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港町リディル 20


「集まってくれるかい?」


 私達が終わったのを見計らっていたようで、受付に言っていた冒険者から声がかかった。 どうやら、報告は終わったようだ。 待たせてしまったので、小走りに私達も集合した。




「はい。 これが、今回の報酬だよ。 僕達はもう少し残ることになった。 君達がどうするかは自由だけど、長く縛るのも申し訳ない。 自由にしてくれて構わないよ」


「それなら、私達は街を出るわ」


 彼らはもう少しこの街に残るらしい。 遺跡は消えたが、念の為といった所だ。 私達は街を出ることに決めた。 次の目的地も決まったことだし、届け物の依頼も引き受けている。 早くこれを届けてあげよう。




「そうか。 君達にも世話になったね」


「ええ、こちらこそ」


 最後に握手をして、彼らとは別れた。 今日は一日準備をして、明日の朝方には街を出ることにしよう。 荷物を纏めるために、私達は一旦宿屋に戻ることにする。




 私とランの部屋にキースも入る。 現状を一度確認するためだ。 人数分の椅子を用意して、机に向かって腰掛ける。 机の上には紙を用意して、分かっていることを書き綴っていくことにした。




「まずは現状を確認しよう。 俺たちが分かっていることは幾つかある。 まず、レティの赤い瞳だ。 フラグメントとか言う奴らが言っているのと、遺跡で出会った魔族が言っていたのを纏めると……」


 キースが、私の置かれている状況を説明し始める。 この赤い瞳について分かっている事を、紙に逐一記録しながら。




――かつて魔王は死ぬ間際に、自らの魂を分割して封印した。 その魂は欠片となり、今を生きる人に宿っている。 宿主を見分ける材料は赤い瞳。


 エドワーズの話からすると、魂の含有量によって差があるらしい。 この話をしていたのがエドワーズという、あまり確証を持てない情報源なのが困った所だ。 しかも、エルヴィンの話していた伝説の内容だと魔王が倒されていないことになってしまう。 彼が私を困らせるために適当な事を言っている可能性もあるが、今の所は保留だ。 とにかく、魔族が私を狙っているのは変わりない。




――そして、フラグメントと名乗る者達と魔族の存在。

 

 これは実際に見たので信じる他はないが、魔族は人間に擬態していた。 しかも、選りに選って貴族の使用人に成りすましていた。 あれでは、何処までが信用における人物なのか見分ける手段がない。 暫くは、国の人間や影響を受けるギルドなども信用しないほうが良いだろう。 フラグメントと魔族は同じ組織に属していると考えてもいいだろうか……?




――ゼイルのような、彼らに加担する人間の存在。


 鉱山の街で遭遇したゼイルのような、人間でありながら彼らに協力する存在が居る可能性だ。 あの時はわけが分からなかったが、今ならなんとなく察しが付き始めている。 ゼイルに接触して核を渡したのは魔族だと予想している。 街を掌握して何をするつもりだったのかは知らないが、ろくでもない事なのは確かだ。




――目的は魔王の復活?


 ここが謎だ。 エドワーズの目的は、これで間違いないだろう。 ただ、エルヴィン達もそうなのかと聞かれると……そこには疑問が残る。 あれだけ私に接触しておきながら、攫って行こうという意思は微塵も見られなかった。 ゴーレムに捕まった時など、逆に助けてくれたくらいだ。


 彼らは魔物の核を集めていると言っていた。 核は魔王の魂の欠片とも。 それだけなら、魔王の復活に使うとも考えられる。 しかし、私を見逃す理由にはならない。 エドワーズなんて、出会った瞬間に他の街にも追いかけてくるほど執着していたのに。 それに、ジェナの私を慕う様子。 他にも何かあるような気がする。




――遺跡で見た記憶。


 エドワーズの作動させた、箱状のものから放たれた光で見た記憶。 前半と後半で全く異なる映像が流れていた。 直後、私は意識を取り戻し、赤い瞳をある程度は制御できるようにもなった。 あのイメージだけで魔法が放てる感覚。 あれがいつも使えるようになれば、魔族も少しは対処ができるだろうか。 しかし、魔王の魂の欠片と言われた力を使うのは気が引ける。 記憶は断片的だった、残りの記憶に手がかりがあるかもしれない。




――エドワーズが大事そうに抱えていた祭壇の箱。


 光の柱の原因でもある箱を、エドワーズは大事にそうに守っていた。 私の予想では、魔王の魂を封印するのに使った魔法の媒体ではないだろうか。 そんな魔法は聞いたことがないが、魂を封印するなんて強力な魔法だ。 何か強力な媒体が無いと、使えない可能性は十分にある。 それがあの箱だと、私は踏んでいる。




 この位だろう。 今の私の目的は、この街の遺跡と同じ様な物を探すこと。 そして、記憶を見るきっかけになった媒体を探し出すことだ。 散々振り回された私が、唯一彼らの虚を突いたもの。 エドワーズによって赤い瞳を引き出された私が、自我を取り戻したことだ。 彼は大袈裟に狼狽えていた、そうなるとは思っていたなかったように。 ならば、私が先に媒体を探し出して記憶を引き出し、力を制御してしまおう。 そんな事が出来るかはわからないが、実際あの時は出来たのだから。 このまま何もしないよりは、マシなはず。




「また、お前は危険なことをするな」


「レティらしいね」


 私の意見に、キースとランは呆れたような顔をしていた。 危険なことは分かっている、それでも今は可能性に縋りつくしか無い。 その事は二人も承知で、特に反論してくることはなかった。




「お前を安々と生贄にさせる気はない。 可能性があるなら、そこにかけてみよう」


「私も何か見つけたら、すぐにギルドに連絡を入れるね」


 離れてしまうが、ランも手伝ってくれる。 キースだってそばにいる。 漠然としているが、そこに確かに希望が見えた。 出てきた時とは随分違って、とても大ごとになってしまってはいるものの。 これは、私の小さい頃からの呪いだ。 むしろ、彼らを巻き込んでしまったことに謝らないといけない。




「ごめんなさい。 巻き込んでしまって……いたっ!」


 頭を下げようとするとランに叩かれてしまった。 せっかく真面目に言おうとしたのに……。 眉をひそめてランを見ると、彼女は笑顔をこちらに向けていた。 それはキースも同じだ。




「謝る必要はないの! 仲間でしょう?」


「そうだな、気にすることはない」


 小さな事のように言う彼らを、頼もしく思いながら。 私は暗い未来に希望を抱いた。 そうだ、私は未来を掴みに飛び出したんだ。 なんであろうと、遮るものは乗り越えていく。 二人とともに笑いながら、自由な世界を思い浮かべて。





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