02 お客様を追い返してはいけません。
お久しぶりです。サブタイトルを数字以外も付けることにしました。それから、主人公の名前を『リナ』から『カオリ』に勝手ながら変更させていただきます、申し訳ありません。
「だーかーらー。なんで、このSS級の魔道書が、これっぽっちなんだよ!」
「ただ、味方3人が30パーセント強くなるだけじゃん。しかも20分」
「十分すげーだろーが! おまけに、ピッカピカで、超美品だぞ!」
魔道書を売りに来た客の前に、私は、暇つぶしに読んでいた真っ黒な魔道書をたたきつけた。
「いい? この店には、その本の百倍は価値がある本が、燃やすほどあるの! 金を出すだけ、ありがたいと思いなさい!」
「そ、それは・・・・・・LL級の魔道書、『ガント・ハルバート』! 確か、千人の騎士の攻撃力を、3時間10倍にするという・・・・・・! なんで、こんな薄汚い店に!」
『薄汚い』という言葉に、私の堪忍袋の緒は切れた。
「わかったら、さっさと帰ってくれる!? 私はこれから、お昼ご飯を食べるところだったんだから!」
私は、『ガント・ハルバート』を、何度も会計用のテーブルにたたきつけた。
「ひいっ! 帰るから、その貴重な本を乱暴に扱わないでくれ! お前が触っていいような物ではない!」
「悪かったわね! どうせ私は、『薄汚い』わよ!」
最後に、私は『ガント・ハルバート』を暖炉に投げ入れた。LL級の本が、紫の炎を上げながら、燃えさかる。
客は、真っ青な顔をして、帰って行った。これくらいの魔道書は、この店には、腐るほどあるのだ。なにが、『LL級』。
私は、次の本を手に取った。
私は、キレると、暖炉に手近な本を投げ入れるのが、習性になっていた。
ガジェットさんは、「ここには、本は腐るほどあるからね。どうにでもしていいさ」と、私が10冊目の本を燃やしたときに、諦めたようにつぶやいたので、私は、もう、我慢をしないことにした。
どうせ、客はあまり来ないのだ。断捨離だ。断捨離。
私はそのとき、窓の外から、自分を見つめている目があることに、まだ気がついてはいなかった。
(続く)
お読みいただきありがとうございました。魔道書のレア度の表記は、某ソシャゲを参考にさせていただいております。