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10/28

10 遅刻ですわ!

 あぁ、朝日の眩しいこの時間帯、澄み切ったこの空気、全てが美味しいですわぁ!


「お嬢様、遅刻しますよ」

「い、行ってまいりますわっ」


 お説教が続きそうでしたもの、逃げるが勝ち、ですわ。

 実は、徹夜がたたったのか、今朝も大寝坊いたしましたの。

 馬車ではとても間に合いそうもない時間でしたので、頼みの綱、愛馬のロマンとともに駆歩(ガロップ)で向かうことにいたしますわ。

 遅刻だけはダメですもの、なりふりかまってなどいられませんわ。

 学園の門が見えてきましたわ。

 さあ、大きくすうっと息を吸うのですわ。

 予鈴の音になど負けていられませんもの!


「門――まだ――閉じないでくださいまし!」

「あぁ?! って、おい、どこぞのご令嬢が馬で通学してきたぞぉ!」

「何だって?! 遅刻間際だ、早く開けてやれっ!」

「てか、ご令嬢が馬で通学するって見たことないんだけど!」


 騒々しいですわね、朝から元気すぎませんこと?


「ありがとう存じますわっ!」

「はぁ?! ちょ、ギーズ公爵令嬢が馬?!」


 誤解を生むような言い方はやめてくださいまし、わたくしはれっきとした人間ですわ。

 ふうっ、到着、ですわ……!

 片足を大きく振ってとんっと軽く飛び降り、以心伝心のロマンを最高速度で厩舎に繋いでまいりましたわ。

 厩舎から出ますと――先ほど門を開けてくださった親切な方々が、まだいらっしゃいますわね?!


「皆様、遅刻しますわよ! 走ってくださいまし!」


 なにをぐずぐずしていらっしゃるのです、遅刻まであと三分ですわよ!

 ギリギリですわ。


「お先に失礼いたしますわ!」


 猛ダッシュ、ですわ!

 親切な方々を取り残して独走いたしますわ!


「アリアンヌ様!」

「シャロウン男爵令嬢――ごきげんようおどきになって――邪魔ですわ――遅刻ですわ!」

「ふえぁ?!」


 ビュンッと走り抜けますわ。


「うそ……あのアリアンヌ様が……走って……」


 なにを当たり前のことを言っていらっしゃるの?

 ――って、へたり込んでいてはダメではありませんの、遅刻してしまいますわっ。

 Uターンですわ!


「失礼いたしますわっ」


 シャロウン男爵令嬢の手を掴み――やや荒い手つきになってしまったのは許してくださいまし――再びのUターンですわ。


「んにゃ~っ!?」


 その悲鳴――シャロウン男爵令嬢、実は猫でしたの?!

 シャロウン男爵令嬢のクラスに到着いたしましたので、すかさず押し込みますわっ。


「シャロウン男爵令嬢、わたくしが遅刻してもあなた様のせいではございませんから、責任を――感じないでくださいましっ!」


 鳴り始めた鐘の音の中、わたくしは走り出しましたわ。

 そして、鳴り終わった直後にめでたく教室に滑り込み、遅刻判定を受け――そうになりましたが、日頃の行いがどうこうとかいうので罰則だけで済みましたわ。

 持つべきは運と努力と才能と実力、それから、教師の方々からの評価ですわ。

 オーホッホッホッ!

 どうやらシャロウン男爵令嬢も、無事間に合ったようですので――まあ、終わり良ければ全て良し、ですわね?

27, 04, 2025

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