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レジオネール戦記・統合編  作者: 将軍様
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第百四十九章 派遣軍本部出撃


12


 深夜二十五時になる少し手前、月明かりも無く人工の光が無ければ真っ暗闇で隣にいる人の顔さえも見えない。何かが起こる、ただその勘だけを信じてクァトロは武装待機をしている。あまりにも静かすぎる、たまに聞こえてくる定時報告の異常なしだけが耳に響いた。


 ビー! ビー! ビー!


 突然電子音が一部将兵のイヤホンでけたたましくなり出した。


「退避!」


 キール先任上級曹長が可能な限りの大声で叫ぶ、話には聞いていたが警報が鳴っている付近への弾着があると。対空トレーラC-RAMに積載されているLPWSの捜索レーダーが感知し報せる。慣れていないのは皆が同じ、何が弾着するのかなど後から知れば良いと、兵が全力でその場から遠ざかろうとする。


 LPWSのファランクス二十ミリ機関砲が自動で対象を追尾指向し、砲弾を撃ち上げる。三発撃ち上げると空中で火花が上がって軽い衝撃波が広がった。


「迫撃砲を迎撃した?」


 実際に見て始めてそんなことが出来るんだなと納得する。それまでは例え出来ると説明されても、やはりどこかで信じることが出来なかった。


「こちら本部C-RAM分隊、十二時方面真北より迫撃砲弾飛来、これを迎撃!」


 遅れて「八十一ミリ砲弾と推察される!」出て来た情報詳細を報告した。相手にしてみれば必殺の初撃だっただろうが、虚しく光と音を散らして消えていった。


「マリーだ、トリスタン大尉、迫撃砲の排除を行え!」


「トリスタン大尉了解。UH-60ブラックホーク、これより離陸する」


 真北二キロと言えば山岳地帯で人が住んでいるどころか道すらない。そんなところに何十キロもの砲を持ち込んだらしい。ドローンで監視出来なかった暗夜に担いで運んだとは、努力のほどは褒めてやりたい。


 今度はバスター大尉の部隊で警報が鳴り響く。速やかに退避すると同時に、ファランクスによる迎撃が行われた、今度は四発発砲する。


「やってくれる、第五から第八歩兵分隊は北の山地へ前進しろ!」


 レオポルド中尉の歩兵が半数小走りに陣を離れていった、北側の防御は残り半分、ハンヴィーM1151とランドローバーが二台ずつ。


「これだけなはずがない、サイード中尉、南部はどうだ」


 本部から報告を求める、南部は山の裾野から先が広大な平地になっているので攻め上がって来るには絶好の地形。中央が混乱してからでなければ撃退もされやすい。


「異常なし。サーマルカメラにもIRカメラにも映りません」


 エンジンを切って地べたに伏せていたら気づくことは出来ない。丘の上に寝そべっていたら分かるかも知れないが、隠れるつもりならばそうはしないだろう。


「バスター大尉より本部、二時の方角より攻撃を受けている、増援の要無し! AN/TWQ防空車を守りつつ応戦しろ!」


 お馴染みのハンドディスプレイ、中央本部マリー中佐の右上、二時方向に赤い点が多数表示された、八連装対空ミサイルを装備した防空車四両、これを破壊されてしまうと中長距離の迎撃や、航空機への対抗能力を大きく失ってしまう。


 険しい山があるので後方のつもりで配置させたのに、あえて厳しい道を歩んできたらしい。伏撃防護指揮車の中でマリー中佐は眉をひそめる。日々警戒していたのに、こうも簡単に接近を許してしまったのは自分に責任があると。


「西の山岳九時方向からも敵襲! ハンヴィーを押し出して対抗するぞ!」


 レオポルド中尉の指揮分隊が山の麓にまで進出して、重機関銃とミニガンを目一杯闇の中へ撃ち返す。装甲にあたりガンガンと音を響かせるが、距離があるので防御を抜くことが出来ないようだ。かといってこちらの弾も当たっているかどうかはわからない。


「中佐、レオポルド中尉の負担が大きいです。自分が増援に出ても宜しいでしょうか」


 肩からFA-MASを引っ提げているビダ先任上級曹長が伺いを立てる。今のところ本部が接近戦をする予定はない。山からそこまで攻めて来られると思っていなかったので、確かにレオポルド中尉負担が大きい。


「行ってこい!」


「ヴァヤ! ガルシア曹長、本部の護衛を任せる。ハンヴィー二台と歩兵四個分隊は俺について来い!」


 腹の奥底から出す声に、クァトロの古参兵らが喜んでついていく。何せビダ先任上級曹長に従えば負けることがない、そう皆が信じているからだ。彼が本部を開ける時には後釜に座るガルシア曹長も随分と長い。


「ブラックホークより本部、迫撃砲陣地を撃破した。山中をサーマルで見たところ、百以上は敵が居るから注意を!」


「ほう、随分と集めて来たものだな。大尉は高度をとりつつ退避しろ、無理に偵察する必要はない」


 こんなところで対空ミサイルにロックオンされたら逃げ切れるはずがない、迫撃砲さえ潰してしまえばそれで充分だ。言った直後、地震が起こった。いや、地震かのような揺れが起きた。


「こちらバスター大尉、重砲撃でハンヴィーが一両大破した! 自走不能、負傷者を後送する!」


「重砲だと? レーダーはどうした!」


 いくつも設置されているレーダー基地からの報告はない。LPWSからの警報も無かった。俄かにバスター大尉の部隊で混乱が起こる。


「キール、歩兵二個分隊で増援に向かえ!」


「アンダスタン!」


 ハマダ大尉が陣取る三時四時方向から、一部の兵が反時計回りに走っていく。東の空に破裂する光が次々と現れた。


「自動防空ドローン群が侵入してきたドローンを撃墜しています!」


 マリー中佐は唇を噛む、もし今までの攻撃を防ぐことが出来ていなければ今頃大混乱で出血を強いられていただろうと。それほど温い防衛体制を敷いていた自分を殴りつけたい気持ちで一杯になる。


「五時方向フィル先任上級曹長です。トヨタが多数接近中、ソマリアよろしくテクニカルが現れました」


「七時、サイード中尉、こちらにも武装トラックが出ました。フィル先任上級曹長、押し出すぞ」


「ダコール!」


 M-ATV/EXTと装甲戦闘車ストライカーがエンジンを唸らせて前列に躍り出ると、十二・七ミリを一閃させる。四十ミリグレネードを前面にばらまき、テクニカルなど寄せ付けない無双ぶりを発揮した。七・六二ミリ弾をガンガンあてられるが、それを全て弾き飛ばして畑をジグザクに南下する。


 空を切る音がして、また地震が起こる。今度は随分と原発に近いところへ弾着すると、高機動ロケット車HIMRSに深刻な被害を与えた。アメリカ軍から借りている大切な兵器が屑鉄になってしまう。


「くそっ、どうしてレーダーが感知しないんだ!」

 ――重砲陣地はどこだ、空からさがさせるか? トゥツァ少佐に捜索をさせる方が?


 技術士官がヘッドフォンを押さえながら何かをやり取りすると「司令、山間いギリギリでは電波が散ってしまい探知出来ない限界線があるようです」ようやく理由を知る。水面ギリギリを飛ぶ飛行機がレーダーに映らないのと意味合いとしては一緒らしい。


「試射も無しでか! 山越と言われても重砲の射程ではどこから撃たれているかわからんぞ。モネ大尉、トリスタン大尉、二十キロ圏内で航空偵察をするんだ!」


「了解です司令。ですが時間が掛かるでしょう」


「そんなことは解っている!」


 いつになく乱暴な口調で怒鳴りつける。焦っていることが自分でも分かった、あまりに情けなくて車の壁を拳で叩いてしまった。


「マリー、俺だ」


「ボス!」


 突然通信に聞きたくなかった人からの声が入って来る。こんな醜態をさらしているのを知られたくなかった。


「ウジャンの重砲陣地をアルメニア軍に制圧させた」


「……そう、でしたか」


 直ぐに言葉が出なかった、いつまでたってもこうやって助けられてばかりで。


「マリーが部隊を指揮してくれているお陰で俺の夢は無傷だ。その程度でふさぎ込んでいる奴じゃないだろお前は」


「――申し訳ありません。もう大丈夫です」


「おう、支えてくれよ」


 通信はそれで終わった、個人回線だけでのやりとりを極めて短く終える。チラッとマリーを盗み見る本部の通信士官が首を傾げた。


「守りだなんて場当たり的な対処をするから調子が狂うんだ」


 主導権を相手に与えることの愚かさを再確認する。遠距離からの攻撃はシステムに迎撃させることでしか守れない、ならばわざわざ原発に張り付いている意味など無いのだ。


「防衛司令より下命する。歩兵は総員着剣し、照明弾を撃ち上げろ! 防空システムとその護衛のみ残し、敵を撃滅する! 好機だ、あの人の敵をここで全て打ち倒せ! アグレッション!」


 士気が高揚する。照明弾が次々と空に登ると、まるで昼間かのように周囲が照らし出された。手探りでの射撃戦を終え、目視で双方の姿を確認する。


「俺に続け、突撃だ!」


 真っ先に声をあげて飛び出していったのはビダ先任上級曹長だった、いつものことといえばいつもの事。一直線山を登っていくと、あちこちから銃弾が飛んでくる、というのに何故かかするだけで命中しない。


「戦術ミサイル飛来! …………迎撃ミサイルで対消滅しました!」


「ドローンからの航空情報を表示します」


 様々な報告が一気に氾濫し、集中しなければ聞き落としてしまうところだった。


「こちらトゥツァ少佐、ウォーバギーを大きく迂回させ北から攻撃を実施させている。戦闘指揮はマスカントリンク大尉とウヌージュール大尉」


「装甲偵察中隊着陣、これより南部に参戦する」


「防衛司令より各位、捕虜は不要」

 ――あの人の敵を一人でも多く葬るんだ!


 惜しげもなく砲弾も銃弾もばらまき、装甲を盾に優位を確保、一発逆転を許さず、包囲を縮めて行き、増援を送り続ける。そのうち歩兵支援中隊も到着し、東部も挟撃を始めた。


「キラーエッグは山狩りを行う、友軍シグナルをロストした者は麓に戻れ、カウントダウンを行う。十、九、八……フュ!」


 六銃身の十二・七ミリミニガンが二門、ヴィーンと電動の回転音を鳴らし、山肌を撫でるように毎分四千発を叩きこむ。射撃管制システムにより、射角が許す敵を狙いながら掃射を行った。


「す、すげぇ」


 地上でそれを見ていた兵がつい生唾を飲み込む、あんなものに狙われたら命が幾つあっても足りないだろう。


「司令、アルメニア軍より通信です」


 無視するわけにもいかず、仕方なく出る。


「ルワンダ派遣軍司令マリー中佐」


「アララト地区司令官サルキシャン大佐だ。何事だこの乱痴気騒ぎは!」


 耳がキーンとしてしまい顔をしかめた、何事かはこちらが聞きたいくらいだったから。


「深夜に不審者が出ましてね、現在必死に応対中です」


「何が不審者だ! 国内でなんてことをしてくれている、これは国際問題だぞ!」


 では黙ってやられていろと言うならば、付き合いきれない。立ち去るにしても原発をドカンとやられたらやはり巻き込まれてお終いになる。


「すると大佐は原発を破壊されても構わないと仰る?」


「それとこれとは別問題だ! 直ぐに騒ぎを収めろ、でないと――」


「――でないとなんだ。俺達は誰の為にここで命を張っていると思っている! 文句があるならお前がやれ!」


 ブチンと通信を切断してやると、傍の通信士官に向かい微笑し「暖かい応援メッセージを貰ったものでね」冗談を言ってやると、そいつもニヤリと笑う。暫く戦っていると朝日が差し込んで来る、銃撃の音も少なくなりやがて消えてなくなった。


「戦闘停止、死体を回収し配置に戻れ」

 ――俺はあの人の為に戦うと決めたんだ、もう迷いはしない。


 通信機をそっと置くと目を閉じる。ずっと前からそうだと決めていたのに、いざとなるとこうもボロがでてしまう。次はない、次はないとどれだけ助けられているか。



 原発の防衛がなった、島が報告を受け取った時、未だに庁舎の小会議室に居た。部下が必死に戦っている時に寝てなどいられない、相応可能な状態を保ちじっとその場で目を閉じて耳を澄ませている。早朝四時過ぎ、隣室から兵がやって来てサルミエ少佐に耳打ちをする。


「ボス、先ほど国防大臣室に官僚が入りました」


 すっと立ち上がると「行くぞ」短く言うだけで説明もなしで部屋を出た。こんな時間に官僚がやって来る、何かしら事態が動いたからに違いない。本人が停戦交渉で忙しいと言っていたくらいだ、三度目の停戦が行われるのだろう。ノックをして部屋に入ると、少しばかり意外な顔をされた後で、若干の面倒くさい表情を滲まされてしまう。


「閣下、一つ報告が御座います」


「朝早くという認識でいいものかね。どうした」


 四時前ならば夜遅くなのか、そのあたりの狭間は確かに解りづらいがどうでもよい。


「メツァモール原子力発電所が多数の砲撃、ロケット、ミサイルにより奇襲を受け、百以上の者に一斉に攻撃を受けました」


 ハクビニャン国防大臣が秘書に視線を寄越すと、大慌てでどこかと連絡を取る。裏付けをとっているのだろう、夜やすると「大臣、アララト地区司令部に確認したところ、大規模な戦闘が行われているようです」現在進行中なのは未確認事項があるからだろうか。


「中将、よもや原発に被害はなかっただろうな」


「ウジャン盆地に重砲が設置されていました。それが数発付近に弾着したものの、他は防ぎました」


「我が軍の手落ちだ、手間をかけさせてしまい申し訳ない」


 立ち上がると大臣が頭を下げて謝罪をする。権限を区切ってその内側でだけ行使しろと制限をかけたのは自分だ、そのせいであわや大惨事に陥る処だった。


「若い者が命を落としています、もう同じ過ちは繰り返させません」


「ふむ、そうだな。して襲撃者が何者かは?」


 国防大臣までは情報が上がってきていないらしい、この時間のせいだろう。アルメニア軍総司令部では認識しているかも知れないが。


「共産革命人民解放戦線、武装イスラム原理主義者組織です」


「なるほど、大多数の人類の敵というわけか。中将、本日八時に停戦が発効することになった。今度はアメリカの仲介だよ。どう思うかね」


 現在十月二十六日、戦争が始まり丁度一か月が経過した。今はまだ話し合いで止めることが出来るが、長引けば感情が先走ってしまうことも出てくる。


「戦線的にもここが限界ではないでしょうか。シュシャが健闘していますが、大部分は喪失しています」


 シュシャとはナゴルノカラバフ主都の直ぐ北東にある地域だ。そこが奪還されていないのは、言わずと知れたパルチザン活動が強力だから。


「ステパナケルトの盾かね。しかしアゼルバイジャンは停戦合意を守るだろうか」


 不安はある、一方的に防備を解けば不利になるのはアルメニアだ。かといって備えて居れば反撃もしてしまう、互いの信用などというのがあったら戦争をしていない。


「仮にアゼルバイジャンが約束に従ったとしても、原理主義者が手を出してくるでしょう、今までのように」


「どういうことだね」


「おかしいとは思いませんでしたか、いくら相手憎しとはいえ、軍兵がたったの数分で命令違反で停戦合意を破棄するような行動をしたなどというのを。騒乱が続くように原理主義者が暗躍していた、ムスリムなのでアゼルバイジャンの地に紛れ込んでです」


 言われてみれば確かに、違反での攻撃は小型の砲と携帯のロケット、そして民間人が居る場所への威嚇的な攻撃。軍相手に攻撃したら反撃を受けるから敢えて狙っただろう箇所だ。アゼルバイジャンにしてみたら身に覚えはないし、仮に戦争が続いても優位を保てるのでこれといって困りはしない。結果、戦いが続いて原発が襲撃をされている。


「狂信者共のいたずらにしては度が過ぎているな。すると今回も?」


「アルメニア本土内での民間人へのロケットなどでの攻撃、ラチン回廊ではロシア軍への誤射を装った攻撃が予測されます」


 はっきりと言われてしまうと可能性が次々と浮かんでしまう。ただの妄言だったら助かるということは、およそ実現してしまう現実がやって来るのを意味していた。何せ今の今までほぼ最悪のシナリオを辿っているから。


「北部軍はゲガルクニク地方へ攻撃で、南部軍はラチン回廊、中央軍はシュシャへか。ここで停戦せねばアルメニアに不利しかない。だがどうすれば?」


 まさかアゼルバイジャンへそれをきっちり取り締まれなどとは言えないし、部下に戦うなとも言えない。


「先の共産革命人民解放戦線は全滅しました。残るは爆弾テロを起こした自由シリア軍イスラム運動評議会です、傭兵としてアゼルバイジャンが手元に置いている奴らは、イランの支援を受けている手前従うでしょうが、支援を受ける為に功績を先に上げなければならない奴らは突っ掛かって来る可能性が高いでしょう」


「オサカニャン外務大臣を狙った奴らか。中将ならばそれを防げるとでも」


 ならば大言壮語というやつだと笑って却下するつもりだった。だが島は首を横に振る。


「自分でもそれを防ぐことなど出来はしません。が、代案ならあります」


「代案が? 聞かせて貰おう」


 一体どうすれば厄介なテロリストを相手に立ちまわることが出来るのか、ハクビニャン国防大臣も興味があった。


「方法としては非常に簡単です。ラチン回廊へ自分を派遣し、イーリヤがここに居るぞと大声で叫ぶだけで概ね解決するでしょう」


「……私にもわかるように説明してもらえるかね」


 目を細めて何を意味するかを思案したが、今手元にある情報では全く答えに辿り着けない。さりとて冗談を言っているようにも見えなかった。


「自分は長年原理主義者と戦い続けてきました。そのせいか今では奴らの暗殺者リスト上位の常連です。原発やアルメニア政府の要人よりもよほど魅力的な目標に見えるでしょう」


「貴官は、その身を晒して危険を前にし何を望む」


 真剣だった、ハクビニャンは恐らく真実を語っているということを肌で感じ取った。


「これは軍人がなすべき役目などではなく、自分自身の生き様なのです。逃げ隠れしてては何も変えられない、戦い、そして自分の力で世界を変えるだけです」


「……なるほど、貴官がロシアからもアメリカからも信任を受けている理由が今ハッキリとわかった。アルメニア国防大臣が認める、国内における我が軍と同等の権限を付与し、陸軍、空軍、および防空軍と並ぶ第四軍を臨時で設置する。停戦まで時間がない、出来るか」


「三時間あれば充分です。原発に防空システムを残しますのでご利用の程を」


「すまん、私に出来るのは権限を与えることだけだ。警察長官に道路の確保を命じる、貴官の指示に従うように言っておくのでそうしてくれ」


 互いに敬礼を交わすと大臣執務室を出る。時間は貴重だ、すべきことを一気にやらなければならない。廊下では主要な面々が待っていた。


「サルミエ、マリーへ命令だ、防空兵器を現地軍に引き継ぎ次第、部隊をラチン回廊へ移動させろ。経路を警察長官へ伝え優先的に通せ」


「ウィ モンジェネラル!」


「エーン、本部を移すぞ。全て任せる」


「ウィ モンマリ!」


「ヌル、ロマノフスキーへ連絡を入れて、ラチン回廊での受け入れを用意させるんだ。八時にはそこで戦うことになるぞ」


「アンダストゥッド マイロード」


 懐からスマホを取り出して番号を押す、一度、二度で通話状態になった。


「コロラド、大至急原理主義者らに俺がラチン回廊に陣取ると情報を流して欲しい。ここが最大の肝になる」


「エンテンドゥ ミ ケリーダァペルソナ!」


「頼んだぞ」


 一行がホテルに戻ると駐車場に島用の伏撃防護指揮車が用意されていた。周囲は親衛隊の車両で囲まれていて、更に外周はパトカーが存在感をだしている。それに乗り込むと部隊が動きはじめた、早朝の公道をルワンダと黒の軍旗を掲げた一団が走り抜けていく。


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