第2話
静寂。
話が始まって20分は経過しただろう。新入生800人は校長先生のアリガターイお話を聞いていた。
既に新入生代表の挨拶は終えていた。新入生代表は柊友香という女子生徒。黒髪色白の《the清楚》と言った感じで巫女装束が似合いそうだな、なんて思った。顔面偏差値もゆうに70は超えていただろう。入学式終了後に即刻アタックするやつらがいるもしれない。そういう奴らは大抵、決まって振られるものだが。
校長の話の後は、担任教師、教科ごとにの教師の簡単な自己紹介があった。
その後は教室に移動、自担の自己紹介の後は、お決まり、生徒の自己紹介だ。
「都立西園寺南二中から来た桐藤紫苑です。中学では途中は野球をしていました。高校で何部に入るかはまだ考え途中です。今年一年どうぞよろしくお願いします。」
ごく普通に、無難に自己紹介をこなし、席に着く。
自己紹介の前に行われた席決めくじで紫苑は窓際最後列という「アニメで主人公が座ってる率No. 1」の席を勝ち取っていた。ちなみに紅とは少し離れてしまっている。亮は...興味ない。
続々とクラスの面々が自己紹介をしていくが、誰も仲良くなれそうなやつはいなかった。
ここ区立東山第二高校は「成績が中途半端に良い」いわば「リア充サイド」の人間が多く湧くのだった。残念ながら紫苑は非リア充サイドの人間だろう。
中学の時やっていた野球も「彼女と遊ぶから野球サボる」と発言した副キャプテンを殴っての強制退部だった。当時、かなり真剣に野球に取り組んでいた紫苑は副キャプテンの不真面目な態度が許せなかった。
しかし、今思い返してみれば、自分以外に真剣に取り組んでるやつなんていなかったし、たとえそこで紫苑が殴らずに、野球を続けていたとしても、思うような結果は残らなかっただろう。
地区大会一回戦勝てるかも微妙だったはずだ。そして、入学式の今日は、自己紹介で終了した。
入学式の放課後といえばやることの相場は決まっている。知り合ったばかりなのにも関わらず、男女で集まってファミレスやらに行くらしい。
この学校でも例外なく二十数人の男女が教室の中心に集まって話をしていた。しかし、紫苑はその流れには乗っからず1人、昇降口へと向かった。
紫苑には、わからない。なぜ、そこまでして異性と仲良くなりたいのか、友達を作りたいのか、目立ちたいのか。全く分からなかった。そうなってしまったのも自分の過去に原因があるとはわかってはいるのだが。
「あれー、紫苑ちゃん、帰っちゃうの?」
「お前こそいいのか?紅、合コンだかなんだか知らんが行かなくて」
下駄箱の前出紅が話しかけてきた。この感じから察するに教室に残っていたやつらと一緒に行かないのだろうか。
「えーだってあの人たち男女でいちゃいちゃするんでしょ?私あーゆーのキライ」
こう言ってしまうあたり紅も非リア充サイドの人間なんだろう。
「んー、じゃー紫苑ちゃん、一緒になんか食べて帰ろー☆」
語尾に星が付いているが気にしない。こいつはそういうやつなのだ。
「ああ、構わんよ。あとな.....その紫苑ちゃんって呼びなやめないか?道行く人がこっちを見ているんだが.......」
「えー、やだー紫苑ちゃんは紫苑ちゃんだもん!」
ちょっと何言ってるか分からない。理屈になっていない。でも紅はこういうやつなのだ。しょうがない。
「まぁ..いいや」
ありがとうございました。まだまだ続きます。