プロローグ
魔王討伐を目標に数えきれない冒険者達がパーティーを組み、旅に出る世界。
数千万の魔物の軍勢を従える魔族の王、魔王が数十年前この地に復活した。
人類は冒険者ギルドを設立した、そしてスキルを会得した者達の殆どは冒険者になる。
「大人になったら! 俺達でパーティー組もうな!フィーシィ!」
俺の名はキイ・クロム。 真っ白な髪に無造作に伸びた癖っ毛が特徴的。
俺の夢はただ一つ! 勇者になること!
そして世界を救った後、好きな事結婚することだ!
「うん! 一緒に強い剣士になって、魔王を倒そうね!」
幼馴染のフィーシィ・ハートレイ。 綺麗な金色の長髪に毛先は少し銀色のグラデーションに大きくキラキラと赤く輝く瞳。 誰が見ても美しい容姿をしている、自慢の幼馴染で、ずっと俺が想いを寄せている相手だ。
俺は勇者になりたかった。
何千万分の一になりたかった。
この世界では勇者になること、勇者パーティーに加入することが全てだったから。
「俺ぁ絶対勇者になるぜ!」
フィーシィは声高らかに夢を語る俺の手を、ぎゅっと握り、共に勇者になることを約束してくれた。
「私とキイならきっとなれるよ、勇者にっ」
魔王を倒す可能性を秘めていると国王に正式に認められたパーティーは人類の希望を託され勇者パーティーの称号を得る。
それは最大の名誉として生涯讃えられる。
♢♢♢
時は経ち、十年後。
俺とフィーシィは冒険者になり、剣士の役職に就いた。 そして槍使いのフレイブ、魔導士のロロ、荷物持ちのモーニーという仲間と共に、平和の剣というパーティーを結成したのだ。
「俺達で世界を救うぞ! 魔王を倒して勇者パーティーに!」
「おおーっ!」
盃を交わして、夢を語らい合った。
改めて勇者なり魔王を倒すことを心に決め、世界を救った後にフィーシィにプロポーズする未来を思い浮かべたりして、浮き足立っていた。
♢♢♢
パーティーを組んで二年後、俺達は現実を思い知る。 同じギルドからD〜Bランクモンスターを討伐するパーティーが続出する中、平和の剣はEランクモンスター一体を撃破するのにやっとこさ。
街の人々は俺達をこう認識している…ギルド内最弱のパーティーと。
「元気出して? 諦めなければ私達にだってチャンスはあるよ」
パーティー内の士気は日に日に低下していった……だが、フィーシィだけは違った。
やさぐれた目で酒を飲む俺にフィーシィは優しく励ましの言葉をくれる。
まだ勇者は誕生していない、チャンスはゼロではないのかもしれない。
だけど自分が凡庸だと知ってしまった以上夢は見れなかった。 それでも俺が冒険者であり続けるのは彼女のために他ならない。
彼女には剣の才能は勿論のこと、人を奮い立たせ、着いていきたいと思わせてくれた。
そうだ、その魅力は人類の希望になれる可能性を間違いなく秘めていた。
─
三日後、平和の剣はワムナム遺跡と呼ばれるDランク相当の魔物が多出する地域への遠征に向かった。
俺は体調不良で一人だけ遠征は見送りになり、家で一人寝込む羽目になった。
「俺も何とか…一緒に…」
「だーめっ、体壊してんだから。 今回はゆっくりしてて? ね?」
無理にでも着いて行こうとする俺を彼女は優しく制止する。
「キイの分までちゃんと頑張ってくるから。 帰ってきたらデートでもしよ? ん?」
「は、はい…」
フィーシィは首を傾げてじっと見つめてくる。
昔からよくやるんだよなぁ。 そんなに可愛くお願いされたら断れないじゃないか。
「分かったよ。 でも、気を付けろよ」
「うんっ! 分かってるっ! 帰ったらデートでもしようね〜」
「馬鹿! 冗談言ってんじゃねぇ!」
「ふふふっ」
フィーシィは照れる俺を見て、嬉しそうに笑った。
仲間達が遠征から帰ってきたら旅の話でも聞こう。 どんな魔物を倒したのか、なにか面白いことでもあったか。 そしてまたフィーシィと冗談を言い合って…
ーしかしそんな未来が来ることはなかった。
ワムナム遺跡に向かった平和の剣一行は運悪く、魔王軍幹部の一人と遭遇。
フレイブ、ロロ、モーニーの三人は何とか窮地を脱して生還したが。
そこにフィーシィの姿はなかった。
平和の剣が帰還して二日後…
ギルド長の命により、フィーシィの死体を回収すべく部隊が派遣された。
そして ─ワムナム遺跡より街に向かって1キロの地点にて、フィーシィの亡き骸は発見された。




