No.14
結局今日の所は伯爵の下心満載の提案にのることにした。俺たちは現在一銭も持ってない無一文なのだ。一旦街を出て野宿しても良かったのだが......スカーレットが風呂の誘惑に耐え切れそうになかったので野宿は無しにした。
一応山に居た時、簡易の風呂は作っていたのだが入ってくれなかった。いや....あれを風呂と言ってもいいのか?たまに変な臭いガスが出てたりしてたな。何だったんだろうあのガスは?俺はてっきり硫黄だと思っていたけど、あのガスの近くの植物とかが魔物化してたな。
まあ、それはどうでもいいことだな。
というわけで現在伯爵の城の門前にいるわけだ。
「おーでけぇ城だな。それにしっかりと防衛出来るように設計されてるな。これなら敵の侵攻を分散させて時間を稼げるいい城だ。」
「お主は何処をみておるんじゃ。儂の自慢の庭を見んか。」
「まあ、いい庭だな。無駄に派手なのは無意味だと思うけどな。」
「まあよい。ようこそ我が城に。」
ギギギと金属の軋む音をたてながら鉄の門が開く。
どうでもいい話だが俺はこの金属の軋む音が好きだ。ロマンを感じるからな。
「おかえりなさいませ。伯爵様、 クルル様、そしてフウスイとスカーレット様。」
「うむ、紹介しておこう、儂の執事のカルタスじゃ。お主らの事は先にマジックアイテムを使って伝えるおる。」
「いつ使っていたんだよ、フウスイだ。」
「.........スカーレットです。」
「では、カルタス。二人の部屋を案内しておいてくれ。」
城の内部もこだわっていた。そりゃもうものすごくこだわっている。
赤色という派手な色だが不快感のないカーペット,城には必ずなければならないと言っても過言ではない重厚感溢れる甲冑,恐らく名のある画家が描いたであろう滝の絵,天井にはこれまたデカいシャンデリア。
どれ一つとっても価値のある物なのだろう。
そして俺たちが今日寝る部屋。一度寝たら起きるのが辛くなるのが目に浮かぶふかふかのベッド。さらには小さいながらも風呂も完備してある。いい部屋だ。いい部屋なのだが....
「何でベッドが一つしかないんだよ。これじゃあ一人しか寝れねえじゃねえか。」
「...私は奴隷ですから床で十分です。そもそも奴隷がベッドで寝るという考え自体が異常です。」
「そういや今更なんだが奴隷の扱いって一般的にどんなんなんだ?」
「.........一言で言うなら物です。自由は一切なく、ただ命令に従うことしか出来ません。
食事もまともなものを食べれず、何をされても拒否できず、最後はゴミのように棄てられる存在です。」
「.........お,おう、今更ながら酷い扱いされてるんだな奴隷って。
とりあえずベッドはスカーレットが使っていいぞ。」
「!?」
「俺は天井に張り付いて寝るから問題ない。」
「え......え⁉︎」
「『蜘蛛の糸』」
このスキルはとあるアメリカンヒーローのように蜘蛛の糸を出せるスキルだ。
糸の長さ、太さ、粘着力などを自由に変えれるためハンモックのように糸を出して寝ることが出来る。なので糸を出して天井にハンモックを作っている。
山に居た時、このスキルを使って様々なことが出来た。獲物を捕まえるように粘着力を高くして張り巡らしたり、強度を上げてロープ替わりに使ったりしていた、ありがたいスキルなのだ。
欠点として、蜘蛛の糸なので火に弱かったのが問題だったが、熱耐性の効果をつけることによって火に強い糸が出来る様になった。
「......奴隷にベッドを使わせる主なんて聞いたことがないです。」
「他所は他所、うちはうちだ。」
「それでカルタスよ。ギルドからの報告は何じゃ。」
「ギルドからの報告によるとフウスイという冒険者が来て、他の冒険者に絡まれて......ものすごい殺気を放って帰って行ったという報告です。現在ギルドでは、手を出すことを禁止しているそうです。」
「あの時に感じた殺気はやはりあやつだったか。少し時間をかけて、ギルド長らと話し合う必要があるのう。」
(儂が生きてきた中で、あれ程の素質を持った者は初めてじゃ。いざという時にはあやつの力を借りる為にもここを拠点にしてもらう必要があるのう。)