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小説のタイトルと内容がずれていますが、このままにしておこうと思います。すいません。今回は、主人公が異世界に来たときの話です。
気がつくと、私は路地裏にいた。ボロボロの服を着ていた。靴は履いていなかった。
路地裏から外をうかがうと、なんだかほこりっぽく、でも活気がある店が並んでいた。人通りも多かった。
親子連れが、私の前を通った。子どもが、私に気づくと、母親に何事か言った。母親は、私を見ると、眉をひそめ、足を速めて私の前を通り過ぎた。
どうすればいいのだろう。ポケットを探ってみたが、小さな見たことのない硬貨が二、三枚入っていただけだった。
「おい、お前!」
「え?」
顔を上げると、目の前に男がいた。筋肉隆々で、頭の悪そうな。
「お前、物乞いだろ。カネをやるから、俺と遊べよ」
「・・・・・・いやっ!」
私は逃げ出した。裸足の足が、石や釘を踏む。痛かったが、それどころではなかった。ここはどこ? なんで、私はこんな所にいるの?
「・・・・・・!」
目の前は、行き止まりだった。振り返ると、男が、ニヤニヤしながらゆっくりと歩いてきていた。
いや、いや、来ないで・・・・・・。
「ああ、ここにいたのかね」
「え?」
「あ?」
男の後ろから、声がした。杖を突いたおじいさんが、ニコニコと男を追い越し、私に手を差し出した。私は訳がわからないまま、その手を握った。
「話は聞いているよ。わしの店の手伝いをしてくれるのだろう?」
「え・・・・・・、あ・・・・・・、はい」
「なんだ、邪魔すんなよ、じいさん」
男が、おじいさんの肩に手を置こうとした。しかし・・・・・・。
気がつくと、男は地面にひっくり返っていた。おじいさんが、杖で男を転ばせたのだ。「気安く、私に触らないでくれないかねえ。服がこれしかないからね」
「・・・・・・、覚えてろっ」
男は、立ち上がると走って逃げていった。
「危なかったねえ」
「あの、ありがとうございました・・・・・・」
「いいんだよ。しかし、君はこのあたりの子じゃないだろう。変わった目の色をしている」
「そうですか?」
私の目の色は、薄い茶色だったはず。
「うん。紫色の目なんて、初めて見たねえ」
「え?」
私は、近くに水たまりがあったので、自分の目を見てみた。
宝石のような、紫色だった。
「ウソ・・・・・・、なんで・・・・・・」
「君、何か事情がありそうだねえ。どうだい、わしの店にちょっと寄っていかないかい」
「え、でも・・・・・・」
さっきの今で、私は人間不信になっていた。しかし、おじいさんはニッコリと笑い、
「大丈夫。わしのハートは、四十年前にバーサンに奪われたままだから」
と、薄汚い私に再び手を差し出した。
私は思わず笑って、おじいさんの手を握った。
――これが、私と、古本屋の店主のおじいさん――ガジェットさんとの出会いだった。
(続く)
お読みいただきありがとうございました。登場人物の名前の付け方は適当です。