転生チート少年と異世界お姉さんズ
「えっ……魔王はとっくに倒されたって!?」
「なんだ、知らなかったのかい?凄い美人の勇者様がぶっ倒したって話だよ」
「そんなぁ……」
残念だったね、と宿屋の店主が笑顔で語る一方、事実を知った少年はがっくりとした表情を浮かべた。
王都から遠く離れた田舎からようやく辿り着き、世界の平和を乱そうとする魔王を倒すという夢が、あっけなく打ち砕かれてしまったのだから。
平和になったのだから良いじゃないか、と宿屋の店主が声をかけた通り、少年にとってもそれは大いに喜ぶべきことだった。
それでも彼が落ち込んだ理由は、自分こそが魔王を倒せる存在だ、と信じていたからである。
『トウタ』という名を持つこの少年は、こことは別のとある世界で一度命を落としたが、その際に神と名乗る不思議な存在に助けられ、この世界で再度命を得た存在であった。
勿論、単に過去の世界の記憶をもって転生しただけではなく、彼は神から様々な能力、それも『チート』と言うべき凄まじい反則級の力を贈られた。
襲い掛かる魔物をあっという間に一網打尽にする剣捌きに、悪党を好きなように翻弄させ退治することができる魔力。
どんな相手にも決して負けないはずの様々な力を得た上で、トウタはこの世界に転生したのである。
彼は小さい頃からその力を発揮し、生まれ育った田舎の村で大いに持て囃された。
時に村を襲う魔物を退治し、時に作物を盗もうとする悪党を追い払い、時に天変地異から人々を守る。それらの活躍で、多くの人々から称賛された。
勿論、両親からも優しく強い素晴らしい子供、神から授かった宝物だといつも褒められた。
そして、村を挙げて盛大に見送られながら、彼は魔王退治のため王都に赴いたのである。
だが、そんなトウタを待ち受けていたのは何とも言えない現実であった。
「あーあ、つまんないの……」
宿を去った後、彼はあてもなく賑やかな王都をぶらぶらと歩き続けた。
当然だろう、どれだけ凄まじい力を持っていても、肝心の倒すべき相手の魔王がいなければ、チートな能力を持って転生した意味がない。
前の世界で何度も読んだラノベの主人公のような格好よく無双する姿を神様に願ったはずなのに、これでは完全に持ち腐れの状態。
折角凄い力があっても、使えなきゃ意味がないじゃないか、と彼は不平不満を心に溢れさせた。
だが、いくら自分の中で愚痴を言っても状況が改善することはなく、結局とある飲食店で暇を潰すしか無かった。
このまま王都で職を探すか、それともいっそ故郷の田舎に帰ってしまおうか、そんな事を考えていた時だった。トウタの耳に、近くの男たちの賑やかな会話が入ってきたのは。
その内容は、あの『魔王』を倒したという女勇者についてであった。
滅茶苦茶強くて優しくて、しかもおっぱいも大きい超美人。
僕もああいう恋人が欲しかった、いやお前なんかには無理だ、など他愛もない会話が続く中、トウタにとって非常に気になる言葉が飛び込んできた。
「またこの目で見たいよなー、あの超絶美人の勇者様♪」
「バカ言え、報酬も地位も全部蹴って『世界の果て』でのーんびり暮らす決意をしたんだぜ?」
「そっか、忘れてた……でも最後まで格好良かったよな!」
「だよなー、陛下からの報酬は貧しい人に全額寄付したいだなんてよぉ!」
賑やかに語らう彼らの一方、トウタは男たちの会話の中にあった『世界の果て』と言う単語にはっとした。
人々が住んでいる場所から遥か遠くに広がるどこまでも続く、水も植物も少なく到底動物も人も住めない荒野。
その場所こそ、かの魔王が本拠地を構えていた場所でもあったのだから。
生憎その魔王とやらはナイスバディな女勇者によって倒されてしまったが、彼女がどこにいるか聞けただけでもトウタにとっては大きな収穫だった。僅かばかりの手掛かりでも、彼にしてみれば十分すぎる成果なのだ。
そして彼はじっと目を瞑り、精神を集中させながらその視界をこの王都から遥か遠くの場所へと移した。神から授かった能力を駆使し、女勇者の居場所を探し始めたのである。
やがて、思ったよりも早く、トウタは灰色の荒野の中にポツンと佇む1軒の小屋を見つけた。
(ここだ……!)
人知の及ばぬ場所であるはずの『世界の果て』に存在する人工物。しかも中には人の気配がする。
間違いなく、噂の女勇者が暮らしている場所だ!
確信したトウタは店を後にしたのち、すぐさま物陰に隠れて呪文を唱え始めた。
体の下に様々な紋章や文字が描かれた魔法陣が現れた直後、彼の姿はこの場から一瞬にして姿を消した。
そして、次に彼が現れたのは、王都から遥か遠く離れた『世界の果て』と呼ばれる荒野、それもあの謎の一軒家の目の前であった。
神から与えられたチート能力の1つ『瞬間移動』を用い、トウタは一瞬にして長距離を移動したのである。
そして、彼は恐る恐るその家の扉に近づき、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた後、覚悟を決めてノックをした。
ごめんください、という丁寧な声と共に。しばらく経ち、中から女性の声が聞こえた。
誰かしら、とりあえず出てみるか、などのやり取りが交わされたのち、ゆっくりと扉が開かれた。
その中に広がっていた光景を見た瞬間、トウタの顔、そして全身はあっという間に真っ赤になった。
「あら、どなたかしら?」
「来客だと……?」
部屋の中にいたのは2人の女性だった。
一方は赤色の長い髪をたなびかせ、白く輝く装備から健康的な肌を見せつける美貌かつ巨乳の美女。
もう一方は、少し短めの白髪と濃い肌の色を全身から覗かせる、赤髪の女性に負けないほどの美貌や胸の大きさを持つ美女。
それだけでも、健康的な男子であるトウタにとっては非常に刺激が強い光景であったが、更に彼の心を緊張させたのは2人の女性の服装だった。
赤髪の女性は純白、白髪の女性は漆黒と色こそ異なっていたが、彼女たちは揃って胸元と腰回り以外の全身を存分に露出させる、『ビキニアーマー』と呼ばれる衣装を身に纏っていたのである。
「あ、あの……」
相手と目線を合わせようとすれば、必然的に女性の胸元へ目が行ってしまう。
ますます緊張してしまうトウタの心を和ませるように、女性たちは笑顔を見せながら彼を家の中へと招き入れた。
そして、そのまま彼女たちは自分たちの名を名乗った。
赤髪の女性は『ライティア』、白髪の女性は『ヤミーラ』と。
2人の美人に顔を再度真っ赤にしながらも自身の名を名乗ったトウタは、単刀直入に彼女たちに聞いた。貴方たちは人々が言う『勇者』なのか、と。
女性たちは互いに顔を見合わせた後、赤髪のライティアは肯定の頷きを返しながら笑顔を見せた一方、白髪のヤミーラは頷きながらもどこかふてくされたような態度を見せた。
そして、逆にヤミーラの方がトウタに尋ねた。
並大抵の人間が滅多に来られない場所にある小さな建物に白昼堂々訪れるとは只者ではない。お前はいったい何者なのだ、と。
核心を突いた問いに、トウタは一瞬だけ驚きの表情を見せたが、すぐに覚悟を決めて自分が訪れた目的を告げた。
「あの……ライティアさんにヤミーラさん……僕と、勝負してください!」
「……ほう?」
「へぇ……君はどうして私たちと勝負したいの?」
「僕は……魔王を倒すだけの力を持っています。いや、持っているはずです。だからこそ、魔王を倒した貴方たちと腕試しをしたいんです!」
お願いします、と頭を下げたトウタを見て、ビキニアーマーを纏った2人の美女、ライティアとヤミーラは怪訝そうな表情を互いに見せ合った後、彼にこう述べた。
広大な荒れ地の中にたたずむ小屋をピンポイントで訪れるだけあって、相応の実力はあるのは確かだ。
しかし、こちら側は『2人』である一方、トウタは『1人』だけ。一斉に戦うのではなくどちらか1人と対峙した方が良いのではないか、と提案したのである。
だが、それを聞いたトウタは、そんな心配は要らない、という自信を込めた笑みを見せた。
神から与えられた力をもってすれば、相手が何人いようと関係ない――。
「……心配いりませんよ。僕が『2人』になればいい話ですから」」
――分身魔法を使えば、全く同じ力を持つ存在が同時に幾らでも現れる事ができるのだから。
2人に増えたトウタが再度頭を下げるのを見て、ライティアとヤミーラも揃って凛々しい笑顔を返した。
彼から叩きつけられた挑戦を受けて立つと言う決意を込めて。
~~~~~~~~~~
人智が及ぶ範囲から遥か遠く離れた場所に広がる、『世界の果て』とも呼ばれる果てしなき荒野。
そこで、2人に分身した少年と、2人のビキニアーマーを着込んだ美女による戦いが続いていた。
「はぁぁぁっ!」
「ぐっ……はぁっ!!」
自らの存在を2人に分身させた少年・トウタ。そのうち一方の彼が剣の勝負を挑んだのは、魔王を倒したという『女勇者』のライティアだった。
彼はこれまで幾多もの魔物を一刀両断してきた剣の腕を存分に活かし、彼女との戦いを互角に進めていたのである。
神から授かったチート級の能力を活かした彼の剣は文字通り音よりも速く動き、女勇者を攻め続けた。
更に研ぎ澄まされた感覚を駆使し、ライティアの中に生まれるごく僅かな隙を一瞬で見抜き、勝負を決める一打を加えようとしたのだ。
それでも相手はあの魔王を倒したほどの実力を持つ存在。
凄まじい速さで繰り出されるトウタの剣捌きを時にかわし、時に防御しながら、自身の肉体を守り続けていた。
「なかなかやるわね」
「ええ……これが僕の……実力です!」
両者一歩も譲らない戦いの中、歴戦の勇者たるライティアからそのような言葉が聞けた事は、トウタにとって嬉しかった。
目の雨にいる美女が決して気を抜いて戦える相手でない事は、その剣捌きから嫌というくらい認識していた。
そして、少しでも気を抜けば純白のビキニアーマーから覗く胸や腹、太ももに目がいってしまい、あっという間に隙が生まれる。
そんな相手を前に互角、いやそれ以上の立ち回りが出来る事を、トウタは喜んでいたのだ。
皆から尊敬される『勇者』を、もしかしたら超えることが出来るかもしれないという想いと共に。
一方、もう1人の美女――魔法を駆使する漆黒のビキニアーマーの女性・ヤミーラ相手の戦いでも、トウタは互角の戦いを続けていた。
「斬風!」
「ぐっ……はぁっ!!」
「こっちも……大地障壁!」
容赦はしないと述べた通り、ヤミーラは、自身が得意と断言する『闇』の魔法を次々に繰り出しトウタへ猛攻を浴びせた。
何もない場所から紫色に輝く魔方陣を召喚し、そこから生み出した『闇』の形を自由自在に変える事で、彼の体に強烈な一打を食らわせようとしたのである。
だが、神から与えられたチートな力を持つトウタも負けてはいなかった。
生まれ育った村を襲う悪人たちを蹴散らした魔法の力を駆使し、彼女の攻撃を防御したり逆に跳ね返したりしながら、じわじわと彼女を追い詰めようとしていた。
風の力や大地の力、炎、水など自然をつかさどる様々な要素を自身の思い通りに使える魔法の力を、一気に発揮し続けたのだ。
「やるな、貴様」
「そちらこそ、なかなか強いですね……」
漆黒のビキニアーマーから存分に覗く抜群のスタイルを見せつけるように立つヤミーラへ、トウタは不敵な笑みを返した。
チートな力ですら操るのに若干の苦労が必要となる高度な魔法と呼ばれる闇の魔法を自在に操る実力を有する爆乳美女のヤミーラ。
そんな彼女から褒められるほど、自身の実力が高いという事をを知ることができた喜びが一番の理由であった。
勿論、その美貌や肉体、そして爆乳を目に焼き付ける事ができるという下心もほんの僅かだけ存在していたが。
やがて、2つの戦いは――。
「「はぁぁぁぁっ!」」
「「ぐっ……っ!!」」
――あと一撃を加えればこちらの勝利だ、と2人のトウタが確信するような展開になった。
幾ら『勇者』という名を持っていても、目の前の美女たちは自分の力に対して防戦一方のように見える。
やはり神からチート能力を貰って転生した僕の力は最強なんだ――そう確信を抱き、全力を込めたとどめの一撃をくらわそうとした、まさにその時だった。
「「……!?」」
確かに彼の剣も魔法も、ライティアやヤミーラの体に痛恨の打撃を浴びせたはずだった。
ところが、驚愕の顔を見せたのは、全力をこの技に込めた2人のトウタの方だった。
彼の視界に移っていたのは、先程と何ら変わらない真剣な表情と、ビキニアーマー1枚のみを纏う体に闘志を宿したライティアやヤミーラの姿であった。
彼女たちはトウタの全力の攻撃を呆気なく受け止め、弾き飛ばしたのである。
「「えっ……!?」」
「「さぁ、次は……!」」
「こっちからいくわ!」「こちらからいくぞ!」
形勢は、一瞬で逆転した。
「くっ……ぐっ……!」
「はああっ……!」
勇者の名を持つ美女・ライティアの巧みな剣捌きを前に、今度はトウタの方が防戦一方になった。
何とかその攻撃を受け止める事は出来たものの、それ以降の行動――ライティア目掛けて剣を振りかざし攻撃する事が出来なくなったのである。
それだけ、ライティアが見せる実力は凄まじかった。
神から授かったチート能力を駆使しているはずなのに、トウタは彼女の剣の動きについていくのがやっとの状態になってしまったのだ。
純白のビキニアーマーから大胆に露出する肉体に視線が映っても、頬を赤く染める暇は全く無かった。
そして、それはヤミーラとの戦いでも同様だった。
「ふんっ、ほっ、はぁっ!!!」
「ぐっ……!!炎障壁、大地障壁……あああっ!!」
何とか魔法の言葉を唱え、風や炎の防御魔法の連携で分厚い魔法の壁を作り出し続け、迫りくる膨大な『闇』を跳ね返す事は出来ていた
だが、濁流の如く押し寄せ、容赦なく繰り出される魔法を前に、トウタはそれ以上の行動が取れなくなっていた。
そして、逆に彼の方はヤミーラに対して攻撃できるチャンスを完全に見失っていた。
一瞬でも隙を見せてしまえば逆に吹き飛ばされ、荒野の大地に叩きつけられてしまう。だが、反撃しようにもヤミーラの方は一切の隙が存在しない。
詠唱もなしに次々と放たれる魔法を前に、彼はあっという間に追い詰められていた。
漆黒のビキニアーマーに包まれながら揺れる胸に夢中になる余裕など、一切残されていなかったのである。
そして、勝敗は決した。
「「はああああっ!!」」
「「!?!?」
一瞬の隙を突いてライティアがトウタの剣を弾き飛ばし戦闘不能の状態に陥れたのと、もう1人の彼が作った魔法の防壁に穴を開けたヤミーラが彼の体を吹き飛ばしたのは、ほぼ同時だった。
「「……!」
そして、荒野に叩きつけられる寸前、ヤミーラと戦っていた方のトウタの姿が消失し、彼の記憶や経験がライティアと戦っていたもう1人の彼へと統合された。
結果、2倍になった痛みや悔しさが、彼の体や心を駆け巡る事となった。
神様から貰った力を駆使したのに、どうして勝てないのか。どうしてに形勢が逆転してしまったのか。
悔しさのあまり涙が流れ始めた彼に声をかけたのは、先程までとは打って変わったような凛々しくも優しい笑顔を見せる、2人のビキニアーマーの爆乳美女だった。
「ヤミーラさん……ライティアさん……僕は……」
「トウタ君、貴方は本当に凄かったわ。ヤミーラ相手以外で本気を出して戦ったのは久しぶりだもの。そうでしょう?」
「まあな。トウタ、確かにお前は剣も魔法の腕も常人以上だ。それは我も認めよう」
そして、2人はトウタへ励ましの言葉をかけつつも、同時に言葉を濁す事なく、彼が自分たちに惨敗した要因を述べた。
それはずばり、『経験不足』だ、と。
「経験不足……ですか……?」
「まぁ仕方ないわよね、トウタ君みたいな実力者なんて、この世界じゃ滅多にいないもの。でしょ?」
「だが、お前はそんなぬるま湯のような環境に浸かりきったせいで、実力を過大に評価してしまった。我らに勝てると過信していた。違うか?」
「……は、はい」
ライティアの同情、ヤミーラからの厳しい言葉。どちらの意見についても、トウタは一切異論を述べなかった。
純白と漆黒、2種類のビキニアーマーから肉体美を存分に見せつける彼女たちの言葉は全て真実だったからである。
確かに彼は今まで弱い相手、短時間で決着がつく相手としか戦った事がなかった。
一撃で倒せる魔物、少し力を見せただけで怯えて逃げ出す荒くれ者たち。そういった存在とばかり戦っている間に、彼はすっかり慢心していた。
自分の力をもってすれば、どんな相手でも簡単に倒せるだろう、と。
その結果が、ビキニアーマーの美女の前に惨敗した、この結果であった。
例えどれだけチートな力を持っていたとしても、経験が未熟なままでは全く意味がない――彼は改めて痛感したのである。
片や魔王を倒した経験を持つ女勇者と彼女に匹敵する力を待つ女性、片やチートな力を持て余し続けていた自分。
既に勝敗は戦う前から決まっていたのかもしれない、と更に落ち込みかけた彼に、ライティアとヤミーラはそっと手を差し伸べた。
滑らかな手を見ながら驚く彼に、2人はどこか楽しそうな笑顔を見せながら語った。
そんなに悔しいのなら、いっそ自分たちの『弟子』になって経験を積み、自分たちの能力を超えてみないか、と。
「えっ……ほ、本当にいいんですか……!?」
「我は全然構わぬ。むしろトウタ、お前が我らを超える日が楽しみになってきた。ま、超えられるものならな」
「私も同じ気分よ、ヤミーラ。それで、どう?折角だから、『私たち』と一緒に暮らしてみない?」
もっともっと強くなり、目の前にいる最強を超えた最強のお姉さんたちを打ち負かす――新たな目標が出来たトウタは、迷わず2人に自分を弟子にしてもらうよう頼んだ。
勿論、2人から返ってきたのは――。
「……こちらこそよろしくね、トウタ君♪」
「精々努力するんだな、トウタ♪」
「ふえっ……!?」
彼と暮らす日々を楽しみにしている気持ちを存分に溢れさせるような、了承の言葉だった。
だが、微笑む2人の姿を見たトウタは、あっという間に全身を真っ赤にしてしまった。
仕方ないだろう、ようやく心に余裕が生まれた彼は、ビキニアーマーのみを身に纏うライティアとヤミーラの肉体を間近で目に焼き付ける事になったのだから。
~~~~~~~~~~
「ええええ!?じゃ、じゃあヤミーラさんが……!?」
「ああ、その通りだ」
ライティアとヤミーラ――2人の爆乳美女と共にどこまでも続く『世界の果て』の荒野を歩き続けていたトウタは、驚きの事実を知った。
純白のビキニアーマーを着込む勇者ライティアと仲睦まじい様子を見せていた、漆黒のビキニアーマーを纏う闇の魔法の使い手であるヤミーラ。
彼女こそ、トウタが倒そうと夢見ていた『魔王』本人だったのである。
世界を脅かしていた魔王は女勇者ライティアに倒され、世界に平和が戻った――それが、彼が王都の人々から聞いた情報であった。
確かに勇者と魔王は戦い、そしてその時の勝負で勝ったのは勇者ライティアである事は、彼女本人もヤミーラも肯定の頷きで証明してみせた。
だが、そこから先の真実は、彼女たちしか知らない秘密の出来事であった。
魔王を裏で利用していた魔物の一部勢力やその魔物と結託していた人間たちなど、『勇者対魔王』という構図を生み出した黒幕との戦いが勃発し、結果として勇者ライティアと魔王ヤミーラは共闘する事になったというのだ。
「本当に色々あったわね……」
「全くだ、話すと途轍もなく長くなる。いつか機会があれば話そう」
「わ、分かりました……でも、どうしてこんなに仲良くなったんですか……?」
「ふふ、共に戦ってるうちに……ね♪」
「『恋心』みたいなのが我らに芽生えた、って感じだな♪」
「え、恋心……ですか……!?」
予想だにしない言葉に困惑するトウタであったが、確かに寄り添い合って笑顔を見せ合う勇者ライティアと魔王ヤミーラの間柄は、確かに親友を通り越して恋人同士のようにも見えた。
そして同時に、勇者ライティアが地位も名誉も報酬も捨て、この『世界の果て』で暮らす決意をした理由も何となく理解できた。
長く苦しい戦いの中で友情や愛を育み、かけがえのない存在となった女魔王ヤミーラと共にいつまでも幸せな暮らしを続けたい、という想いが強かったのだろう、と。
「うふふ、ヤミーラ、大好きよ……んっ♪」
「ふふ、我もだ、ライティア……んっ♪」
「ふぇぇ……」
互いに笑顔を向けた後、潤う唇を互いに重ね合い、満面の笑みを見せる――顔も腰つきも胸の大きさも全てのスタイルが抜群なビキニアーマーの美女2人に囲まれ、トウタはすっかり顔が真っ赤になってしまった。
そして、同時に彼は自身の実力が勇者どころか倒そうと意気込んでいた魔王にすら及ばないという事実を思い知らされた。
だが、その顔は2人との勝負に惨敗した直後とは異なり、むしろやる気に溢れていた。
これからこの2人の元で長い修行に励み、彼らを超える力を目指す決意を固めていたからだ。
「あ、あの……ライティアさんにヤミーラさん……これからよろしくお願いします!」
「うん、良い挨拶ね♪」
「精々修行に励むことだな♪」
「は、はいっ!」
2人の笑顔に挟まれながら決意を表明した時、彼はある事に気が付いた。
ライティアとヤミーラ、2人が住んでいたはずの小さな小屋があった場所と反対の方向へ、彼らは移動していたのである。
一体どこへ向かっているのか、と尋ねた彼に、ライティアとヤミーラはどこか悪戯げな笑顔を見せながらその疑問に答えた。
『大勢の仲間たち』が待つ場所へ向かっている、と。
「えっ、ライティアさんとヤミーラさん以外に仲間がいるんですか?」
「ふふ、そうよ……2人だけだと寂しかったから、ね♪」
「たっぷり『仲間』を増やした訳だ……ふふ♪」
「ふ、増やした……?」
2人の言葉の意味を、トウタは最初理解する事が出来なかった。
こんな未開の大地に、彼女たちのお目にかかるような程の実力を持つ存在などいるのだろうか、と。
だがその直後、『仲間たち』の元に辿り着いた彼は、その意味を嫌でも知る事となった。
確かにライティアの剣の腕やヤミーラの魔力はトウタとほぼ互角、もしくはそれ以上であった。
だが、それらに加えて彼女たちはそれらの力を巧みに使える技能を身につけていた。
その中には、あの時トウタが使用していた分身魔法――自分と同じ姿形、同じ記憶、同じ能力を持つ分身を作る魔法も含まれていた。
そして、トウタは彼女たちの分身魔法の凄まじさをまざまざと思い知らされたのである。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「やっほー、トウタくーん♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おーい、トウタ♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「……!?!?!?!?」
彼の視界に入ったのは、勇者ライティア、魔王ヤミーラという2種類のビキニアーマーのみを纏う巨乳美女によって、『世界の果て』の荒野が果てしなくぎっしりみっちり覆い尽くされている光景だった。
全員とも寸分違わぬ同じ姿、同じ顔、同じ声、同じ爆乳、そして同じビキニアーマーで、新しい仲間であるトウタへ向けて一斉に満面の笑みを見せていたのである。
その光景に唖然とし、言葉も出なかった彼であったが、視界を少し上に向けた瞬間、その顔は更に驚愕の色へと染まった。
ライティアとヤミーラの大群によって埋め尽くされていたのは荒野ばかりではなかった。
地平線の果てまで続く灰色の雲によって覆われているはずの空は、2種類の肌の色、2種類の髪の色、そして2種類のビキニの色でびっしりと覆いつくされていた。
卓越した『浮遊魔法』を使ったライティアとヤミーラの大群が何層にも渡って上空で折り重なり、トウタへ一斉に笑顔を向けていたのだ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「トウタくーん♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ふふ、トウタ♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
あまりの事態に圧倒するトウタには、彼女たちが何人いるのか想像する事が出来なかった。
何十何百では到底足りず、何千何万という単位でもきっと表せないだろう。
それ以上の数にまで膨れ上がり、地平線の果てまで無尽蔵に増えに増えに増えまくりながら『世界の果て』での生活を満喫している様子を、ライティアとヤミーラはトウタへ向けて存分に見せつけたのである。
「え、こ、これって……ど、ど、どういう……」
「うふふ、みーんな私とヤミーラよ♪」」」」」」」」」」」」
「ふふ、我らのみで覆い尽くされた空間、最高だろう?」」」」」」」」」」」」」」」
「!?!?!?」
しかも、彼女たちの『分身』はそれだけに留まらなかった。
ずっとトウタの傍にいたライティアやヤミーラたちまで何十何百と増え、柔らかく豊かで大きな胸を見せつけるかのようなビキニアーマーを纏いながら笑顔で彼を取り囲み始めたのだ。
更に、陸や空をどこまでも覆い尽くしていたライティアやヤミーラ達も次々に動き出し、トウタをその肉体でびっしりと覆い尽くしていったのである。
「「「「「「「「「「「「「「「「「うふふふふ♪」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「ふふふふふ♪」」」」」」」」」」」」」」」」」
「ふ、ふえぇぇぇ……」
前後も左右も上空も、見渡す限り彼の周りは純白と漆黒、2種類のビキニアーマーからたわわな胸や抜群の肉体を存分に覗かせる美女の大群。
耳も目も鼻も口も、全ての感覚が反応するのは無尽蔵の彼女たちばかり。
そして動けば動くほど、体に触れるのはビキニアーマーのみを纏う美女たちの柔らかな胸、滑らかな素肌、むっちりとした太腿。
そんな空間の中で、トウタは無限の快楽に包まれながら彼女たちの持つ『力』の底知れなさを痛感した。
常人を凌駕する力を持つ彼をもってしても、何十桁にも及ぶほどの数にまで増殖し続けるというのは文字通り桁外れ、想像を絶する能力だったからである。
「それじゃ、今日からよろしくね♪」今日からよろしくな♪」今日からよろしくね♪」今日からよろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」よろしくね♪」よろしくな♪」…
「!?!?!?」
だが、そんなトウタに不快や恐怖といった感情は不思議と沸かなかった。
当然だろう、トウタの周りにいるのは、彼を超える強さと経験、実績、そして美貌を持つ、優しくて頼もしい、何よりも胸も顔も体つきも抜群な、この異世界最強の美女の大群なのだから。
そんな『お姉さん』たちと共に暮らす日々への混乱と困惑、そして心からの嬉しさを抱えながら――。
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「ああああああああああああああ!!」
――無限に増殖していくビキニアーマーの美女たちによって作られた肉の海の中で、トウタは様々な感情が混ざった叫び声をあげたのだった……。