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「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ  作者: ませ


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13/30

13 シャロウン家の過去と今

 わたくしとラファエル殿下の婚約は、全くの政略によって結ばれたものと聞き及んでおりますわ。

 婚約が成立したのは、わたくしが六歳、ラファエル王太子殿下が七歳の頃でしたわ。

 しかし、婚約者としての顔合わせが行われたのは、それから四年も後のこと。

 その期間中、王都では様々な陰謀策略や権謀術数(けんぼうじゅっすう)がはびこっていて、とても顔合わせどころではなかったそうですの。

 幸いにも、一触即発の危険な状況に幼子(おさなご)を放り込むほど、ギーズ家もブルボン家も鬼畜ではございませんでしたので……。

 わたくしはギーズ公領のお城、ラファエル王太子殿下は王城で、外部との接触を極力減らして安全を確保されておりました。


 後から聞いたところによりますと、ラファエル王太子殿下の婚約者候補には、名門コンデ家のご令嬢も含まれていらっしゃったそうですわ。

 そこから色々あって――この部分は、どんなにお願いしても誰一人として教えてくださらないのですが――婚約者の座にわたくしが収まったんですの。

 けれど、やはり選ばれなかった家、特に伯爵以下が諦めきれずに奸計詭策を講じたようでして、命を狙われたことも何度もあったそうですわ。

 全く覚えておりませんけれども。


「お嬢様、姉君がお話をしたいとのことです」

「お通ししてくださいまし」


 夜ごはんの後に来訪したマルギュお姉様は、いつもと同じように甘い香りを振りまいていらっしゃいますわ。

 けれども、どこかお疲れのようで、普段よりもお顔の色がよろしくないんですの。


「マルギュお姉様、何かあったんですの?」

「……アリアは、本当に聡い子ねぇ……」


 疲れの滲む、気だるげなお声ですわ。

 寝不足といった御様子でもございませんので――きっと精神的なものですわね。


「最近、シャロウン家と関わりはあったかしら?」

「……ええ。中等学園に在学していらっしゃる双子の方々と、お話をいたしましたわ」


 こみ上げる感情を覆い隠すかのように、マルギュお姉様は扇子を広げましたわ。

 そのまましばらく思案下なお顔をしていらっしゃいましたが、数秒の後、再び口を開かれましたの。


「シャロウン家は色々と不透明な部分も、悪い(お話)も多いのよ」


 同意を求めているような雰囲気ではございませんので、黙して続きに耳を傾けますわ。


「そして、これはアリアには初めて話すのだけれど――あなたとラファエル王太子殿下の婚約に、水面下で()抵抗していた家でもあるのよ」


 そ、れは……。

 予想外の内容に、軽く目を見張ってしまいましたわ。

 わたくしの記憶によれば、シャロウン家の叙爵には我がギーズ家が大きく貢献していたはずですもの。


「あの家は、子々孫々末代まで云々といったことは一切しない――各個人の自立した風潮が強いのよ。そのくせ、妙なところで結束が硬いものだから厄介なのよねぇ……」

「妙なところで結束が硬い、ですの?」

「ぁ……」


 マルギュお姉様……自身の失敗を悟らせるような顔はしないでくださいませ。

 猫かぶりを教えてくださったのはマルギュお姉様だというのに、教師ができていないようではよろしくないと思いますわ。


「それは、わたくしの方の話よ。少なくとも今は、あなたには関係ないわ」


 正直、このような雑な説明では納得しかねるのですけれども――とりあえずはこれで妥協いたしましょう。


「何も起こらなければよろしいのですけれども……」

「まあ、望み薄でしょうね……もう既に始まっているようだもの……」


 未来は、常に予測不可能なものですわ。

 けれど、確実に言えることは――これは、わたくしたちだけではなく「家」をも巻き込むだろうということですわ。

 そして、おそらく、国全体にも波紋が広がるんでしょうねぇ……。

27, 04, 2025

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