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ノーランの街 24


「ごちそうさま」


「おお、お粗末様。 マイアから聞いてるかもしれないが、君達のおかげで助かったよ。 改めてありがとう、お代は良いよ」


 食事も終わり、代金を払いに向かうとジェムズさんが応対してくれた。 彼は代金は要らないと言ってくる。 流石にそこまでしてもらう訳にはいかない。 なにか良い言い回しはないかと考え、思い付いたことを口にした。




「それじゃあ、これで新しい美味しいものを作って頂戴。 また食べにくるわ」


 そう言って代金を彼に手渡した。 ジェムズさんは呆気にとられていたが、すぐに笑顔になって受け取った。




「わかった。 次来るときまでに考えておこう」


「ふふ、楽しみにしているわ」


 そして私達は、ジェムズさんのお店を後にした。 お腹も膨れたことだし、そろそろ宿屋に戻ろう。 実を言えば、なくした杖の代わりも用意したかったが、明日ギルドで予備でも借りれば良いかと妥協する。 ……眠いの。




「ほら、レティ」


「……ええ」


 キースは私の手を取ってくれた。 そのまま彼に連れられて、宿屋へと戻る。 その後のことはあまり覚えていない、ぼーっと寝る準備を済ませて就寝したはずだ。




―――――チチ……




―――――チチチチ……


「うん……?」


 宿屋のベッドで私は目が覚めた。 そして徐々に昨日の記憶が蘇ってきて、顔が赤くなってくる。 キースに手を引かれて宿屋に戻り、彼はそのまま寝支度まで整えてくれた。 これでは私は、まるで子供だ。 非常に恥ずかしい。




「おはよう」


「おっ……はよう、キース」


 心臓が飛び出るかと思った。 横を見ると、キースが椅子に座って静かに本を読んでいた。 彼は特に普段と変わらない、無駄に意識している私が馬鹿みたいだ。 ため息を吐いて、普段の調子を取り戻した。




「まだ調子が戻らないようなら、地下の調査を延期してもらうが……」


「……はぁ。 大丈夫、体調は万全よ」


 その様子がキースには不調だと写ったのか、私の心配をしてきた。 違う、そう言うことじゃないけれど……自分で言うのも恥ずかしいので、そのまま流すことにした。




「でも、杖は借りないとね」


「ああ、それだが……」


 キースは足元の袋をガサガサと漁り始めた。 そこから取り出したのは、布に包まれた何かだ。 彼はその包を、私に手渡す。




「なくしただろう?」


「えっ……」


 その言葉に包みを開けてみる。 そこにあったのは、先端に綺麗な宝石をあしらった短杖だ。 私は返す言葉が見つからず、口をパクパクとしてしまう。




「昨日、ギルドに報告している時に注文しておいた。 使ってくれ」


「あ……ありがとう」


 いつの間に……。 キースの顔を見るが相変わらず無表情で、動揺しているのは私だけ。 最近、こういう事が増えてきている気がする。 毅然としている彼の顔が、少し憎たらしく見えた。




「朝食を貰ってくる」


「……ええ、ありがとう」


 そう言ってキースは部屋を出ていってしまった。 考えるだけ無駄な気がしてきた、気持ちを切り替えよう。 彼の言う通り、この後ギルドに行って地下に潜るのだから。




 宿屋で朝食を取り、準備を済ませた私達は、ギルドへと足を運んだ。 レイラさんの話では、街の兵士と共に地下に潜ることになっているはずだけれど……。




「あ、レティさん! こっちですよ!」


 奥の部屋から声がかかる。 そちらに顔を向けると、レイラさんが私達を見て手招きをしているのが見えた。 私とキースは彼女の方へと近寄る。




「此方でお待ち下さい。 すぐに街から同行する人員が来ますから」


 その言葉を聞きつつ中を覗く。 そこには数人の冒険者達が居た、エイリオのグループだ。 そのうちの一人、ランが此方に向かって駆けてくる。




「レティ! おはよう」


「ええ。 おはよう、ラン」


 挨拶もそこそこに、今日の予定を話し合うことにした。 街の兵士がつき次第、私達は地下へと入る。 ルートは同じ道だ。 ゴーレムが開けた穴から更に下へと進み、戦闘のあった場所を回っていく。 もし、魔物が残っていれば討伐する。 後は、増援が来てから話し合うことにした。




―――――ゴンゴン


 扉を叩く音が聞こえ、直後に人が入ってきた。 その形相に、エイリオ達は竦んでしまう。 睨みつけるように一通り中を見た彼は、私とキースを見て表情を少し緩めた。




「嬢ちゃん達か」


「ギールさん」


 そう、ギールさんだ。 確かに、守門長であるかれなら実力は相当なものだろう。 強面の顔に引いてしまっているエイリオ達の代わりに、私が話を進めることにしよう。




「ギールさんが、今日地下に一緒に行く人?」


「ああ、そうだ。 外に他の兵士を待たせてある。 別の冒険者グループは、既に兵士を連れて水門に向かった」


 なるほど、通りで部屋に姿が見えないと思った。 別の入口から入ったグループは既に兵士と共に水門に向かったようだ。




「それじゃあ、大まかに話すわね」


「頼む」


 ギールさんと地下に入ったあとの進路に着いて話し合った。 彼も異論はなく、先程私達だけで話し合った通りの順路で決定する。 一番時間がかかったのは、萎縮するエイリオ達を気付けて、ギールさんに自己紹介させる事だ。




「ねえ、知り合いなの?」


「前に彼から依頼を受けただけよ。 ギールさんは見た目は怖いけど、良い人だから安心して」


 話し合いが終わり、ギルドの外へと向かう途中で、おずおずとランが服をつまんで話しかけてくる。 その様子に笑いながら、私はギールさんの誤解を解いた。 あまり信じられないようだが、先程の自己紹介は上手くいっていたはずだ。 ギールさんに自分の紹介をする時、あまり目を広げないように助言してみた。 力んでしまうのか、彼は話すときに射殺すような目をするのだ。 ラン達は笑って応対していた。 ……いや、乾いた笑いだったかも。




 外で待機していた兵士と合流し、ギールさんが支持を出している。 そしてぞろぞろと彼らを引き連れて、噴水広場の方へと向かった。 周りの人が何事かと、此方を見ていた。




「ここからね。 人数が多いから別れて入りましょう」


「そうだね。 ……ギールさん達も、何人かのグループに別れてもらえますか?」


 数人で組んで、間隔を開けつつ移動したほうが良いだろう。 ようやくまともに喋ったエイリオが、ギールさんに私の言葉を伝える。 最初は良かったのに、最後の方は敬語になっていた。




「Act.1 灯」


 準備が整い、それぞれ地下へと侵入する。 これだけ人数が多ければ、奇襲する必要もないだろう。 灯の魔法を強めにイメージして通路を照らした。




―――――ザッザッザッ


 後ろから規則正しい足音が聞こえてくる。 率いているのはギールさんだ。 他の兵士たちも相当な実力者だろう。 進みながら警戒を怠る事がない。




「あそこね」


 何事もなく通路を進み、ゴーレムが開けた大穴の場所まで辿り着いた。 その穴を上から覗く。 改めて見ると、とんだ目にあったものだ。 後ろを見ると、ギールさん達が気を緩めること無く向かってきている。 今回は彼らも居ることだし、大丈夫だ。 再び大穴を見て、私は息を吐いた。



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