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プロローグ

初投稿です。



 

「イェリーベル・シルターナ!お前との婚約を、破棄する!」


光り輝くシャンデリアが煌めく卒業パーティー会場に、なんとも相応しくない怒声が響き渡った。声の主は、茶色の髪に赤い瞳を持った美しい男。この国の第三王子だ。


「殿下……急にどうなさったのですか…?そのような話、公の場ですることではございませんでしょう?とりあえず、場所を移動しましょう」


一瞬にして静まり返った会場に響いたのは、決して大きくは無いのに、どこまでも通っていくような女の声。たった今、第三王子から婚約破棄を告げられた公爵令嬢、イェリーベル・シルターナである。淑女の武装である微笑みを浮かべ、必死に感情を押し殺しているようだが、銀と水色が入り交じったその神秘的な瞳は震えるように揺れている。気丈な彼女は、決して冷静さを失わぬよう己に言い聞かせているのだ。


「なんだと…?私の愛しいラスタを影で虐めて、遂には暴力まで奮って泣かせたくせに、よくもそんなことが言えるな!この悪女めッ!俺の婚約者に、お前のような顔だけの女は相応しくない!心も清らかで美しい、このラスタこそ、俺のパートナーになりうるひとだ!」


「殿下…!そんな……!」


第三王子の斜め後ろで、オレンジ色の瞳を潤ませ、オロオロと震えている者の名は、ラスターナ・ヘイリーン。4年前、馬車の衝突事故で両親を亡くした悲劇の元男爵令嬢である。しかしその後、彼らの親友であった伯爵夫妻が、友の忘れ形見であるラスターナを養子に引き取ったことで、その悲劇は瞬く間に美談に変わり、社交界を席巻した。


どこかあどけなく頼りない雰囲気は、より一層彼女への同情を集め、小動物を思わせる可愛らしい見た目と控えめな性格は、より多くの関心を彼女へ集めた。その結果として、社交界デビューから1ヶ月も経たずして、女性の嫉妬と男性の人気を一心に集めてしまうような、そんな存在感のある令嬢となってしまったのである。


そして、そんな彼女と対を成す存在が、公爵令嬢イェリーベル。彼女は、その高い地位はもちろん、高身長と煌めく切れ長の瞳を持つことから、男女共に尊敬されつつも敬遠される存在であった。そのくせ、いささか発育のいい体のせいで、女性の憧憬と男性の下心を無駄に集めてしまいがちな、難儀なご令嬢なのである。



 その髪と瞳の色から、よく社交界の月と太陽に例えられるふたりだが、見た目も立場も性質も、まるで対を成すかのように正反対だと思われていた――



 未来を見透かすかような、獰猛な捕食者の笑みを最後に浮かべるのは、どちらか。



 それはもちろん、――――


 


 

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