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ノーランの街 31


―――――ガヤガヤ


 冒険者ギルドが賑わい始めてきた。 私達は、続けてシルバーランクの説明をレイラから受けていた。 とは言っても、重要なことは試験前に説明してもらったので、本当に細かいことだけだ。




「……こんな所ね。 他になにか質問ある?」


「私は無いわ。 キースは?」


「俺もない」


 私達の返事を確認し、レイラは満足げに頷く。 机の書類を片付けた所で、彼女は此方に顔を向けた。 席を立ちかけていた私は、そのままの態勢で止まった。




「あ、ごめんなさい。 貴女達、もう街を出るの?」


「そうね、数日の間には出るわ。 ランと一緒にね」


 席を片付け、立ち上がりながらレイラに答える。 それを聞いた彼女は、少し寂しそうな顔をしながら口を開いた。




「そう。 暫く、さようならね。 また戻ってきたら声をかけて? あのお店に行きましょう」


「ええ、そうしましょう」


 レイラにも挨拶を済ませ、冒険者ギルドを後にする。 昼食は適当に済ませて、旅に必要なものをいくつか買い集めた。 リディルへの道も調べた所、ここから四日といったところだった。




―――――ガチャン


「こんなものか」


「遅くなっちゃったわね」


 キースが抱えている荷物を持ち直し、中身を確認している。 長いこと街に居たので、色々と積み替えないといけなかった。 商店街で見つけた素材を使って、クッションを改良してみた。 前よりも座り心地が増したはずだ。 ……屋敷の枕の柔らかさまで、もう少しだ。




「ランは明日、宿屋に来るのか?」


「ええ。 朝に来るって言っていたから、待っていれば良いはずよ」


 明日の予定について話し合う。 ランは朝の内に来ると言っていた。 その時に、彼女に数日で出る事を伝えて準備して貰おう。 その後は、荷物を抱えて宿屋に戻り、馬車の荷台を整理した。 必要ないものを降ろして片付ける。 長いこと置いていたから、ホコリまみれだ。




「これでいいわね」


「ああ、いつでも出れるな」


 綺麗になった馬車に満足し、厩舎に預けていた馬を見に行く。 屋敷から出て、そこまで長くは無いが、この子達は私を覚えていてくれたみたいだ。 手を上げると顔を擦り寄せてくる。 また、馬車をお願いね。




「次の街にも、冒険者ギルドはあるの?」


「ある。 余程、小さい町でなければ大体のところにはあるな」


 自分たちの部屋に戻りながら、キースに聞いてみた。 冒険者ギルドがあるのなら、少し覗いてみても良いだろう。 手頃な依頼でもあれば受けてみようと思う。 せっかく、シルバーランクになったのだし。




「それなら、何か依頼があったら受けてみましょう?」


「……そうだな。 情勢もわかるかもしれない」


 気楽に提案する私に、キースは少し考えて答える。 なるほど、確かにそうかもしれない。 魔物の討伐の依頼が多ければ、付近に魔物が異常発生しているといった具合に。




「それと……」


「あの黒い具だろう?」


 う……、先に言われてしまった。 開いた口を静かに閉じて、キースを睨みながら部屋に入った。 彼は笑いながら後ろを着いてきている。 その後、寝支度を済ませた私達は就寝した。




―――――『……ティ?』


「レティ」


 翌朝、私を起こす声で目が覚める。 心なしか、二人分の声が聞こえた気がした。 重いまぶたを上げて、周りを確認すると、見えるのはキースだけだ。




「ん……、もう朝?」


「大分早いがな。 ランが来たようだ、俺よりお前が出た方が良いだろう」


 ベッドから起き上がり、窓の外を見る。 まだ空が白んでいる、相当早くにランは来たようだ。 眠いのは気の所為ではないらしい。 半分寝ぼけながら、ふらふらと部屋の扉へと向かう。




「ラン?」


「あっ、レティ? ちょ、ちょっと早かったかな……」


 そうね、予想していたより大分早かったわ。 そう考えるが口にせず、扉を開けて彼女を迎えた。 ランは私の眠そうな顔を見て、ようやく申し訳無さそうな顔をした。




「大丈夫よ」


「そう? じゃあ、出発の事なん……だけど……」


 言いかけながら、視線は部屋の中へと移動していく。 私もランの視線に合わせて部屋を見るが、そこにいるのはキースだ。 しまった、この状況を人が見たら絶対に誤解する。 血の気が引いて、一気に目が覚めた。




「あ、あは、あはは……。 お、おじゃま……しました……」


「ちょっと、まちなさい!」


 扉を閉めて立ち去っていこうとするランを、既の所で捕まえた。 そのまま彼女の腕を引っ張り、部屋の中に招き入れる。 外に誰も居ないのを確認して、私は扉を閉めた。




「わ、わた、わたし!」


「落ち着いて、誤解しているわ」


 ランは狼狽えて、おどおどとその場で手を振り回している。 彼女を落ち着かせて、椅子へと座らせた。 顔が若干赤いが、私はそれ以上だ。 気にすること無く、話を続けた。




「キースは私の護衛に同じ部屋で泊まってもらっているの。 ほら、言ったでしょう? 私、貴族の家を出たて。 実は彼は、つれてきた護衛なのよ」


 目がぐるぐるしながら、適当な言い訳でランをまくしたてる。 自分でも全く意味がわからないが、肩を掴まれている彼女はぶんぶんと音を立てて頷いている。




―――――カチャ


「そっか。 だから冒険者になりたてなのに、あんなに強かったんだね」


「ええ、そうよ」


 キースに紅茶を淹れてもらい、先程の言い訳を掘り下げて、私達はようやく落ちついた。 キースは何か言いたげな顔をしているが、彼にはこのまま黙っていてもらおう。 少し後ろを振り向いて合図すると、静かに目を閉じて頷いてくれた。




「……ほんとにそれだけ?」


「それだけよ」


 ランはニヤッとしながら聞いてくるが、私がすました顔で返事をすると、つまらなそうな顔で返してきた。 うん、紅茶が美味しい。 心を落ち着けるのに最適だ。




「話を戻すわよ。 リディルの街への出発だけど、準備ができ次第に街を出るわ。 私達はもう出来ているから、貴女に合わせるわよ」


 話題を変えて、出発の事を話し合う。 私達は既に準備が終わっているので、後はランを待つだけだ。 これ以上聞いても面白いことが出てこないと思ったのか、ランは肩をすくめて話題に乗ってきた。




「私も準備は出来てるよ。 じゃあ……もう明日でちゃう?」


「貴女が良いなら、私は構わないけれど……」


 ちらりとキースを横目で見る。 彼も頷いている、それなら明日には出てしまおうか。 そこまで考えて、一つ思い当たることがあった。




「エイリオ達にランを借りることを言っておきたいのだけれど……」


「あ、エイリオ達なら村に帰ったよ。 迷惑かけない様にって散々言われたんだから。 あと、レティに私をよろしく頼むって伝えてって」


 私は少し口が開いた。 そうか、エイリオ達は既に街には居ないようだ。 それなら明日、街を出ることに決めよう。




「そう。 それなら……明日、出発することにしましょう」


「うん! じゃあ、私は荷物持ってくるね!」


「あっ、ちょっと!」


 私が止める間もなく、ランは走り去っていってしまった。 全く、忙しい人だ。 私はキースと苦笑いしながら顔を見合わせた。 間もなくして、彼女は自分の荷物を持って帰ってきた。 それを荷台に積み込み、準備は万端だ。


 ランは今日、同じ宿に泊まるらしい。 また何か言われそうなので、私もランと同じ部屋に行こうとしたのだが、『お構いなく、ごゆっくり』 との事だ。 その時の顔が憎たらしかった。

 



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