プロローグ
新しい連載始めました。異世界の古本屋の話です。のんびりペースで更新しようと思います。
ほこりっぽい本屋だと思った。本当にここに、伝説の魔道書『レカ・シルペスカ』があるのかと、疑ってしまう。
第一、どこを探せばいいのかがわからない。
辺り一面、本棚で、本棚に入りきらない本は、床に平済みにされていた。保管状況は最悪だ。
「すいませーん・・・・・・」
とりあえず声を出してみたが、店員が飛んでくることはなかった。奥の方に会計があったので、とりあえずそこを目指す。
店の中全体がほこりっぽく、一刻も早く出てしまいたかった。
会計につく。もう一度、声を張り上げてみる。
「すいませーん!」
「・・・・・・はーい」
会計のテーブルの裏から、モコモコと毛布の塊が現れた。毛布が落ちると、眼鏡を掛けた小柄な少女が出てきた。年は、14歳ぐらいだろうか。会計がこんな娘で大丈夫かと、心配になった。
「なんの用で?」
「あ、ああ、ここに、『レカ・シルペスカ』という本があると聞いたんだが・・・・・・」
店主がこれなら、望みは薄い。
「うん? その本なら、この前燃やしちゃった」
「・・・・・は?」
「薪が足りなくてね・・・・・・。寒かったから」
「なんてことしてんだアンタ!」
伝説の魔道書を、薪の代わりにするなんて。
「アンタは、ここにある本達の値打ちがわかってない!」
「わからないよ。ただ、数ヶ月店番頼まれただけだし」
そう言って娘は、再び毛布の塊に戻ろうとする。
「待て待て、他に魔道書は?」
「んーー、東の国の魔女が残した門外不出の魔術書なら・・・・・・」
「それでいいから出してくれ」
「ハイよー」
そして、娘は身軽に会計用の机を飛び越えると、まっすぐにひとつのホコリの被った棚に向かい、本を取り出し、ほこりを払った。
「うん、これだ」
「よく、そんなすぐに見つけたな」
「私は、本に呼ばれるんだよ、読みたいと思った本に。信じなくていいけど」
「ああ、信じられないな」
だが、本は手に入った。さっさと、この店を出よう。
「うーん、10万」
「は?」
「この本の値段」
「いくらなんでも高すぎでは・・・・・・?」
「なにいってんの。魔法使いの魔術書なんて、二度と手に入らないよ。足りないの?」
一応、大量のカネを持ってきた。伝説の魔道書のためのカネだった。
「仕方ない。払おう」
「毎度あり」
この本屋には二度と来ない。蔵書が立派なのはわかるが、店員のせいで胃が痛くなってきた。
「あ、西の魔女の魔術書なら、値段が半額だから、おすすめだよー!」
・・・・・・欲しい。しょうがない、一ヶ月後ぐらいにまた来よう。胃薬を忘れずに。
お読みいただきありがとうございました。感想等いただけると嬉しいです。