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ノーランの街 22


「う……ん~!」


 私はベッドから起きて、背を伸ばす。 隣を見るが、キースの姿は見えない。 先に起きて部屋を出たらしい、相変わらず早起きだ。




「…………」


 ぼーっと部屋の中を見渡す。 体の節々がまだ痛い、昨日の名残だ。 結局、あの後はギルドに軽い報告をして解散した。 詳しいことは今日、この後にギルドに集まって話すことになっている。


 ジェナにエルヴィン、彼らは"フラグメント"と名乗った。 結果だけ見れば、今回は助けられた事になるわけだが……頭ごなしに信用することも出来ない。 結局の所、ゼイルに核を渡したのは彼らなのか、核を集めて何をするのか。 聞きたいことが沢山ある。 それに、私の赤い瞳の事も、彼らは知ってるのかもしれない。




―――――ガチャ…… パタン


「起きたか」


 キースが扉から入ってきた。 手に持っているプレートには、朝食が乗せられている。 彼は机にそれを置いて、二人分の椅子を用意してくれた。 私は匂いにつられて、そちらへと歩み寄った。




「ありがとう」


「ああ」


二人で朝食を食べながら、私は機能のことを振り返っていた。 エルヴィンの言っていた、魔王の伝説の物語。 あの場で大げさに語ったのだから、何か意味があるのだろう。 行く先の街で余裕があったら、伝説について調べてみるのも良いかもしれない。




「傷は大丈夫か?」


「ええ。 もう、大丈夫」


 キースが私の頭を見ながら心配してくれる。 あれだけ盛大にぶつけた傷が、もう元通りだ。 しっかり寝て、体力も回復した。




「さあ、冒険者ギルドに行くんでしょう?」


「そうだな」


 食事を済ませ、立ち上がった私にキースも続く。 そろそろ、冒険者ギルドに向かうとしよう。 エイリオ達はともかく、水門から向かったグループは既に居るかもしれない。




―――――ガチャ


 キースは昨日の事について、何も行ってくる様子はない。 私から離れてしまったことに、負い目を感じているのだろうか。 二度と目を離さまいと、しきりに私の方をチラチラと見てくる。




「ふふ」


「……なんだ」


 思わず私は笑ってしまい、キースは顔を歪める。 その表情が、更に私を笑いに誘う。 まずい、今日は感情の沸点が低いかもしれない。 昨日を切り抜けて、気が緩んでいるみたい。




「ふふふ……。 ううん、違うの。 キースがまるで、子供を守る親鳥みたいで」


「…………」


 笑っている私に、キースも毒気が抜かれたのか呆れたような顔をする。 そしてすぐに、真剣な表情をして口を開いた。




「レティ。 昨日は、お前を危険な目に合わせてしまった。 俺の責任だ」


 キースは立ち止まって、頭を下げてくる。 気持ちはわかるが、往来でそんな事をするのは止めて欲しい。 周りの視線が気になって仕方がない。




「ちょっと……。 いい? 貴方のせいじゃないし、誰のせいでもない。 私の不注意よ。 ……まぁ、壁から来るなんて想像もつかなかったけど」


「だが……」


 私はキースを諭すが、彼は納得していないようだ。 あの時点で、ゴーレムが壁を突き破ってくるなんて想像できた人は居ないはず。 誰も攻めることは出来ない、強いて言うなら自分の責任だ。




「なら、こうしましょう? 私に危険が及ばないくらいに強くなりなさい? もちろん、一緒にね」


「……わかった、約束しよう」


 キースは目を瞑って頷いた。 強くなればいい、極論だが単純でわかりやすい。 納得したと言うより、半分呆れているような感じだ。 ……よし、話がついた所で移動しよう。 ものすごく見られていて恥ずかしい。




「もう集まっているな」


 冒険者ギルド前にたどり着くと、水門側から入ったグループとエイリオ達も集まっていた。 私達が一番最後のようだ。 少し早足に彼らに近づいた。


 結局、水門側のグループは目標の魔物を倒したらしい。 そちらにはジェナ……黒い髪の少女は、現れなかったそうだ。 大型の魔物で体内のコアは相当な大きさだったそうだが、回収しに来なかったのは何か理由があるのだろうか。




「ごめんなさい、遅れたわ」


「大丈夫だよ。 それより、ゆっくり休めたっ……!」


「レティ!」


 此方に声をかけてくるエイリオを突き飛ばして、ランが私に駆け寄ってきた。 そのまま勢いは収まることはなく、私は彼女を抱きとめた。




「ラン、貴女も大丈夫だった?」


「うん! レティも平気?」


 お互いに無事を確認して、笑いあう。 彼女も今回で相当な経験をしたはずだ。 気が滅入ったりしていなくて、良かったと思う。




「う、ううん! さて、揃った所で中に入ろうか」


 気を取り直したエイリオが、全員をギルド内へと誘導する。 彼に続いて、ぞろぞろと私達は中に入り込んだ。 入るとすぐにレイラさんが出迎えて、奥の席へと案内される。




「皆さん、今回はお疲れ様でした。 本日は情報をまとめて、詳しい報告書を作成します。 ご協力、宜しくお願い致します」


 レイラさんは仕事モードだ。 彼女の主導で、私達は昨日あったことを報告書に纏めていく。 ゴーレムと戦闘になったこと、フラグメントと名乗る彼らと出会ったことも全てだ。




「ゴーレムと戦ったとは、ついてないな」


「ああ。 彼女が居なかったらと思うと、ぞっとするよ」


 別グループの冒険者とエイリオが、そんな事を言いながら此方を見ている。 私はそれに微妙な笑顔で返した。 そんなに私を持ち上げられると、次にゴーレムが出たら呼ばれそうだ。 私はあまり気が進まない、できれば、もう少し強くなってからにして欲しいところ。




「フラグメント……ですか? 魔物の核を吸収したなんて、想像がつきませんね」


「ええ、でもこの目で確認したわ。 信じられないと思うけれど……」


 レイラさんが信じられないのも無理はない。 魔物の核を吸収するなんて、出来る人は居ないだろう。 それでも、彼女は報告書へ書き込んでいく。 私の言葉を信用してくれたのだと思うと、少し胸が温かくなった。


 その後も暫く、お互いに情報を交換しあって報告書を纏めた。 事細かく現場の状況を纏めたせいで、気づけば昼過ぎになってしまった。 お昼ご飯はギルドで用意して貰って、私達は報告書の仕上げにかかった。




「はい、お疲れ様です!」


「……あー! 体が固まっちまった」


 グループの誰かが、そう叫ぶ。 ようやく出来上がった報告書を見て、私達は息を吐いて体の力を抜いた。 もう夕方だ、結局一日かかってしまった。




「それでは、あちらのテーブルで報酬をお受け取り下さい。 ……レティさん達には申し訳ないですけど、明日も宜しくお願いしますね」


 受付のテーブルを指した後、私達を見て申し訳ない顔をする。 私達とエイリオのグループは明日、街から派遣された兵士と共に地下に入ることになった。 目的はゴーレムの残骸の確認と回収だ。




「ええ、大丈夫よ。 任せて」


 エイリオ達も頷いている。 また地下に行くことになるが、派遣される兵士は実力者とのこと。 それなら、今回は私は楽ができそうだ。 対ゴーレム用の武器も持っていくそうなので、対策も万全だ。 攻城魔法だけあって、それ用の兵器が用意されているらしい。




「それでは、本日は解散です。 皆さん、有難うございました」


 レイラさんの号令で、私達は解散する。 もう遅い時間だし、明日に備えて宿屋に帰ろう。 ……いや、何処かで夕食を頂くのも良いかも。 そんな事を考えながら、私はキースと共にギルドを後にした。


 






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