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対ユビシロン:1


今日の先発は元々1軍にいた中でも1番調子の良い宮田。なぜ日本人っぽい名前なのかとか宮田になった理由とか聞いてみたいが、単独最下位のチームで防御率2.32は驚異的な良さだと思う。

不安だった立ち上がりをなんとか三者凡退に打ち取り1回裏のラスティの攻撃になる。

今日の作戦としてはボールをよく見ること。そしてセンターからライト方向へ打つことを意識して打席に入ることを伝えた。右打者の多いラスティとしてはこれがこの試合ではベストなはずだ。

まずは1番のデイトナ。守備位置はセンターで今回2軍から呼んだ絶好調中の選手だ。守備は良く選球眼もあり、2軍では出塁率が4割を優に超えているため先頭として出塁してもらおうと1番バッターに選んだ。

その期待通りいきなり10球粘った末に四球で出塁した。さすがに相手もシーズンで初めて1軍と2軍の選手の入れ替えをした事でなにかあるのではないかと警戒をしているらしく丁寧な投球だと感じた。

そして2番のクヒト。この選手は元々1軍にいた選手であり、その中でも走攻守が1番しっかりしている選手だ。数字で見るとシーズン中ずっと打率3割以上をキープしておりバントやエンドランなどの子技もしっかりできる有望な選手。

塁上のデイトナをしっかり進めたいため、予定通りクヒトの打席ではエンドランの指示を出す。

初球をしっかりバットに当てたが、変化球で微妙に芯を外されたのかクヒトはファーストゴロになったがデイトナは2塁へと進ませる事ができた。

そして3番のホギッスムート。この打者はいわゆる中距離バッターというのに相応しい成績で、ホームランは現在12本なのだが打率は2割9分とほぼ3割打っているのである。彼は左打ちなのでここは最悪デイトナを3塁へと進ませる打撃に期待したいところ。

そう思っていると2ストライク2ボールと追い込まれる。だが、5球目が打ちやすい甘い球になったようでライト前へと打つ。

だが、ライトはスライディングしながら捕りにいき、ヒットかアウトかの判断がしにくかったようでデイトナは3塁止まりになってしまった。

そして期待される4番のシェイクブンノイズの打席がやってきた。この選手も元々1軍にいて、元々4番を打っていた。4番らしくホームラン数はチーム内トップの25本だがホームラン狙いで大振りばかりだったようで打率はそれほど高くない。とはいえ昨年までの成績を見る限り元々は打率も低くないようで、状況に応じたバッティングをしてくれればもう少し打率も上がるだろうと信じている。

だが、シェイクブンノイズは初球の変化球を打ちショートゴロでダブルプレーとなり3アウトでチェンジになった。

彼はパキラが監督に就任した時に1番反発していた選手であったと聞いていたため不安だったのだが、その不安が的中してしまったようだ。

「おい。シェイクブンノイズ。なぜ初球から打ちにいったんだ?チーム内での今日の作戦は伝えたはずだよな?」

そう言う俺を無視してシェイクブンノイズは守備につきに向かう。

「いつもチャンスの時にダブルプレーばかりなのは自覚してるだろ?力はあるんだから作戦通りに動いてくれ」

野次のように大声で言ってみたが本人に届いたかはわからない。

外野フライで1点取れる場面で初球からまともに投げてこないのはわかっているはずなのにホームランを打とうとして変化球を引っかけてショートゴロなんて最悪だと本人もわかっていたはずなんだがなぁと思うが過ぎた事は仕方ない。次のチャンスに期待しよう。

2回表、相手は4番のアオヤックが出てきた。投手陣からはあまり反発がないようでしっかり作戦を聞いてくれていたからここは抑えてくれる事に期待する。

だが、2ストライク3ボールでフルカウントと追い込んだが、甘く入った球を見事に打ち返されホームラン。呆気なく先制されてしまった。

その後の5番バッターや6番のアワキロヌクに7番のバッターはしっかりと抑える事ができ最小失点で済んだ。

それでも先制されたのは痛い。早めに同点、逆転をしたい。

そう思っている俺とは裏腹にそのままのスコアで試合は進み6回表、2アウト2塁3塁となったところで俺は先発を交代させようとパキラに言う。だがパキラは交代させる気がなかったのか、それとも交代させるか悩んでいたのか慌てた様子でピッチャーの交代を告に行く。

そして交代で出したピッチャーはなんとか抑えてくれた。

6回裏、ここら辺で最低同点にしておかないと厳しいところだ。だが、打順良くこの回は1番のデイトナから始まる。

相手の先発ピッチャーもかなり疲れてきているようで、この回が終わったら交代させるのだろう。

デイトナは本日2打席中2回出塁している。そして3度目のこの打席もしっかりヒットを打ち出塁してくれた。

この場面ではとりあえず初球は様子を見て、いけそうだったのでエンドランを仕掛ける。今度は上手くいきノーアウト1塁3塁とチャンスだ。そして3番のホギッスムートの打席が来た。ここはとりあえず外野フライで1点の場面なのでボールをよく見てもらい外野へと飛ばしてもらいたいところだ。

そして俺はネクストバッターズサークルに向かおうとするシェイクブンノイズに声をかける。

「返事はしなくてもいい。とりあえず聞いてくれ。ホームランは狙ってもいい。だがボールをギリギリまでよく見てライト方向へ打つイメージで行け。パワーもミート力もあるお前なら必ずそれで打てる」

ありきたりな事だが、なにも言わないよりはマシだろうと言ってみた。

そうしているうちにホギッスムートは最低限の外野フライ、いや犠牲フライで1点を返し同点となった。

ここが最後のチャンスかもしれない。そう思いベンチから、打ってくれと声を出す。気の所為かもしれないがシェイクブンノイズの表情が前の2打席と違う気がした。

初球は第1打席で打ち取られた時と同じようなカットボール。カットボールはストレートのような速さでストレートより僅かに投げた手とは反対側に動く厄介な変化球だ。これで第1打席ではバットの芯を外され凡退させられたのだが、今回はしっかり見逃したが1ストライクとなる。次はアウトコースのスライダーでボールになり、3球目はもっとギリギリのところにスライダーを投げたがボールになる。

1ストライク2ボールとバッター有利なカウントとなり4球目、ここで相手ピッチャーはアウトコースにストレートを投げた。だが、甘くなり真ん中付近へいってしまったボールをカキーン。この大事な局面で甘くなった1球を見事にライト方向上段の外野席へと放り込んだ。

ゆっくりダイヤモンドを1周してきたシェイクブンノイズに声をかける。

「これだよ。これ!お前にはこれを期待していたんだよ!」

完全に興奮しきった俺とは反対に落ち着いた様子でシェイクブンノイズが返答する。

「俺はお前と監督を認めたわけじゃない。だが、もう成績に見合わない癖にブンブン振り回してるだけのゴリラだの叩かれるのもごめんだ。俺やチームが叩かれないうちは言うことを聞いてやるからしっかり指示しろこの野郎。それと俺の事はノイズと呼べよ後輩」

そう言いながら前より少し接しやすくなったノイズはベンチ裏へと向かう。こいつもこいつで思うところがあったようで、なにか現状の自分を変えるきっかけが欲しかったんだろうか。今回の俺の作戦を聞いてくれた。素直なやつではないが悪いやつでもないのかもしれない。

その2ランホームランで点差をつけ、それ以上の盛り上がりを見せた場内の空気は本拠地ということもありラスティの押せ押せムードだ。

その勢いそのままに試合は3対2で僅差の勝利を得た。だが、8回表にアオヤックにこの試合2本目のホームランを打たれた事が懸念点だが、まずは初戦で勝利できた事は喜ばしいことだ。


だが、翌日のユビシロン戦2戦目で元から1軍にいて防御率3.13と悪くない数字だがこれがチーム2番手というには心もとない左腕のデルノムが不調だったらしく、初回から制球が安定せずに四球を出し、タイムリーやホームランを打たれまくり3回表終了時点で9点を取られるというワンサイドゲームになっていた。

この試合はここから勝てる望みが薄いと判断しセンターからレフト方向に狙って打ち、相手のスカンセデオを動かせて疲れさし明日に繋げる方針へと変更した。

そうしながらラスティの主力も7回の守備から交代させ、明日へ向けて休養という形にした。

そして控えメンバーのアピールの場とし、各選手のモチベーションアップへと繋げたいところだ。

だが、こちらの作戦に気付いたのかスカンセデオも7回裏の守備から交代し温存させにきた。

試合も最終的には1対12という結果になり、大敗を喫した。


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