パラディナイト・フィーバー
さまよう聖女があらわれた!
郁子と薬子は食事を済ませて、
ラーメン屋を出て話を続ける。
「郁子もラーメン好きなんだったら、私いってみたいお店が
けっこうあるんだよね。女子一人じゃ入りにくいところとか。」
「ああ、二郎インスパイア系とかなんかそういうやつ?
初心者お断りみたいな空気が漂ってるとかいうもんね。
いいよ。創作系なんかも面白そうだし。私の好きな漫画に
そういうのあってさ。ラーメンハゲとかいうやつがいて。」
「うん。郁子と一緒ならどこに行っても楽しいと思うけど、
せっかくなら面白いところにもいっぱい行ってみたいよね。」
「ラーメンハゲが出てくる漫画にさ、天才料理女子がいてね。
すんごいラーメンを毎日のように新しく考え出したりしてて。
いいよねそういうの。なんなら薬子と一緒にそんなお店をやるとかの
人生もいいよね。学校の勉強は無駄になっちゃうかもしれないけどね。」
「そんなのもうプロポーズじゃん。郁子はいつもアクセル全開すぎるよ!」
その様子はさながら二輪の百合の花が、街を歩いているがごとしであった。
しばらく歩いてから、薬子は二人の目の前にある店を指さしてこう言った。
「着いたよ。ここ。ここに郁子と一緒に行きたかったんだよ。」
「ん?ここは、いわゆるランジェリーショップってやつ?ふーん。
私はそういうのは気にしないタイプだけど、薬子なら何でも似合うし
せっかくならオシャレなのがいいもんね。よし、一緒に選んじゃおっか。」
二人は店に入る。色とりどりの下着が咲き乱れる、お花畑のような空間だ。
「違うよ、郁子。私の身体には既製品は合わないから、私のことはいいの。
今日はね、郁子にかっこいい下着をプレゼントしたくてここにきたんだよ。」
「え、マジ?私はスポブラとトランクスで必要十分ってタイプなんだけど。
動きやすいのがいちばんじゃん。薬子を変態から守らなきゃいけないしさ。」
「もー。そう言うと思ったよ。だけどね、郁子にとって私が聖女なんでしょ?
そうだとしたら、聖女が自身に仕える騎士に特別な装備品を与えるとかって、
当然の流れというか、むしろ積極的にやらなきゃいけないことでしょ。違う?」
郁子は思わず、ほーんといった顔になった。
なるほど、その発想は私にはなかったなー。
薬子って私みたいにおしゃべりなタイプではないけど
リケジョだし、正直いって私よりも頭がいいんだよな。
私にはまだよくわからない真理を会得してるっぽいな。
よし、ここは素直に、聖女様の導きに従っておこうか。
「うん、違わないと思う。ビキニアーマーみたいなことだよね?
フィジカルはともかく、メンタルの守備力を上げる鎧というか。
じゃ、私のために薬子が選んでね。いいのを頼むよん、聖女様。」
「うん、わかった。私に任せといて!」
薬子はフンス、フンスといったテンションでお店を見て回る。
薬子がこんなに積極的になるのってなんだかめずらしいよね。
というかこいつ何やってもかわいいな。なんなのこのかわいい生き物。
「よし、これに決めたよ!これにしよう!さっそく装備してみて!」
「え?ここで着なきゃダメなやつ?私だって乙女だから恥じらいはあるよ。
ドラクエだって、買ってすぐに装備するかどうかには選択肢があるじゃん。」
「いいからいいから。私を信じて!それがあなたの務めでしょう?」
郁子には、今の薬子の圧力と論理に抵抗する術が浮かばなかった。
まあいっか。殿方に見られるわけじゃなし、ひとまずやってみよ。
よっしゃ、着てみたわよ。さあどうよ!
郁子は試着室のカーテンを勢いよく開く。
「わー!わー!郁子かっこいいー!すごいよ、すごいよ。
こういうかっこいいのって、私には全然似合わないから
憧れだったんだ。これが今日から、郁子の聖装だからね!」
「ふーん?そんなに?でも、薬子がよろこんでくれてうれしいよ。
じゃあこれから薬子とお出かけするときはこれでいくことにする。
まあ世にいういわゆる勝負下着って、きっとこういうことだよね。」
こうして郁子は、聖騎士としての聖なる鎧を手に入れたのだった。
イメソンですわ。
ラルク・アン・シエル「Vivid Colors」
https://youtu.be/ZUaPim9C2cc?si=Jd4Ma_QAfLIG-n3I
聖装郁子のビジュアルイメージですわ。
https://www.pixiv.net/artworks/35945286




