存在の音
文章が全体的に歪んでおります。
内容もくりかえし読まないとわからない恐れがあります。
意味はあえてぼかしてあります。
自己解釈でどうぞ。
「ねぇあなた。私の部屋の押し入れから変な音がするのよ、ちょっと見てきてくれない?」
妻は私の部屋に入ったそうそう言ってきた。
「変な音?」
私は趣味の執筆の手を止め、眉をひそめた。
「そうなのよ。なにかね、まるで鉛筆で何かを書いているような音がするの。カリカリカリカリって」
「ネズミか?」
「もしかしたらそうかもしれないわね。でもちょっと怖いから…」
お願いっ、と妻は私の前で両手を合わせる。
「…仕方がないな」
「ありがとう」
とりあえず早めに済ませるか。私はそう思い、すぐに妻の部屋の押し入れの前まで来た。
確かにカリカリと音がする。
「ね、聞こえるでしょ?気味が悪いわ」
「ホントだな」
まぁ、ネズミだろうな。私はそう思いふすまを開けた。
* * * * * * * * * *
自分は押し入れの中で勉強するのが好きだ。
何かに集中したいときはいつも決まってここで過ごす。
押し入れ内の勉強は持ち運び式のLEDライトをテキストにかざして、ノートに写していくのくりかえし。一見めんどくさそうに見えるけど、自分にとってはこのやり方が一番集中できる。
今やっている教科は数学だ。
「あーあ、簡単な問題ばっかりだなぁ。もっと難しい問題はないの?」
けど教科書には常識範囲の問題しかなく、とびっきりずばぬけた奇想天外な難問なんてどのページにも書いていなかった。
こんなんじゃまた次のテスト100点だな。
つまんないの。
自分は残念そうに教科書を閉じた。
その時、いきなり光が差し込んできた。
* * * * * * * * * *
押し入れの中にネズミはいなかった。しかし、なにも存在しなかったわけではなかった。
見たこともない少年が、中で寝転がっていた。
「だっ、誰だ!」
私はその少年に向き合って叫んだ。知らない人間が勝手に人の家で何をしているんだ、と続けて言おうとしたとき、とんでもない答えが返ってきた。
「父さん?」
は?
「あ、母さん。どうしたのいきなり血相を変えて」
なっ、何を言っているんだこの少年――
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
妻の叫び声とともに、自分の顔の横に何か飛んできた。
謎の物体が少年の顔面に当たる。
メキッ、というむごい音が響いた。
私はすぐに後ろへ振り向いた。
「どうしたんだ!あまりにもひどいぞ今の行動は!」
「幽霊よ!あれは幽霊よ!」
「うるさい落ち着け!」
「幽霊よ、ユウレイ」
すさまじく発狂する妻。幽霊幽霊とやたら叫びながら、押し入れの方を指さしし続ける。
幽霊なんかいるわけがない。それよりもさっきの少年は大丈夫か。
妻の投げたものが顔の真ん中に直撃し、変な音がしていた。きっと鼻の骨が折れたに違いない。
たいへんだと思い妻を抱きかかえながら押し入れを見る。
いなかった。少年はどこにもいなかった。
部屋の隅に、醜く変形した椅子が転がっているだけ…
* * * * * * * * * *
痛いじゃないか…
お母さんひどい。
僕を見たとたんいきなり物を投げてくるなんて。
自分の足には大量の血が垂れていた。それらが全て彼の鼻から出たものとは友達が見たら信じられないだろう。
痛い、痛い、痛い。
お母さんなんて大っきらいだ。いつも僕に優しくしてくれたのに、なんでこんなことをするんだ…
昨日だって僕がテストで満点取ったことをあんなにほめてくれたじゃないか。
その前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日も――――――
あれ、自分っていつ誕生日だっけ。いつ生まれたんだっけ。
満点取ったのはいつだっけ。学校に行ったのはいつだっけ。ご飯を食べたのはいつだっけ。本を読んだのはいつだっけ。勉強したのはいつだっけ。お父さんが僕にランドセルをくれたのはいつだっけ。お母さんが褒めてくれたのはいつだっけ。
あれ、自分って――――――――
理解できた人は天才に等しいです。




