りゅけいおん!
おら学校さいぐだ。
郁子と薬子は放課後スタジオでバンドの準備をしていた。
「紅葉先生、今日ほんとにきてくれるの?楽しみだね。」
「こないだ授業で迷惑かけちゃったからさー。
謝りついでに誘ってみたら今日は大丈夫だって。」
すると、白黒のシスター服にエレキギターをかついだ
紅葉先生が到着した。なんだか謎の貫禄を漂わせている。
「お待たせしましたね。さっそく始めていきましょうか。
どんな曲をやりますか?ヴィジュアル系は予習しましたか?」
「うん。宿題もばっちりだよ。V系の演奏むずかしいけどね。
でもとりあえずは各自で好きなの一曲ずつ提案していきたくて。
まずは私から。日本語ラップの草分けって吉幾三さんっていう
演歌歌手の『俺ら東京さ行ぐだ』ってやつなんだって。ウケる。
これを現代風にバンドでカバーしてみたらおもしろいかなって。
はぁー、パソコン無ェ!スマホも無ェ!自動運転普及して無ェ!
おらこんな村いやだー!ビットコ貯めで屋上で豚飼うだ!」うぇっさーい
「学校の屋上で豚を飼いたいということですか?そのリリックは
過激すぎてモロに校則違反ですから教師としては見逃せませんよ。」マジレス
「郁子ふざけすぎだよ。だいたい村で暮らしたことなんてないでしょ。
そんなのセルアウトなワックMCじゃん。西海岸もなにも関係ないし。
私はもっと知的でかわいいやつを考えたよ。みんなでやってみよう!」
薬子はそういって郁子と紅葉にそれぞれの歌詞を伝えた。
そして、ビシバシとマシーナリーなドラムを叩き始めた。
薬子「ガヴァガイ!」
郁子「ピコン!」
紅葉「おいおいおい、あいつ死ぬわ!」
薬子「ガヴァガイ!」
郁子「ピコン?」
紅葉「おいおいおい、あいつ死ぬわ!?」
謎のフレーズが無限ループする謎曲だった。
「薬子の方がふざけてるじゃん。なんなのこれ?歌詞これだけ?
イミフすぎてメッセージ性も皆無じゃん。謎のコントじゃん。」
「うるさいなー。私なりにまじめに考えたんだよ。科学哲学の
深遠な問題意識を表現したやつなんだからね。わかってないなー。」
「これじゃまともな練習になりませんね。仕方ないからここは
私のリクエスト通りV系のカバーでいきましょうね。いきますよ。」
実は紅葉響子は学生時代には黒夢の熱心なファンのバンギャで、
いわば黒夢女子だったのだ。しかも感極まって興奮しまくって
釘バットを振りまわしたあげくライブハウス出禁になっていて。
そのままファンクラブ追放といういわば黒夢歴史があったのだ。
三人の演奏は盛り上がった。薬子のドラムの腕前は確かだったし、
郁子もへたっぴなりにがんばってベースをびよーんと弾いていた。
さらに紅葉はギターも歌も上手で、しぐさもばっちり決まっていた。
やがてついにトランス状態になり、謎の即興シャウトが飛び出した。
「わいが、わいがあの生きていた中絶児だったんや!」あふーん
郁子と薬子はお互いに顔を見合わせた。えっ、いまのなに?
あんな歌詞なかったよね?カトリックの奇跡みたいな話なの?
よくわからないけど、まあ演奏は楽しいしとりあえずいいか。
紅葉先生はふだんのストレスを解消して顔色つやつやだった。
「今日はとてもいい時間を過ごせましたね。また予定が合えば
私も参加しますよ。いつでも気兼ねなく誘ってみてくださいね。」
「こちらこそありがとうございました。謎のフリースタイルも
よかったしギターもボーカルもすごかったし大満足だったよ。」
「私も今日は先生と仲良くなれてよかったです。ガヴァガイ!」
三人はそれぞれにそれぞれの満足感を抱いて家路に着いたのだった。
イメージソング。
まふまふ「乙女解剖」。
https://youtu.be/EliO8DazIg0?si=ZCNAprx6lyQZiQDS




