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ノーランの街 16


「よし、皆大丈夫かい?」


 エイリオが全員に確認する。 皆目立った怪我も負わなかったし、戦果は上々だ。 この調子で他も仕留められればすぐ終わりそうなのだけど。 ……広すぎてそれは無謀か。




「ええ、大丈夫よ」


「すごい! レティ!」


 ランが抱きついてくる。 魔法を褒めてくれているのだろう、私からすれば貴女の体術のほうが凄かったけれど。 あんなのは真似できそうもない。




「ありがとう、貴女も凄い動きだったわね」


「そう? 小さい時から習ってたからね! それに使う機会もよくあったし」


 後半はエイリオとリグを見ながら話していた。 彼らは途端にランから目を離してしまう。 この三人の力関係が分かってくるような気がした。




「……」


 ランを宥めてキースの方を見ると、彼は倒した魔物の一匹を調べていた。 不思議に思った私は、彼に近づいて魔物の方を見た。




「どうしたの?」


「いや、この魔物。 既に他から攻撃を受けていたようだな」


 キースが指している魔物を見てみると、確かに尻尾の部分が不自然に潰れている。 これは確か……エイリオが仕留めた魔物だ。 切り傷ならわかるけど、潰れた跡?




「それは僕が相手にした魔物だね。 確かに、僕が付けた傷じゃない。 水門側から逃げてきたにしては……遠すぎるな」


 可能性としては、水門側から入ったグループと戦い、傷を負ってここまで来たか。 しかし、水門からここまでは大分距離がある。 そんなにすぐに移動はできないはずだ。 だとすると……。




「他の魔物と縄張り争いでもしていた……とかか?」


「その可能性もあるわね」


 リグが顎に手を当てながら、思ったことを口にした。 確かに、ここまで多種多様な魔物がいるとなると、その可能性も否定できない。 リグは私と目が合うと、すぐに顔を逸してしまった。 どうやら、女性に対する免疫が低いようだ。 彼も彼で大変そうだ。




「向こうに血の跡が続いているな」


 キースは私達が戦って魔物から出たものより、古い血の跡を発見した。 明かりの魔法を近づかせて、よく確認してみる。 それは更に奥の方から、引きずったような形跡が見られた。




「この跡からすると、魔物は傷を負って奥からここに来たという事だね」


 エイリオが跡の続く先を見て言い、私達も続けて奥を眺める。 この先に、傷を負わせた主が居るという事だ。 潰れた跡から見るに、かなり大型の何かから攻撃を受けた感じがする。




「確認しに行こう」


 エイリオが武器を構えて、慎重に先を行く。 私達も辺りを警戒しながら、ゆっくりと彼の後をついていった。 相変わらず、辺りは薄ら暗い。 明かりの魔法を頼りに、少しづつ先を照らしていく。




――――― 『ギュ……ギュウゥゥ』


 聞き覚えのある声がした、確かこれは……。




「Wait.3 盾!」


 嫌な予感がした私は、咄嗟に防御の魔法を唱えた。 形成した風の盾に何かが当たり、弾き飛ばされる。 明かりを強くして確認すると、マイアさんの畑で戦ったのと同じ魔物が見えた。




―――――ギュゥゥゥ!


 その魔物は空中で体を捻って、壁に張り付いた。 なるほど、天井に潜んでいたのか。 足に吸盤か何かがあって、張り付くことが出来るのだろう。 前に戦った時は畑で、使う機会がなかったようだ。




「離れよう!」


 エイリオの言葉に、固まっていた私達は散開する。 それぞれ武器を構え、天井にいる魔物を見据えた。 キースがポケットからナイフを取り出し、魔物に投げつけるのが見えた。




―――――『ギュオオオオッ!』


 投げたナイフは魔力を纏い、壁に突き刺さる。 魔物は瞬時にそれを回避して、キースに向かって飛びかかった。 彼が剣を構える前に、リグが間に入って斧を振り下ろす。




―――――ガギッ!


「ちっ、硬いな」


 斧は魔物に直撃したが、身が切れることはなかった。 しかし、鈍い音をたてて魔物を吹き飛ばす。 足をバタつかせて起き上がろうとしている魔物に、ランがナックルガードを構えて近づいた。 その拳は魔力を纏って淡く光っている。




「はっ!」


 今度は弾かれることはなかった。 拳はめり込み、魔物は壁に激突する。 魔力を纏った攻撃は効くようだ、私は杖を構えて魔法を唱える。




「Act.1 螺旋!」


―――――『ギュアアアアアッ』


 収束した炎が螺旋を描きながら、魔物に真っ直ぐ飛んでいく。 それは魔物の体に当たり、回転しながら体を抉る。 少し皮膚の表面で止まっていたが、すぐに貫き身を焦がした。 魔物からは悲鳴が上がる。




―――――『オ……ギュオッ!』


 悶ていた魔物は、瞬時に壁に飛び上がって張り付いた。 そして口からランに向かって何かを吐き出す。 本体もそれに続いて飛びかかってきた。




「Wait.4 盾!」


 地面から壁が盛り上がり、ランに向かっていた攻撃を受け止める。 壁が少し溶けている、どうやらあれは酸のようだ。 続けて本体も阻止しようとするが、私よりも早くエイリオとキースが動いていた。




「はっ!」


「……」


 エイリオは飛びかかってきた魔物を剣で受け止める。 その直ぐ側で、キースは集中して狙いを定めていた。 魔力を剣に込め、薄く光を纏っている。




―――――ヒュンッ……


『ギュオオオオオッ』


 魔物から大きな悲鳴が上がる。魔力を纏ったキースの一閃は、魔物の足を切り飛ばしていた。 本人は不満そうだ、渋い顔をしている。 仕留めるつもりだったのだろう、魔物が瞬時に身を捩って狙いがずれたようだ。




―――――バチッ ……ダンッ!


 魔物は激しく暴れだし、たまらずエイリオは後ろに飛び下がる。 キースも警戒して距離をとった。 魔物は再び襲いかかってくることはなく、そのまま水路の奥へと逃げていってしまった。




「態勢を立て直そう」


 エイリオは皆に指示をした。 私も賛成だ。 そのまま追撃するより一旦、間を置こう。 またさっきみたいに奇襲されると分が悪い。 それぞれが警戒しつつ息をつき、次の行動について話し合うことにした。



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