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ノーランの街 20


―――――ズン……ズン……


 大きな足音と振動で、私は目を覚ました。 ばっと頭を上げて状況を確認する。 ゴーレムは私を握ったまま、何処かへ向かっているようだ。 辺りは暗くて何も見えない。 私を何処に連れて行く気なのだろうか。




「……痛っ」


 頭に痛みが走る。 左手はゴーレムの手に挟まっていて動かせないが、自由な右手で傷を確認する。 どうやら、石で頭を打ってしまったようだ。 鈍い痛みが続いて、思考が若干遅れている。




「いつまで……掴んでいるのよ!」


 鈍る思考を回転させ、右手をゴーレムの肩に向かって突き出す。 杖は何処かに落としてしまった。 加減が効かないが、仕方がない。




「Accel.4 破城槌……!」


 現れた巨大な破城槌が、ゴーレムの肩辺りをえぐり飛ばす。 おまけに付近の壁まで、少しえぐれた。 反動でゴーレムは倒れ、私を掴んでいた腕は地面に落ちる。




「Act.3 球!」


 床にぶつかる前に、風で自身を受け止めた。 腕から抜け出して、倒れているゴーレムを見据える。 それは器用に残っている手で体を起こして、此方へと向かってきた。




―――――『ギギ……』


 軋む音を上げながら、残った腕を私に向かって振り上げる。 不味いと思いながらも、頭の痛みが邪魔をして、上手く魔法をイメージできない。 思わず私は目を瞑った。




「……?」


 いつまで建っても衝撃が来ない。 不思議に思った私は、ゆっくりと目を開けた。 すると見えたのは、"目の前を埋め尽くす黒色"。




『ママ……』


 聞き覚えのある、その声に振り返った。 そこに居たのは、ゴーレムに向かって黒い腕を伸ばしている……。




「ジェナ……?」


 ジェナだった。 私の呼ぶ声に、彼女は笑顔で頷く。 相変わらず瞳には感情がこもっていないが、その笑顔は年相応の子供のそれだ。




―――――ビキッ……。 ガッ……ガガン!


 その音に、ゴーレムの方を振り返った。 壊した肩が、辺りの岩を吸収して再生している。 完全に手の形を取り戻した後、それを私に向かって伸ばしてきた。




『……邪魔』


 再生した手にも黒い手が組み付き、そのまま外側へと引っ張る。 次第に体にヒビが入っていき、ついに真っ二つに千切られてしまった。 黒い手は、引き裂いたゴーレムを投げ捨て彼女へと戻っていく。




「……」


 私は驚いて言葉が出なかった。 ジェナがここまで強かったとは……。 洞窟であった時は、本気を出していなかったようだ。 なぜ? 私が相手だったから?




「ママ……」


 ジェナは私に近づいて抱きついてきた。 反射的に私も受け止めてしまう。 急に動いたので、頭に再び鈍い痛みが走った。




「……っ!」


「ママ……怪我してる……」


 ジェナが不安そうに私を気遣ってくれる。 ともかく、助けてくれたのだ。 私は彼女の頭を撫でて、自分に治癒の魔法をかける。




「Act.2 治癒」


 水が私の頭に張り付き、傷を癒やしていく。 制御ができず、思ったより大きい。 お蔭でびしょ濡れになってしまった。




「ジェナ、ごめんね? 今乾かすわ」


「……うん」


 ジェナは近くで見ていたので、少し濡れてしまっている。 私が乾かすと言うと、何故か抱きついてきた。 少し驚いたが特に支障はないので、そのまま魔法を発動させることにする。




「Act.3 乾燥」


 やはりこれも、少し大げさになってしまった。 ジェナは目を閉じたまま、私に抱き着き笑っている。 ……お気に召したようでなによりだ。




「はい、おわったわ」


「……ありがとう」


 私の言葉にジェナは目を開けて、頭を振るう。 そして、私の目を見てお礼を言った。 元々私が濡らしてしまったのだから、礼を言う必要はないのだけれど、素直なその様子に思わず笑ってしまった。




「貴女はどうして、ここにいるの?」


 傷も癒えた所で本題だ。 なぜジェナは此処にいるのだろう。 私は一瞬、ゴーレムに関与しているのかとも思ったが、先程彼女はそれを倒していた。




―――――『その質問には私が答えましょう』


 突如後ろからかかった声に、私はジェナを抱えて飛び退いた。 後ろを向くと男が一人、ゴーレムの近くに立っている。




「またお会いしましたね」


「貴方……。 ゼイルの時に居た人ね」


 彼も見覚えがある。 確か、ゼイルの核を回収して消えた男だ。 戦うことになりそうだけど、ゴーレムのコアだけでは明かりが少ない。 いくつか明かりを増やしておこう。




「Act.1 灯」


 出現した巨大な火の玉を壁際に配置する。 それにしても、彼は微動だにもしなかった。 私がいきなり魔法で攻撃する可能性もあったのにもかかわらず、その場から一歩も動いていない。




「私に、貴女を攻撃する意思はありません。 前にも言った通り、これを回収しに来ただけです」


 そう言って、ゴーレムのコアに手をかざす。 するとコアが流動し、凄まじい風と共に彼の手に吸収されていってしまった。 今度は目を離さないように、手をかざして薄めで耐えた。




「……何が目的? ゼイルに核を埋め込んで何がしたいの?」


「……」


 私の質問に、彼は答える気配がない。 それなら、と捕縛の魔法を発動させようとすると、彼は手をかざして私を制止した。




「少し、昔話をしましょう」


「……?」


 壁の方へと歩きながら、そんな事を言ってくる。 私は怪訝に思うが、よく見るとこの辺りにも、壁画がびっしりと刻まれているのに気づいた。




「貴女は、魔王の伝説を知っていますか?」


「……知っているわ。 勇者によって魔王が封印された、そんな話でしょう?」


 彼は壁画に手をやりながら聞いてくる。 魔王の伝説、時がたって色々と派生しているが、最終的にはどれも同じ結末にたどり着く。




「そうですね。 それでは、私の知っている魔王の伝説について、お話しましょうか」


 壁にやっていた手を離し、此方を振り向いた。 そのままゆっくりと両手を広げ、彼は魔王の伝説について語り始めた。


 



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