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港町リディル 14


―――――『お疲れ様でした!』


 リディルの街の冒険者ギルドに辿り着いた私達は、歓迎されながら内部に迎え入れられていた。 襲いかかる魔物から街を救ったのだから、その待遇は当然のものだ。 けれど、私はそんな気分ではなかった。 面倒な処理はパーティを率いていた彼に任せ、適当な椅子に座って休む事にする。




「お前を自由にするつもりだったが……。 すまない、逆にお前を危険な目に合わせているな」


 隣に座り込んだキースが、傷心気味に弱音を吐いていた。 彼のせいではない、これは私の生まれついての問題だ。 それにあの魔族の様子だと、屋敷に残ったとしても私はいずれ見つかっていただろう。 それに私は……。




「ふふ、自由は自分で手に入れるものよ。 魔王だかなんだか知らないけど、私は絶対勝ち取ってみせるわ」


 そうだ。 魔王だろうがなんだろうが、私の人生の邪魔はさせない。 今まで散々、この瞳に苦しめられてきたのだから。 その為ならば、魔族だって相手にしてあげよう。 そして、私は自由を勝ち取る。 ついでに、魔王を倒してしまうのだって良いかもしれない。 そんな強気な私の発言に、キースは苦笑いをしてこちらを向いていた。




「……そうだな。 俺の意志も変わらない、お前を自由にすることだ。 その為ならば、魔王だって相手にしてやろう」


「その意気込みよ」


 二人で決めた決意のもとに、私達は顔を向き合って笑い合う。 それにはまず、魔族と戦えるだけの力を身に着けなければならない。 あの瞳を自由に使えれば良いのだけれど、それは恐らく無理だろう。 そもそも発動条件があやふやだし、暴走しかねない。 エドワーズと戦った時は、動作も属性も決めずにイメージだけで魔法を発動させられた。 あれが普段でも、使うことが出来れば良いのだけれど……。




「二人で見つめ合って何してるの?」


 考え事をしている時に話しかけられて、私は肩をビクリを震わせた。 それに勘違いをしたのか、ランは元からニヤけていた顔を更にニヤけさせた。 その顔に若干引きながら、私は落ち着いて彼女に説明をする。




「今後の意気込みを話してたの」


「……なにそれ? つまんないの。 ほら、報告終わったらしいよ。 私達も行こう?」


 期待していたものと違っていたのか、ランは残念そうにしている。 遺跡の依頼の報告が終わったらしい、私達もそちらへ向かおう。 椅子から立ち上がり、ランの後ろに続いて受付の方へと歩いて行った。




「皆様、今回は大変お疲れ様でした。 お陰様で、怪我人こそ出たものの重大な被害はありません。 これが、今回の報酬になります。 どうぞ、お受け取り下さい」


 ギルド員は労いの言葉を口にしながら、ジャラ……と音を立てて報酬の入った袋を各グループに渡していた。 私もそれを受け取り、キースに渡す。 ランに小声で『夫婦みたいだね』と言われながら、再び前を向き直した。 ……今更そんな事を言われても私は動揺しない。




「申し訳ありませんが、もう一つ依頼がございます。 数日ほど、この街に待機して頂きたいのです。 あの遺跡から、また魔物が来るとも限りませんので……」


 ギルド員は申し訳無さそうな顔をして、新しい依頼を言ってきた。 確かに魔物は討伐したとは言え、あの遺跡が危険なことには変わりない。 乗りかかった船だ、私は残ることに異論はない。 ランとキースも伺うが、彼女達も同じ意見のようだった。




「わかった、暫く滞在しよう」


「俺もだ」


 結果として、ほとんどのグループは街に残ることになった。 期間は特に決まっておらず、遺跡から危険がなくなったら終了だ。 達成条件があやふやだが、別に途中で街を出てもいいと言っていた。 その場合は、そこまでの日数に応じた報酬を払うとのことだ。 つまり、護衛任務のような形態だろう。 最も、守る対象が村なので、個人を守るのと違って付き添わなくて良いのが楽な所。 村にいさえすれば、特に何をしていても構わない。 こんな依頼が成立するのも、先の襲撃が人々の記憶に色濃く残っているからだと思われる。




「んー! 暇だね! 何する? 海で遊ぶ?」


「ラン……。 貴女あんな事があったのに呑気ね……」


 早くも娯楽気分になっているランに、私は毒気を抜かれて呆れてしまった。 そもそも、あの海岸にはまだ魔物の残骸が残っている。 私はそんな場所で泳ぎたくはない。 片付くのには数日かかるだろう。




「だって……。 ただ村に居るだけじゃ暇でしょ?」


「それは、そうだけど……」


 海に行くのは嫌だが、彼女の言うことも一理ある。 この街で暫く過ごすにしても、ただ宿屋でじっとしているだけでは暇なのは確かだ。 何かここでやり残したことは……。 そうだ、あれの存在を忘れていた。




「私、佃煮の作り方を知りたいわ」


「へ……? ふ、ふふ。 あはははは!」


 私が放った言葉を聞いて、ランは口を開けてぽかんと放心してしまった。 その後すぐに大きな声で笑い出す。 隣を見ると、キースも小さく笑っている。 ……私、何か変なこと言ったかしら? 何故か苛立つので、ランの頬を手で摘んで引き伸ばした。




「い、いひゃい! いひゃいよ、レヒィ」


 私にぐにっと頬を伸ばされたランは、涙目になりながら抗議の声をあげてきた。 満足したので、私は彼女の頬を掴んでいた手を離す。 ランは頬を擦りながら、半目でこちらを睨んでいた。




「ごめんなさい、何やら苛ついてしまって……」


「ひどいよ! ……もう。 それにしても、レティだって人の事言えないね?」


 涙目だったランの表情は、すぐにニヤけ面に切り替わる。 私が無言で両手を上げると、慌てて彼女はキースの後ろに隠れた。 彼を中心に、私達はぐるぐると追っかけ合いをはじめる。




「見られているのは良いのか?」


 キースの言葉に顔を上げる。 しまった、そう言えばギルドの中だった。 近くに居た他のグループの冒険者達が、生暖かい目で私達をじっと見ていた。 その視線に耐えきれず、私とランは赤くなって俯いた。




「はは。 若いのに凄い実力者だと思ったけど、年相応な所もあるんだね。 街の警戒は僕達がやっておくから、君達は街で遊んでいると良い。 何かあったら呼ぶから、その時は力を貸してくれるかい?」


「ああ、わかった」


 キースが応答してくれている。 私とランはというと、彼の言葉に更に赤くなって俯いていた。 街の周りでの警戒は、彼らがやってくれるそうだ。 その言葉に甘えて、私達は街の中に滞在することにした。



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