No.10
フウスイが去って、しばらくたった冒険者ギルドではようやくフウスイが来る前の賑わいを見せ始めていた。
しかし先ほどとは違う所が一点。
それは受付嬢達の後ろの壁に一枚の注意事項が貼られていた。フウスイが去った後、ギルドの職員が慌てて書いたものだった。
その内容は
ーーーーフウスイという冒険者に喧嘩等をしようとすることを固く禁ずる。ーーーー。
「はぁ、まさかあんなにビビるとは思わなかった。」
別に威圧したわけでもなく敵意を向けたわけでもない。ただ確認しただけだったのになー。そんなに怖かったのか?
昔、保育園で職業体験をした時、子供が足を蹴ってきたから、睨んだら泡を吹きながら気絶したけど......そこまで強面じゃないはずなのに何故だろう。わからないな。
一方その頃スカーレットは...
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ。
ものすごく震えながらフウスイの後をついて来ていた。
(さてと、まずは宿。その後にでも必要なものを買うか。後、スカーレットどうした!
震えすぎだろ。もしかしてさっきのが原因じゃないだろうな。)
とフウスイが考えていた時だった。
プップ プップ プップ プップ プップ
存在を忘れかけていた携帯が鳴り始めた。
「ん?こんなのあったか?......最初の方に貰ってたな。もしもし。」
「もしもしフウスイさんですか。」
「えーと.......確か閻魔大王だっけ。」
「はい閻魔大王です。あのさっき何かしましたか?」
「いや、特に。」
「.........先ほどやってきた死者の前世の行いを見ていましたら、その死者の死因があなたの気が原因でした。」
「............マジ?」
「マジです。頼みますから無闇やたらに死者を出さないで下さいね。」
「ちなみに俺の気が死因なのはそいつだけ?」
「いえ...後10人くらいいます。」
「そいつらに言っておいてくれ。何故あれくらいで死ぬんだよ‼︎おかしいだろ。」
「貴方の存在の方がおかしいですよ。・・・その話は今度でいいとして、もう一度念を押して言いますよ、死者を無闇やたらに出すのは禁止ですよ。仕事増えるのは嫌ですから。」
(最後本音出てたぞ。それと俺の存在がおかしいって泣くぞ俺。)
微妙に涙目になっているフウスイだが、ここでようやく宿屋の看板を掲げている店を発見した。
かなり昔に建てられた建物の様で壁などが変色しているが、建物自体はしっかりとしており、泊まるのに十分である。
最も泊まれなければ宿屋失格であるが。
キィー
扉を開けると、目の前は酒場であった。客はチラホラいる、もう少ししたら客で賑わいそうだ。
ここで思い出したことがあった...そう金だ。
スカーレットを買ったとき、洗脳して結局金を払っていなかった。『アイテムボックス』に有ったかどうか見てみるが無かった。
(完全に金を忘れていたな。通行料も払わないで良かったから忘れていた。というか普通金の存在を忘れるのか俺。
こうなったら山で採取していたもので売れそうなものでも売るか。
でも草とか果物ってそんなに高く売れるものなのか?前世ならマンゴー,メロン辺りが、高く取引されていたのだが。
とりあえずどこで素材を買って貰えるか聞くか、こういう場合、ギルドで買い取ってくれそうなんだが。
「ちょっと聞きたいことあるんだが。」
近くを通りかかったおっちゃんに聞いて見る。
「何だ?こっちは急いでいるんだが。」
「素材を買い取ってくれる所ってどこだ?」
「素材ってモンスターの素材か?」
「いや、草とか果物。」
「だったらここの店主に売って見たらどうだ。ここの店主は食えそうな物を買い取ってくれるからな。」
「へー。これ御礼な。謎の草。」
「おい、知らない草を他人に渡そうとするな。......待て、この草何処で手に入れた?」
「山で取って来た。取っちゃマズイものだったか?」
「マズくはないが......ちょいと着いて来てくれないか、見せたい人がいるからな。」
「面倒くさい。」
「頼む、着いて来てくれ。お前に取っても悪くないから。」
「......一応着いて行ってやる。」