05 突然の美女
先に謝っておきます。某スタジオアニメの映画ファンの方、申し訳ありません。
「あなた、ひどいことをするのね」
本屋に来た女は、カオリに向かって、言い放った。
「はあ……?」
カオリは、訳がわからず、ポカンとした。
店に美女が来たと思ったら、責められたのだ。
「なにか言い訳はないの?」
「いえ……、あなた、誰です?」
「あら、こんな美女を、あなた、覚えてもいないの?」
そして女は、急にカオリを上から下まで眺めて言った。
「ふうん……。65、59、71ね。ほとんど棒っきれじゃないの」
カオリは、また、ポカンとした。そして、数字の意味がわかると、顔を紅くして、近くに置いてあった本を、女に投げつけた。女は、わずかな動きで、カオリの攻撃を避けた。
ちなみに、カオリが投げた本の値段は、32万である。
「高い本を投げて……。あなた、このお店向いてないんじゃないの?」
「知るか! 出ていけ!」
「あら、私も一応客よ? この本を買うわ」
女は、カオリが投げた本を拾い、札束を差し出した。
その行動に見覚えがあり、カオリは思わず叫んだ。
「アンタ、あの成金男が連れてた女!」
「成金男なんて、彼に失礼だわ。立派な名前があるのに」
そして女は、ニヤニヤしながら、カオリを見つめた。
「うちにある用は、本だけじゃないみたいね?」
札束をまたも受け取りながら、カオリは女に尋ねた。
「ええ。実はーー」
「私をこの店に雇って欲しいの」
「はあ?」
カオリは、またもや虚を突かれた顔をした。あまりにも予想外だったからである。
「アンタを? この店に?」
「ええ。今、この店の店主は不在なんでしょう? 決定権はあなたにあるはずよ」
「うちの店はほとんど客は来ませんよ」
「いいのよ。時給さえもらえれば」
クズだなと、カオリは思った。
「お願い。彼が借金取りに捕まってるせいで、生活に困ってるの」
カオリはため息をつき言った。
「いいですよ。あなたに払うお金なら、成金男からたくさんいただきましたから」
「だから、彼にはちゃんとした名前があるの。教えてあげるわ」
カオリはどうでもよかったが、一応聞く姿勢をした。
「彼の名前は、ハウエル=ガジェット。この店の店主の一人息子で、次の跡取りよ」
(続く)
※『一人っ子』を『一人息子』に修正しました。 (2021.4.3)
お読みいただきありがとうございました。
男の人の名前が、これしか思い浮かばなかったんです・・・・・・。