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ノーランの街 19


―――――タッタッタッタッ


 通路をひたすらに走っていく。 広い通路から狭い横道に入り、暫く進んだ所で一旦休憩する事にした。 もう音も聞こえず、ゴーレムが追いかけてくる気配はない。




「ふう、まいたかな?」


 エイリオが走ってきた通路を見て呟く。 もう一度会いたくはない、何とかして上に上がる方法を見つけないと……。 周りを見回すが、暗くてよく見えない。 明かりの魔法を使うことにした。




「Act.1 灯」


 火の玉が辺りを照らす。さっきまでは必死に走っていたので気づかなかったが、壁一面に壁画のようなものが描かれている。




「これ、なんだろ。 遺跡かな?」


 ランが不思議そうに壁画を触っている。 確かにそれっぽいが、こんな街の地下に発見されずに残っていたのだろうか。




「これは……。 魔王か?」


 キースの言葉に一瞬ドキリとした。 彼が見ている壁画には、巨大な何かが手を伸ばしている。 その先には人らしき絵が跪き、頭を垂れていた。 魔王の支配を表したものだろうか。




「そんな事より、どうやってここから出るかだろ?」


 リグが疲れたように話す。 確かにどうしたものか……。 とりあえず、先に進む道はある。 まずは、この道を行って奥を確かめるべきだろうか。 後ろに戻れば、ゴーレムと鉢合わせる可能性もあることだし。




「先に……進んでみましょう?」


「そうだね、気をつけて行こう」


 私の提案に、エイリオが反応した。 他の皆も頷いている。 決まった所で出発だ。 地下に入った時と同じ陣形で暗い道を進む。




―――――コツコツ……コツコツ…… 


 暫く行った所で、分かれ道にたどり着く。 両方の道を照らしてみると、右側の方の奥が少し広くなっているのが見えた。




「右側から行ってみよう」


 エイリオに続いて、私達も同じ道を進んでいく。 先程確認した奥にたどり着くと、部屋の中央には像が佇んでいた。




「何かないか探してみましょう」


 私の言葉に頷いて、皆はそれぞれ部屋を調べ始める。 ざっと見た所気になるのは、壁の壁画と…… 中央にある像だ。




「これは……」


 私はそれに見覚えがあった。 これは確か……ウイユの村の洞窟で見た像と似たものだ。 私がそれを眺めていると、キースが近づいてきて像を見上げた。




「前に行った洞窟にあったものと同じものか?」


「ええ、そうみたいね」


 所々破損していて少々分かりづらいが、恐らく同じものだろう。 エイリオ達は、部屋の内壁にびっしりと描かれた壁画を確認している。




「さっきまでの通路に描かれていたものと似ているね」


「全然意味わからないけど」


 エイリオとランは壁画を見て頭を捻っている。 恐らく、伝承の魔王について描かれたものだとは思う。 しかし、ここに描かれている意味は全くわからない。




―――――カッ…… カッ…… カカッ……


「隠し扉なんかもなさそうだ」


 リグは斧で壁を軽く叩きながら、部屋を一周している。 この部屋には、これ以上奥の通路もないようだ。 今度は、さっきの分かれ道を左に行ってみよう。




「戻って、もう一つの道に行きましょう」


「ああ」


 一通り調べた所で、私は戻ることを皆に提案した。 全員が頷いたのを確認して来た道を戻り、先程曲がった分かれ道を、今度は左に向かって進む。




―――――ビリビリ……


 地面が少し振動する。 さっきのゴーレムが暴れているのだろうか。 私達は一旦止まって辺りを警戒した。 暫くすると振動は収まり、再び私達は道を進み始めた。




 前方に明かりが見えてきた。 もしかして、何処かの道に繋がった? 私達はお互いに顔を見合って頷き、ゆっくりと明かりへと向かう。




―――――『ギギ……』


「戻って!」


 音が聞こえた瞬間、私は全員にそう叫んだ。 身を翻して進んできた道を戻りながら、後ろを伺う。 そこには、此方を覗いているゴーレムが見える。 狭すぎて入れないようで、手を通路へと伸ばしている。 あの明かりは、ゴーレムのコアから放たれていたようだ。




「はぁ……はぁ……。 もう、嫌……」


 息を上げながら、ランが泣き言を言う。 気持ちはわかる、こんな所にゴーレムと閉じ込められているのだから。 けど、そんな事も言ってられない。 とにかく進むしかない。




「あっちにゴーレムがいるのなら、一旦戻りましょう。 他に通れる道があるってことよね」


 あのゴーレムが向こうに居たということは、他に何処か道があるということだ。 再び私達は道を戻り、先ゴーレムと戦った部屋を目指す。




―――――ビリ……


 急に戻ったせいで、陣形が崩れている。 今は私が一番前だ。 後ろの方で振動する音が聞こえた。 さっきのゴーレムが暴れているのだろう。


―――――そのせいで、別の振動音に気づくことが出来なかった。




―――――ビキッ! ゴバァァ!


「っ!」


 壁から突然、巨大な手が現れた。 それは私を鷲掴みにして壁の中へと引きずり込んでいく。 目の前では、キースが鬼の形相で此方に向かってこようとしている。 なぜこんな所に……。 まさかゴーレムは一体じゃない?




―――――ガラガラ! ゴン!


 巨大な手が空けた穴が、崩れた壁で埋まっていく。 そのせいで私は皆と分断されてしまった。 なんとか手から逃れようともがくが、上から振ってきた壁の破片が頭に当たり、私は気絶してしまった。




―――――『レティ!』


 薄れゆく意識の中、キースの私を呼ぶ声が頭の中にこだましていた。



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