破壊し、物資を浪費するのは無駄であるという考え方が主流になった今、戦火を交えるのは愚かであるという思考が常識となったからだ(ちなみにそのような思考から戦闘オタクやガンマニアが以前と比べて異常に増えた。僕もその1人だ。)。だから僕は、こうやってこたつで年越し蕎麦を食べながら歌番組をのんびりと見ている訳で、自堕落した中学三年の冬休みを満喫しているのである。

「武士〜。そろそろ行くわよ。」

すでに着替えを終えていた母さんが間延びした声で出発を告げる。

そう、今日は俗に言う大晦日だ。人々は蕎麦を食べ、寺へ行って除夜の鐘を鳴らす。うちはこれからその除夜の鐘をつきに行くのだ。

「分かった〜。」

と、こちらもまた間延びした声で答えた後、名残惜しさを残しながらこたつから這い出る。自室へ行き、軽く着替えを済ませて玄関で待っている両親の元へと向かう。うちはひとりっ子なのでこれで全員だ。眠気を噛み殺して靴に足を突っ込む。

ゆったりとした歩調で寺へと向かう。夜の街は都会の喧騒を忘れさせるような静けさを孕んでいたが、寺へ向かう人が多いせいか、いつもより明るく見えた。

「あっ、望月さん!毎年どうもです。」

つるっ禿げの住職さんが満面の笑みで笑いかけてくる。毎年家族でここに来ているのですっかり顔馴染みだ。

人もだんだん集まってきて、いよいよ24時。そして、一番最初の人が鐘をつく。静寂を打ち破るようにして響く音は、まるで新年の合図であるかのようだった。

そしていよいよ自分の番となる。目を閉じて、来たる新年への希望を胸に力一杯鐘を鳴らす。

腹に響く音。耳に残る余韻。

そして、ゆっくりと目を開けようとした刹那、僕の意識は音と共に闇へと吸い込まれていった。




「お目覚めですか、お兄さん。」

ねっとりとした声が耳に入る。突然のことに僕は理解が追いつかなかった。

ここはどこだ?僕はなぜここにいる?みんなはなぜいない?

そして、こいつは誰だ?

「まぁまぁ、そう警戒しないで下さいな。ワタクシは君と喧嘩をする為にここに来たんじゃないんですよ。」

挑発するような言い回しでそいつは語りかける。

「ワタクシにはアナタの言いたい事が手に取るように分かります。ククク。いいでしょう、一つずつ説明して差し上げましょうか。

まずここはどこか。ここはアナタが住んでいた世界と一つ下の世界。ある人はここを地下世界、また別の人はアンダーワールドと呼びますね。まぁ正確には完全な地下という訳ではなく空間を捻じ曲げて僅かな地下スペースにに広大な地上世界を再現したものです。ワタクシに言わせてみれば亜空間ですよ。政府的には『ウォーエリア』、なんて物騒な名前が付いているらしいですけどね。」

実に楽しそうな口調で語りかける、まるで赤ん坊に言葉を教えるかのように。確かに分からない事だらけだし、いきなりそんな事を言われて納得出来るわけもない。だが、舐められているようで無性に腹が立った。

「次はアナタがここに居るワケですね。ククク。おめでとうございます!」

「は、はぁ?」

いきなりおどけた様子で叫びだした。こいつのテンションには付いていけない。

「アナタは世界を背負うヒーローになったのですよ!この『ウォーエリア』では現実世界では決して起こる事のない戦争が繰り広げられます。上では戦争は廃絶された、なんて言われてますがそれは真っ赤なウソ!ウソウソウソなのです!実際はここで行われる戦争が上の世界の代理戦争となり、平和が保たれているのです!」

な、何を言い出すかと思えばとんでもないことを言い出した。

「何を言っているんだお前は?そんなのあり得るわけないじゃないか。そんな事、政府が認める訳ないだろう。大体、僕が上の世界から連れてこられたなら僕を探して親が捜索願いを出すはずだ。早くここから解放しろ。さもないと誘拐犯として捕まるぞ。」

全くこいつの話は馬鹿馬鹿しい。早く帰りたいと思ってイライラしながらまくしたてる。するとそいつは事もあろうか吹き出した上に粘っこい口調で続ける。

「プッ…ハーハッハッハ!愉快な人ですねアナタは!上ではアナタのクローンが元気に生活していますからアナタの親が迎えに来るはずはありません。アナタはここで戦う運命なのですよ!」

……?ウソだろ?クローン?確かに現在、クローン技術を用いて牛などが生産されていると聞くが…人間に適用しただと?

ん?でも待てよ?

「ならクローンを戦わせればいいじゃないか。わざわざ僕を連れてくる必要はないだろ?」

「オリジナルのアナタ方は人間生活を通して培った感情があります。恐怖、怒り、喜び…それらは決して計算でも作り上げられたクローンにも再現出来ません。だからこそアナタが連れてこられたのですよ。まぁ、安心して下さい。20歳になったらきちんと解放して差し上げます。もちろん、そこまで生き残れたら、の話ですがね。ククク。」

なんだと?今20歳とか言わなかったか?今僕は15歳だから…

「待ってくれ、あと5年もあるじゃないか!5年も戦争をして生き残れるはずがないだろ!死にたくない!やめてくれ!」

「その恐怖に満ちた顔、うーん!最高ですねぇ!大丈夫です。現に生きて帰って人はたくさんいます。アナタはただ、人を殺していればいいのですよ。それともなんです?殺されるのが嫌ならここで自殺すればいいじゃないですか。事実、アナタの一つ前にここに来た人は自殺していきましたよ。ククク。」

狂っている。こいつには何を言っても通用しない。これ以上こいつと話しても無駄だ。

解放は無理。ここで死ぬなんて最悪。ならば、どうにかして5年間生き残って、地上へ帰らなくてはならない。それしか道がないのなら…。

「……分かった。その代理戦争とやら、やってやろうじゃないか。そして、生きて帰ってやる。そして、こんな代理戦争なんてふざけたことをやらせている政府を叩き直してやる!」

僕はそいつを睨み返して叫んだ。

「いいですね!その意思!ここまできっぱり割り切れる人は久しぶりですよ全く!そうと決まれば次は転送ですね。アナタの地上での国は日本でしたのでもちろん日本所属です。まずは歩兵として経験を積むと良いです。

ククク。さぁて!生きて帰ってこれるかはアナタ次第。無事に帰ってこれたらまたここでお会いしましょう!それでは、ご武運を祈りますよ。クックックッ。」

そして、僕の視界は再び闇に包まれた。


「………………なさい。……く起きなさい。早く起きなさいと言っているでしょう!」

「うわぁっ!?」

意識が戻るとそこは、映画やドラマに出てきそうな司令室のような場所だった。

「こ、ここは……?」

「君が新入りね、初めまして。私は真島紗英、君が所属する日本軍の司令官よ。」

し、司令官…。よくわからないがとても偉い人だということは分かった。

「まだ全然よく分かっていない、という顔をしているわね。君が配属されるのは第38戦闘群よ。そこの兵士長に色々教えてもらいなさい。で、その兵士長を呼び出しているのだけれど…遅いわね。」

そんな話をしていると司令室の扉が開く。

「すみません、遅れました。第38戦闘群兵士長、荒川尚登です。この度は新しいメンバーを迎えられ、嬉しく思います。」

尚登は一通りの事務的なセリフを喋った後に一礼をした。

そしてこっちに向き直り爽やかな笑顔を浮かべた。

「望月武士君だね?話は聞いているよ。これからよろしく。」

と、言いながら右手を差し出してきた。

「よ、よろしくお願いします!まだ右も左も分かりませんが、色々教えていただけると嬉しいです!」

よく分からないが、この人は信頼できそうだ。自分のチームのリーダーらしいし、うまく付き合っていこう。

するともう1人、司令室の扉を開けて、屈強な印象を与える男が入ってきた。

「……また第38戦闘群に補充か、荒川。お前のところはやけに人員補充が多いな、どうしてだ、おい?」

すると、尚登はにこっと笑い

「また僕に突っかかるのかい、高嶺君は?喧嘩は趣味じゃない。やめてくれよ。」

と、爽やかに対応した。

「……相変わらずいけ好かない奴だな…。表面だけのいい子ちゃんはいい加減やめておけ。それと、おい新入り。」

「は、はいっ」

まさか話を振られるとは思わなかったので裏声になってしまった。

「人の本質を見抜け。何も第一印象が全てではない。決して騙されるなよ。」

明らかに尚登を意識した発言だ。この人は尚登の事を敵視しているのだろうか?だが、あまりいい印象は受けない。高嶺、か。あまり近づかないようにしよう。

「話はもういいかしら?私からはこれくらいだから、そろそろミーティングを終わりにしたいのだけれど。」

真島の声が響く。この後の詳しいことは尚登から聞けということなのだろう。

「了解です。それでは失礼致します。」

尚登と連れ立って司令室を出る。最後まで高嶺が睨んできたが、知らないふりをしておく。

「あ、あぁ高嶺君は悪い人ではないんだよ。嫌いにはならないでくれ。」

尚登は気を使っているが正直、彼も高嶺の事を良く思っていないはずだ。

と、その時


「緊急アナウンス、緊急アナウンス。

ロシア軍の攻撃です。1時間後に北海道本部への攻撃が開始される模様です。現在指令本部にいるメンバーは全員戦闘準備を開始して、北海道戦線へ出撃して下さい。繰り返します…」


「おっと、いきなり防衛か。現在、北海道戦線では日本軍が負け気味でロシア軍に制圧されかけているんだ。君も僕の戦闘群なんだし、初戦闘に行ってみようか。大丈夫。メンバーは全員戦闘に慣れたエキスパートばかりだ。準備をして、前線へ向かおう。」

い、いきなりかよ…

戦争をするとは分かっていたが、やはり受け止めきれていない部分があった。現実味を帯びていないし、銃自体の握り方はガンマニアなので知ってはいるが、実銃を撃ったことはない。せいぜいサバゲーのトイガンくらいだ。

人を殺す、殺されるというのは恐怖を感じる。一歩間違えれば自分も死ぬ。

「大丈夫。君は僕が守るから、安心して。」

なんてイケメンなんだ。爽やかすぎる。

まだ怖いけど…尚登と戦ってみよう。

生き残って、ここから出る為に。

戦争についての話を前から書いてみたかったので今回、書かせて頂きました。

まだ初回なので戦闘は全く出て来ていませんが、次回からどんどん出て来ます。

殺伐回の他にも日常回も出て来ます。

まだ拙い作家ですが、何卒よろしくお願いします。

ちなみにこの小説に関しては作者である私、憲十が好き勝手にこの作品の感想を連ねるだけの小説もございますので、こちらを読み終えたら作者ページからそちらを読んで下さると幸いです。ではまた次回お会いしましょう!

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