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ノーランの街 25


「ここか」


「ええ、ちょっと待って。 魔法で降りましょう」


 大穴に辿り着いたギールさんは、部下にロープを用意させようとしていた。 それより私の魔法で降りてしまおう。 そう考えた私は、彼に提案した。




「助かる。 お前ら! 警戒して底に並べ! 嬢ちゃんが降ろしてくれる」


 ギールさんの指示に兵士たちは一列に並んだ。 いや、別に並ばなくても良いのだけれど……。 野暮なことを言うのもなんなので、そのまま彼らを降ろすことにした。




「Act.3 浮遊」


 風が私達を包み、一斉に下へと降下する。 さっきの灯の魔法の時も思ったが、この杖は魔力の伝導率が良い、とても私好みだ。 改めてキースに感謝する。 そんな彼は、ゆっくりと降下しつつも下から目を離さない。 警戒しているようだ。




―――――タンッ!


 一番下に到着し、それぞれ地面に着地する。 目の前には広い空間とゴーレムがぶつかってできた大穴だ。 それにいくつか通路が伸びている。




「よし、ゴーレムとは何処で戦ったんだ?」


「あの道の先ね」


 ギールさんの問いに、私はひとつの道を指して答える。 彼は無言で巨大なハンマーをかまえた。 ……ここに入った時から思っていたが、とても彼に似合っている武器だ。 何でも叩き潰しそうで。




 私が指した通路を進み、壁が崩れている場所で止まる。 私がゴーレムに捕まった場所だ。 思わず後頭部を手で抑えるが、既に傷は癒えている。 少し下がって杖をかまえ、魔法を発動させた。




「Act.4 破岩」


 ランが使っていた魔法を私なりにアレンジしてみた。 私の目の前に現れた尖った石が回転して前進する。 それは埋まった壁をえぐり、再び穴を開けた。 上からまた岩が崩れてくるので、対策にもう一つ魔法を使った。




「Act.4 補強」


 前の魔法で崩した岩が蠢き、穴を補強する。 採掘場で働いている気分だ、そんな事を考えている内に通れる道が完成した。




「街の守護に欲しいくらいだな」


「旅が終わったら、それもいいかしら」


「はっはっは! そん時は俺が推薦してやる。 兄ちゃん、しっかり守ってくれよ」


 冗談交じりにギールさんが離してくるので、私も同じように返してみた。 彼は大笑いしながら近くに居たキースの肩を叩いた。 彼は迷惑そうな顔をしながらも、大人しく叩かれている。 あれは本当に痛そう。




 完成した通路を、私達は進む。 ギールさんは壁の壁画を気にしていたが、特に意味のないものだと思ったのか、すぐに前を向いた。


 暫く行くと通路が広くなり、先の方に何か見えてくる。 ゴーレムの残骸だ。 私達は一応警戒して、付近を確かめながら、ゆっくりとそれに近づいていった。




「何も居ないね」


「他には居ないのか?」


 ランとリグが、そんな事を話している。 魔物が吸い寄せられるように街へと向かっているのを見たと、マイアさんは言っていた。 それが、このゴーレムの核のせいだったならば納得がいく……と考えても良いのだろうか。 ゴーレムの残骸を眺めた後、もう一度壁画を見ようと後ろを振り返った。




―――――『ギシ……ギ……』


 その音に、瞬時に振り返って杖を構える。 ゴーレムの残骸が、微妙に動いている。 魔法を発動させようとした瞬間、巨大なハンマーが振り下ろされた。




―――――……ズンッ! ズズンッ!


 その持ち主、ギールさんは何度かハンマーを叩きつけ、完全に動かなくなったことを確認して武器を降ろした。 この壊れたゴーレムが動いた時、微かに魔力を感じた。 この感覚は、他の人にはわからないかもしれない。 それでも一応、私は皆に話すことにした。




「今これが動いた時、少し魔力を感じたわ」


「魔力を感じた? つまり、どういう事だ?」


 近くで壊れたゴーレムを眺めていたギールさんが私に聞く。 なんと言えばいいだろう、感覚のことを話しても仕方がない。 かいつまんで説明するとなると……。




「私は魔力に敏感なの。 今のは誰かが魔力を飛ばして、ゴーレムを動かそうとした……って所かしら」


「ふん……」


 ギールさんは顎に手をついて考えている。 信じて貰えただろうか、彼は暫くその態勢で固まっていた。 少しして、周りを見渡して部下に命令を飛ばす。




「お前ら! これを回収するぞ。 持って返って調べる。 嬢ちゃんの言う通り、まだ近くに誰か居るかもしれん。 警戒を怠るな」


 とりあえず、少しは信じて貰えたという所だろうか。 彼の部下は、持ってきた道具でゴーレムを解体していく。 この期に及んで誰が魔力を送ったのか……。 まさか、ジェナやエルヴィン?




「嬢ちゃんの言っていた二人組が近くに居る可能性もあるな」


「信じてくれるの?」


 ギールさんも同じ事を考えていたようで、私は少し嬉しく思った。 なぜそこまで信用してくれるのか、思わず聞いてしまった。




「この場で嘘をつくような人間には見えないからな、後は……勘だ」


  そんな事を言い出すギールさんに、私は思わず笑ってしまった。 彼も存外、お茶目な所もあるようだ。 やはり、彼は外見で大分損をしている。 改めて、私はそう思った。




 その後は、キース達が対峙したゴーレムも回収しに向かった。 通路を調べて回ったが、壁画と像以外におかしなところは見つからない。 なので、私達は引き上げることにした。 その内に、専門家が調査に入るだろう。




「レティ。 大丈夫か?」


「大丈夫よ。 それと、この杖。 とても使いやすいわ、ありがとう」


 キースが気にかけているのは、ひどい目あった場所を再び訪れた事だろう。 確かに、昔の私なら泣いていたかもしれないが、今は立派な冒険者だ。 対して気にもしていない、むしろいい経験になったと思う。


 返事ついでに、杖のことを改めて感謝する。 キースは無言で微笑み、去り際に『そうか』と一言言って顔を背けた。 なに? 今更、照れているの? ちょっと、こっちを見なさい。




「ねえ、キース。 こっち見て?」


「なんだ、なにもないぞ」


 抵抗するキースと取っ組み合いになってしまった。 彼が強情なのがいけない。 お蔭で、周りに人がいるのを忘れていた。 皆はなんとも言えない顔で此方を見ている。 ランなどにやにやと笑っていた。 気づいた私は赤面するが、すぐに咳払いして表情を戻す。




「仲いいね~」


「ラン? ちょっと話があるわ」


 からかってくるランに笑みを浮かべる。 どうやら彼女と、少しお話をしなければならないみたい。 こんな所で、私はランを暫く追いかけ回した。




 そんな事をしている内に、私達は地上に辿り着いた。 ギールさん達は、ゴーレムの残骸を領主の届けに行くらしい。 そこで詳しく調べるようだ。 私達はゴーレムの残骸に特に執着はないので、それを見送った。 その分の報酬はギルドで受け取れるとの事だ。


 

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