根暗な空手少女あかり 2話:金的への興味と無邪気な女子達のイタズラ心
道場に通い始めて数週間。
あかりは少しずつ慣れてきた。
最初はミットばかりだった金的蹴りも、今ではペア練習で寸止めをするようになった。
相手の男の子が構えて、蹴る側は急所の手前でピタッと止める。
師範が
「コントロールが大事だ!」
と繰り返すやつだ。
女の子たちは4人くらいいて、休憩時間にいつも固まって話すようになった。
あかりも、ようやく輪の中に入れるようになっていた。
ある日の練習後。
道場でみんなが着替えを待っているとき、リーダー格の元気な女の子・みゆが、ニヤニヤしながら言った。
みゆ「ねえ、みんな。金的蹴りって、師範は『一発で戦意喪失』って言うけどさ、実際どれくらい痛いのかな? 見てみたいよね~。男の子がどんな顔するのか、超気になる!」
他の女の子たちがクスクス笑う。
みゆ「寸止め練習のときにさ、間違えたふりして、思いっきり本気で蹴っちゃうとか? そしたら本物の反応見れるよ!」
女子1「えー、危ないよ! 師範に怒られる!」
みゆ「でも、好奇心あるでしょ? 誰かやってみない?」
みゆの目がキラキラ光ってる。
あかりはドキドキしながら聞いていた。
確かに、ちょっと……見てみたいかも。
みゆ「じゃあ、公平にジャンケンで決めよう! 負けた人がやる役!」
みんなで輪になってジャンケン開始。
「ジャンケン……ポン!」
「あ、グーか……」
何回か回って、最終的にあかりが負けた。
みゆ「やったー! あかりがやるんだ!」
みゆたちが拍手。
あかりは顔を真っ赤にしながら、慌てて手を振った。
あかり「え、ええっ!? 私!? いや、ちょっと……本気で蹴るなんて、怖いよ……」
みゆ「いいじゃんいいじゃん! 間違えたふりすればバレないよ。相手は、優しそうなけんた君にしよう。あいつ、いつもニコニコしてるし、痛がる顔可愛いかも!」
他の子たちも「がんばれ~」と囃し立てる。あかりは心臓がバクバク。根暗な自分が、こんな大胆なこと……でも、みんなの期待の目がなんだか嬉しくて、断れなかった。
次回の練習で、運命のペア練習。けんた君が前に立って、構える。
けんた「よろしくね、あかりちゃん!」
けんた君はいつも優しい男の子。笑顔で言われて、あかりは余計に罪悪感が……。
でも、みゆたちの視線を感じる。
深呼吸。
あかり「オス……!!」
けんた君はニコニコしながら構える。
道着のズボンがちょっとぶかぶかで、なんだか無防備に見える。
けんた「よろしくね、あかりちゃん! 寸止めでお願いしますー!」
あかりは心の中で大パニック。
(やっぱりやめようかな……でもみゆたちが後ろでガン見してる……「がんばれー」って口パクしてるし……!)
師範の声が響く。
師範「はい、次! 気合を入れて!」
あかり、深呼吸。
もうやるしかない!と目を細めて思い切り足をあげた瞬間…
ドゴォォォン!!
(効果音が頭の中で鳴った)
あかりの右足が、けんた君の股間にクリーンヒット。
しかも、なぜか完璧なフォームで蹴り上げちゃった。金的蹴りの教科書みたいな一撃。
瞬間、道場が静まり返る。
けんた君の顔が、みるみるうちに真っ青に…
そして、
けんた「う……………………………………っぐぅぅぅ!!!」
両手で股間をガードしながら、ぴょんぴょん跳ねるけんた君。
まるで熱い鉄板の上に立ったカエルみたいに、膝を交互に上げ下げ。
けんた「ひぐっ……ひぐっ……あうぅぅ……」
声が裏返って、しまいにはしゃがみこんで胎児ポジション。
女の子チーム、爆笑。
みゆが腹抱えて転がってる。
みゆ「やばい! めっちゃ効いてる!! 顔! 顔見て!! 超面白い!!」
男の子たちは全員、反射的に股間を両手でガード。
師範まで
「うわっ……」
って自分の急所守ってる。
あかりは真っ赤になって固まる。
あかり「あ……あ、あの……ごめんなさ……間違えちゃって……!」
けんた君、涙目でうずくまりながら、かすれた声で、
けんた「……だ、大丈夫……だよ……あかりちゃん……(ゼェゼェ)……でも……ちょっと……世界が……星がいっぱい……」
師範が慌てて駆け寄る。
師範「おいおい! けんた、大丈夫か!? あかり! お前……寸止めって言っただろ!?」
あかり、土下座寸前。
あかり「す、すみません! 足が滑っちゃって……!」
みゆたちが遠くで「滑ったー!」「うまい言い訳ー!」って小声で囃し立てる。
結局、けんた君は5分くらい動けず、氷を持ってきてもらって安静。
師範はため息まじりに、
師範「……まあ、護身術の効果はよくわかったな。次からは本当に気をつけろよ!」
その日の練習後、けんた君は意外と根性あって、あかりに笑顔で言った。
けんた「いやー、びっくりしたけど……あかりちゃんの蹴り、めっちゃ強かった! かっこよかったよ……(小声)でも二度とごめん……」
あかりは申し訳なさでいっぱいだったけど、なんだかみんなに「金的の女王」ってあだ名がついて、
根暗だった自分が、少しだけ道場の人気者になった。
……でも、次の練習でまたジャンケンになったら、絶対勝つと心に誓ったあかりだった。




