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港町リディル 11


―――――ザアアアアア……


 強い雨の音が聞こえる。 視界は暗く、何も見えない。 ここはどこ? 私は何をしていた? 何も思い出すことが出来ず、ただその場に立ち尽くす。 そして視界が開けてくると共に、何か声が聞こえてきた。




―――――『……て!』 『……ぁ!』


 見えてきた景色は激しくブレていて、よく理解することが出来ない。 断片的に見えるのは、燃え盛る街と逃げ回る人。 そして、彼らが発している悲鳴の断片だ。 場面が切り替わり、目の前には許しを請う人の姿が見える。




―――――『……』


 何か言っているが、聞き取ることが出来なかった。 私は目の前で手を合わせて頭を下げる人を、持っていた武器で手にかけた。 ……そう。 街を壊していたのも、人を殺しているのも、私の視点だ。 気分が悪くなるが、いくら悶ても変わることはなかった。




―――――『人は許されない。 自分が何をしているのか理解しようともしない。 だから、全て滅ぼす。 そして、僕が世界を作り直す。 誰も間違えない世界を、僕の手で』


 映像が途切れ、目の前に男の子が現れた。 彼は物騒なことを口にしながら、私の方へと手を伸ばしてくる。 反射的に手を取ろうとしたところで、彼はかき消え再び映像が流れ始めた。




―――――『大丈夫、また会えるから。 ね? だから、泣かないで』


―――――『ママ……』


 今度は見覚えのある人が写っている、その少女はジェナだ。 私は彼女に話しかけながら、両手でギュッと抱きしめる。 ジェナは泣き出してしまうが、そのまま暫く頭を撫でていた。 周りを見ると、空は荒れ大地は崩れかけている。 近くに数人立っているが、顔が霞んでいて確認することが出来ない。




―――――『……必ず。 迎えに行きます、待っていて下さい』


―――――『ふふ、期待しているわね』


 周りの一人が私に話しかけた。 その言葉には悲痛の感情がこめられていて、私は安心させるように返事を返している。 抱きしめていたジェナを離し、ふらふらとしながらも彼女らから離れる。 そこで再び、私の意識は暗転した。




―――――『……!』


 頭の隅に、聞き覚えのある声が響いた。 すうっと視界が明るくなると、目の前には剣を構えたキースが居る。 私は杖から魔力を伸ばし、剣のように形を変えて彼と鍔迫り合いをしている。 こんな使い方が出来るのかと杖の方を見てしまうが、そんな事はどうでもいい。 私と対峙しているキースはボロボロで、体のあちこちに傷が目立つ。




「レティ!」


「……キース?」


 現状が全く理解できなかったが、たった今わかったことがある。 キースを傷つけたのは私だ。 動揺して杖を取り零してしまう。 そんな私を彼は支え、そのまま剣を構えて別の方向を警戒した。




『……馬鹿な。 あり得ない、自我が勝ったとでも言うのか?』


 目の前で起こったことを理解できないと言った風に、エドワーズは焦り動揺している。 少し理解できた私は、落とした杖を拾ってキースを下がらせる。 魔王に体を乗っ取られかけた……とでも言えば良いのだろうか? 私は意識を失って、キースと戦っていたようだ。




「……レティ、俺は大丈夫だ」


「馬鹿を言わないで、休んでいなさい。 それに、私は今調子がいいのよ」


 キースは戦う意志を示しているが、それを一蹴して後ろに下がらせた。 彼は私に傷をつけないように、攻撃を受け続けていたのだろう。 その証拠に、私の体には傷一つない。 魔族に一人で立ち向かうのは気が引けるが、今なら出来るような気がしてくる。 先程までと違い、少しだけ赤い瞳が制御出来るような感覚がするのだ。




『仕方ありません。 私が回収するとしましょう』


 エドワーズは話しながら、両足に力を入れて飛びかかってくる。 地面が割れるほどの速度だが、今の私には捉えることが出来た。 頭の中で考えたイメージを、そのまま魔法として発生させようと手を翳す。




『"鎚"』


 地面が盛り上がり、土の形を取ってエドワーズを迎撃する。 吹き飛ばそうと思ったのだが、彼は引きづられながらも耐えていた。 鎚には罅が入り、音を上げて崩壊する。 空を舞う瓦礫の先に口を大きく開けているエドワーズを確認した。




―――――『ヴォオオオオ!』


 放たれた咆哮は、地面をえぐりながら此方に迫ってくる。 おまけに私が作った鎚の瓦礫も、弾丸となって此方に向かってきていた。 ただの咆哮でなんて威力だ、やはり人間とは根本から違うみたい。




『"盾"!』


 目の前に風の盾を形成し、飛んでくる風圧を和らげて瓦礫を細かく分解する。 このやり方は失敗だったかもしれない、砂埃が舞って視界が悪くなってしまった。 薄目を開けて前を確認するが、エドワーズの姿が見えない。 どこに……上だ!




『"剣"!』


 中から飛びかかって爪で攻撃してくる彼に対し、私は水で形作った剣で応戦した。 水は細かく振動していて、大抵のものなら切れるはずなのだが、その爪は傷がつく気配すらなかった。 爪が硬いと言うより、強い魔力を纏っているからのようだ。




『"拳"!』


『ぐっ』


 空中で彼の爪を受け止めて止まった体に、地面から巨大な岩の拳を形成して叩き込んだ。 ようやくうめき声をあげたエドワーズは、その拳を蹴って後ろへ飛び退いた。 続いて、魔力を爪に纏わせて勢いよく振り切る。 すると、爪から魔力が三日月型になって放たれた。 それは床に切れ込みを入れながら、此方に向かって進んでくる。




『"一閃"!』


 それに対し、私は風の刃を横一線に放った。 エドワーズの斬撃を真っ二つにし、そのまま彼の方へ勢いよく向かっていく。 驚いた彼は、両手を交差させるように防御の姿勢で構えた。 刃はエドワーズに直撃し、辺りに砂埃が舞う。




『なるほど、魔法戦では不利なようだ』


 煙が晴れると、見えたのは腕に薄く傷を負ったエドワーズだった。 今のであれしかダメージが入らないとなると……。 次の手を考えていると、エドワーズの体が縮んでいく。 元の人間の大きさに戻った彼は、壁から魔法で剣を形成して切りかかってきた。




「……ッ!」


 咄嗟に私も杖から魔力を伸ばして剣のようにする。 それでエドワーズを迎え撃つが、私は剣撃が得意ではない。 次第に押され始め、後ろへと後退してしまう。 魔法の距離に離れようとするが、彼が連続して斬りかかってくるので暇がない。




―――――ギィィィン!


 エドワーズが別方向からの攻撃を受け止める。 私が抉れた床に足を取られて体制を崩したところで、キースが剣に魔力を纏わせて斬撃を飛ばしたようだ。 エドワーズは斬撃を受け止めたまま固まっている。 この期を逃さず、魔法で追撃をかけた。




『"荊棘"!』


 エドワーズの足元から、無数の土の棘が襲いかかる。 体にいくつかの傷を残して、彼は祭壇の方へと飛び退いていった。 人形だと、獣のときほどの耐久力はないようだ。 今の魔法でも十分にダメージが入った。




「……」


 体の傷を確認し、キースの方へと視線を向ける。 暫くの間は誰も動かず、時が止まったかのように静寂が訪れていた。 エドワーズは四角い箱を見返して、何か考えているようだった。


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