相対性聖女
私が霊なら、あなたはどうする?
新たな聖女が登場したので、
郁子は概念を整理する必要に迫られていた。
まず、私にとっては薬子が聖女だ。
けど、私以外にとっては別に薬子は聖女ではないだろう。
聖女ではないにしても、女神ではあるかもしれないけど。
実際、薬子は親しくない人にはわりとそっけない態度だ。
特に男には勘違いされやすくて大変だから防衛本能もあるんだろう。
まあ、そのぶん私がかわいがってあげちゃうもんね!ペロペロー。
特定の誰かに対する、という意味で薬子はいわば相対的な聖女であるといえる。
逆に紅葉先生は誰に対しても紛れもない聖女。いわば絶対的な聖女だといえる。
相対的だからよくないとか絶対的だからいいとかって話ではないと思う。
どちらも私にとっては代わりなんていない、かけがえのない尊い存在だ。
でも、なにより私は薬子にとっての聖騎士なのだ。
紅葉先生には紅葉先生の精鋭がたくさんいると思う。
だから、とりあえず私は私の役割を果たしたいと思う。
なんか真面目に考えすぎちゃったかな。
でも疲れは感じない。頭は冴えている。
まだまだわかったような気はしないけど、
とにかく現状の理解度はこんな感じだ。
ハサミについては、ちょっと奮発して美容師さんの使うような
いいやつを買っちゃおうかなーって。たまに薬子の髪も切ってあげたいし、
自分の髪もこれで切っちゃうのがコスパ的にもいいよなって話。
護身用でもあるから持ち歩くけど散髪用なら補導で没収とかもたぶんないでしょ。
あとあれね、聖職者って伝統的に棒術みたいなのを
たしなむのがオーソドックスなスタイルみたいなのよね。
これならその辺に落ちてる棒とかでも簡単に利用できるし、
リーチが延びるだけで立ち回りが有利になるのは容易にイメージできる。
習いにいくまではしなくても、動画とかで研究しちゃおうかなって。
本格的にやりたくなったら、大学に入ってから薙刀とかやればいいかなって。
今夜の郁子は、いつになく静かで確かなテンションなのであった。
オチとかそういうのは特にありません。
イメージソングは、相対性理論「ふしぎデカルト」。
https://youtu.be/mp60GNeK-kU?si=BNg4CSAlKMKqFi0g




