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【健全】ゼロ距離オプションが僕にだけつけられない話

作者: パミーン
掲載日:2026/11/08

タイトル通り健全なお話です。

健全ではない!と思われたら反省します。


内容は相変わらずザルです。ご容赦ください。

「今度からね!社交ダンスをすることになったの!」


「ふーん、そうなんだ」


 最初は何とも思っていなかった。幼馴染の長内美里(おさないみさと)が習い事を始めたんだ、ぐらいの感想しかなかった。


 小学3年生の時だった。だからまだ恋愛とかなんだとか考えもなかったし、どういうものかも分かっていなかった。


 美里のパートナーは同じ学校の絵になる男、大山一(おおやまはじめ)君。すでに将来イケメンになるって分かるくらいに顔は整っていて、社交ダンスをしているからかとても姿勢がいい。


 女子からの人気がすごくて男子からも信頼がある。僕も大山君のカッコよさに憧れていた。そんな人が美里のパートナーになったんだからすごいなあと思っていた。


 ところが思春期を経て僕も恋愛感情を抱くようになった。そう、美里に恋してたことを自覚したんだ。


 社交ダンスの練習がある時以外は僕と一緒にいる仲だったし、お互いの部屋に行ってゲームをしたり漫画を読んだりするくらいだから好きになるのはおかしいことじゃなかった。


 恋を覚えてから僕は美里といるだけでドキドキしていつも頭の中が美里で支配されていた。


「たっくんも練習見に来る?もしかしたらやりたいと思うかもしれないよ?」


 小学5年の時、そう言われて、確かに美里が社交ダンスをやっているところを見たことがなかったなと思って見に行くことになった。


 見学をして僕は衝撃を受けた。男女がものすごい密着して踊っていることに。


 え?あんなくっついて練習しているの?しかもめっちゃ楽しそうに踊っているじゃん!僕といる時でもあんな近くでくっつくことなんてなかったのに……。


 美里と大山君がまるで恋人かのようにイチャイチャしながら踊っているようにしか見えなかった。


 この時、僕は初めて大山君に嫉妬した。それと同時にあんなイチャイチャしている姿をもうこれ以上見ていられないと嫌な気分になり、練習を最後まで見ずに途中で帰った。


 それがきっかけとなったのかは分からないけど、僕と美里の距離は少しずつ離れていった。部屋の行き来をする回数も減り、聞いたところによると美里は社交ダンスにのめり込んだみたいで練習の回数を増やしたという。


 今まで美里の近くにいるのは自分だけだと思ったけどそうじゃなかった。僕なんかよりも数段カッコいい相手がゼロ距離でいたんだ。


 あんなの絶対勝てるわけがない。でも美里のことを諦められない自分がいた。


 近づくことも憚れるようになった僕は休み時間に美里のことを目で追うようなった。それで分かったことがある。それは大山君とものすごい近い距離でスキンシップをとっていることを。大山君も気にすることなく美里に触れたりしている。


「ねえねえ、あの二人すごいイチャイチャしてるよね?付き合ってるのかな?」


 そんな声が聞こえるようになった。大山君はもちろんカッコいいけど、美里も負けないくらいにカワイイ。美男美女がイチャイチャしているんだからお似合いだなんて声がどんどん出始める。


 僕の気持ちはどんどん暗くなっていった。学校でもあんなところを見せつけられたら心苦しくなってくる。好きなのになあ。でもどう考えたってこの恋が実を結ぶなんてほぼ100%無理だというのは目に見えていた。


 そんな気持ちを抱いたまま中学生に上がった。幸なのか不幸なのかは分からないけど、美里と大山君とは3年間同じクラスだった。


 美里は学年が上がるにつれてどんどん美しさに磨きがかかっていき、そんな美里を放っておく男子はいないわけで、大山君という難攻不落の大要塞がいるにも関わらず接触を試みる輩が沢山いた。


 何もできない僕は結局変わらず遠くで見ているだけだった。そこでさらに分かったことがある。それは美里が大山君以外の男子とも距離が近いことに。ボディタッチは当たり前。テンションが高い時なんかは手を握ったりする。


 多分だけど社交ダンスでゼロ距離なわけだから触れるくらいのスキンシップはなんてことはないんだと思う。だけど僕らのような男子からしたら勘違いするもの当たり前だ。惚れないなんて奴はいない。


 そういうことで美里に告白する輩は沢山いたみたいだ。この目で実際に見たことはなかったけど、美里に告白して玉砕したという噂話はよく回ってきた。


 そりゃ玉砕もするだろうさ。同じクラスで遠くから見ていれば美里と大山君のイチャイチャぶりが嫌というほど分かるんだから。僕だけじゃない。誰が告白してもOKなんてもらえるわけがないくらいに二人の仲をまざまざと見せつけられた。


 そして中学2年の10月だった。僕の友達が急に宣言をした。


「俺、今日長内さんに告白する!」


 友達が美里のことを好きなのは分かっていた。僕には勝ち目がないのが分かっていたから友達の恋を応援していた。でもどう考えても無理なのは分かっている。それなのになんで告白しようとするのか分からなかった。


「今のままじゃ次の恋に進めないっていうのが分かっている。振られることでこの恋を諦められると思う。だから告白することにしたんだ!」


 なるほどな、と思った。振られれば次の恋に進めるんだな、と思った。結果はもちろんダメだった。でも友達の顔はすっきりとしていて吹っ切れたようだった。


 そろそろ僕も次の恋に進んだ方がいいと友達の姿を見て思った。それで美里に告白をするために話しかけた。


「長内さん、少し話が……」


 僕が近づくと美里は僕と一定の距離を保ったまま近づこうともしてこない。しかも無視をして全然目を合わせてもくれない。


 え?他の男子が近づいても全然気にせずスキンシップとってるじゃん?なんで僕とは距離を取ってしかも無視をするの?


「あの…、長内さん、話があるんだけど……」


「たっくん、悪いけど私に近づかないでもらえる?」


「え?」


「近づかないでって言ってるの!」


 周りがざわざわし始め、不穏な空気が流れ始めた。僕は注目されているのが分かったのと美里から拒絶されていることを知り、そのまま何も言わずに自分の席に戻った。


 その晩、美里とのやり取りから僕はいつのまにか嫌われていたことを悟った。嫌われていたんじゃ仕方ないよな、と告白することもできずに僕の恋が終わりを告げた。



※



 そんな僕は今高校2年生だ。僕は美里への恋に対して一つ後悔がある。それは何もせずに終わったことだ。自分磨きをすることもなかったし、自分をアピールすることもしなかった。


 何もしないから何も生まれないのは当然のことであって、もし僕が何か行動をしていたなら変わったかもしれない。まああの恋に関しては行動しても無理だったとは思うけど、行動していればよかったという後悔の念の方が強い。


 あの日以来、僕は自分磨きを始めた。そう簡単には失恋を乗り越えられなさそうな気がしたから、それを忘れられるくらいに厳しい環境に身を置こうと決めてボクシングジムの門を叩いた。


 ボクシングははっきり言って厳しい。自分の体を毎日限界まで追い込むから他のことを考える余裕なんてない。恋だなんだと考えることもできなかった点はよかったけど、勉強や他のことを疎かにしてしまうくらいに厳しすぎたので選択を間違えたとも思っている。


 中学2年から今までボクシング漬けの毎日だから、高校も名前が書ければ合格できるような高校に通っている。美里は大山君と同じ高校に進んだらしく、おそらく高校で青春を謳歌しているだろう。


「おい琢郎!遂にプロデビュー戦が決まったぞ!」


 僕は16歳になってすぐにプロテストを受けてプロボクサーのライセンスを取った。つい先日17歳になったのでついにデビューすることが決まったんだ。


「これから減量が始まる。苦しい日が続くがしっかり自己管理をするんだぞ!」


 僕の階級は一番下のミニマム級。今の体重は53㎏ぐらい。ここから大体5.4㎏くらい減量しないといけない。


 ボクシングを始めた頃はもっと太っていたからこれでも痩せた方なんだ。これまでは自然に痩せていったけど、ここからは食事制限もしながら体重を絞っていかないといけない。


「おい柳瀬。お前食欲ないのか?」


 昼休み、美里に告白して玉砕した友達が僕のことを心配してそう言った。


「ついにプロデビュー戦が決まったんだよ。それで減量生活が始まったのさ」


「おー、遂にデビューか。日程を教えてくれよ。みんなで応援に行ってやるよ」


 友達に日程を伝えると色んな人に情報が広まったみたいで小学校や中学校で一緒だった奴らも見に来ることになったみたいだ。


 そんなに応援に来てくれるならこっちも気合いを入れないといけない。僕は必死になって減量に励んだ。



※



 試合前日。なんとか体重を落とすことができて計量を無事通過した。


 減量は思った以上に過酷だった。何度食べ物に手を出しそうになったか分からない。ランニングの距離も長くしてひたすらに自分を追い込んだ。


 ここまで来たらなんとしても勝ちたい。苦労しながら減量をしたせいなのか闘争心が湧いてくる。これで負けたら減量をしてきた意味がないような気がする。


 明日の試合に向けて部屋で瞑想しながら自分の気持ちを高めていると、コンコンとノックされ、なんとあの美里が部屋にやってきた。


「たっくん久しぶり。明日試合なんだってね」


 美里はあの時と同じように僕と距離を取って話しかけてくる。


「久しぶり長内さん。何か用?何もなければ明日に向けて集中したいんだけど」


 思ったより吹っ切れていたようだ。明日試合だというのに嫌いな奴の顔を見に来た意味が分からないから正直イラっとしている。


「そ、そうだよね。こんな時に来るべきじゃないのは分かってるんだけど、たっくんの身に何かあったらって心配で仕方ないの」


「は?」


 嫌いな奴のことが心配?意味が分からない。


「いやいや、あの時近づかないでって言って拒否った癖して何が心配なの?明日の試合に集中したいのにイラつかせるのやめてくれないかな?」


 冷めた声で言い放つと美里は泣きそうな顔になりながら俯いた。


「違うの……。私、社交ダンスを始めてから距離感がバグっちゃって、どうでもいい人には簡単に近づけちゃうのに、好きな人には私なんかが近づいていいのかとか、近づいて臭いって思われたらどうしようとか考えちゃってどうしたらいいのか分からなくなるの……」


「普通逆じゃない?好きな人には近づこうとするもんじゃないの?」


 ん?てことは……。


「もしかして僕のことが好きで近づけないってこと?」


「そ、そう……。たっくんの言う通りなんだけど、社交ダンス始めてから本当に距離感バグっちゃって……」


「じゃあ大山君はどうでもいい奴だってことなの?」


「どうでもいいって訳ではないけどただの社交ダンスのパートナーなだけだよ!それに一君は彼女いるし!」


 下の名前で呼んでる時点でもう彼氏みたいなもんなんだよな。


「なんでそんな話をこのタイミングで話してくるのかな……。こっちは長内さんのことを吹っ切るためにボクシング始めたっていうのに」


「え!?たっくん私のこと好きだったってこと?しかももう好きじゃないってこと?」


「好きとか嫌いとかじゃないんだよ。明日の試合のことだけを考えたいから集中させてほしいの」


 色んな距離感がバグってる気がする。今カミングアウトする話じゃない。


「うぅ……。私、たっくんに嫌われたんだよね?もう生きていけないよぉ……」


「いやだから……」


 そう言いながら美里に近づこうとすると、距離を保とうと僕と距離を取り始める。


「なんで距離を取るの?そんなに僕が嫌なの?」


「だから違うの!好きだから近づけないの!」


 ああめんどくさい!試合に集中させてほしい!


「とりあえず僕がどうしたら長内さんの気持ちは収まるの?」


「その長内さんって言うのやめてほしい……。すっごい距離を感じる」


 距離感バグってる癖にそういうところは正常じゃないか。


「分かったよ、美里。これでいい?」


「うん!明日応援行くからね!それでこのバグった距離感乗り越えてみせるから!」


 満面の笑みで部屋を出て行った美里。ふう、これで試合に集中できる。


 この後、僕はバグった距離感の美里に振り回されることになるんだけど、それはまたの機会に話をさせてもらうよ。


 ん?試合はどうしたって?そんなのもちろん勝ったに決まってるだろ。美里が応援に来てくれたんだから。

今回はタイトルとあらすじに力を入れてみました。

内容はつまらなかったかもしれません。その時は申し訳ありません。

まだまだ書く力はつけていきたいと思います。

感想をいただけますと幸いです。

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