ノーランの街 12
先程の屋台を離れて暫く歩くと、また売り物の種類が変わってきた。 この辺りは魔道具や、装備品が多数並んでいる。
「武装した人が多いわね」
あたりを見ると、武器を装備している人達が多い。 傭兵や冒険者達が装備を新調するために、店を回っているのだろう。
「この辺りは装備品を取り扱っている店が多いようだからな。 ……レティ、そろそろ防具を変えたほうが良いかも知れない。 大分傷んできただろう」
キースに言われて、付けている防具を見直す。 ここの所は戦闘続きだったせいか、所々に傷が目立つ。 一番ひどく損傷を受けたのは、ゼイルとの戦闘時だ。 確かに、そろそろ新しいものに変えたほうが良いかもしれない。
「……そうね。 それなら、キースのも一緒に変えましょう? この辺りに良いお店はあるかしら」
キースの防具もよく見れば、ボロボロだ。 彼は私と違って近接戦が主なので、防具の痛みが私より早い。 それに、剣も買い換えるか研がないと駄目だろう。
「そうだな……。 適当に店によってみよう」
「そうしましょう」
付近の店を順番に見て回ることにした。 殆どは男性用の防具しか扱っていなく、数軒回ってようやく女性用の防具も扱っている店を発見した。 店先の飾り棚に、女性用の防具が飾られていたので大丈夫だろう。
「あの、防具を新調したいのだけれど……」
店の中に入ると、所狭しと防具が置かれていた。 店員の姿が見えないので、店の奥に向かって話しかけてみた。 すると、声に反応して足音が此方へと向かってくる。
「はいはい、いらっしゃい。 女性用の防具は、そっちの方だ。 好きなのを選んでみると良い。 サイズは後で合わせられるから、言ってくれ」
そういってすぐに、また奥に引っ込んでしまった。 なにやら忙しそうだ、とりあえず何があるのか選んでみるとしよう。 彼が言っていた方へ向かうと、確かに女性用の防具が多数並べられていた。
「これは……ドレス? こっちは、鎧ね……動きにくそう」
「そのドレスは飾り用だな。 社交の場で、見た目と最低限の安全を両立させるためのものだ。 鎧は騎士用のものだろう。 ……着てみるか?」
キースがそう言って鎧を指さした。 確かに安全だけど、あんなものを来て街を歩いていたら良い笑いの種だ。 そもそも仰々しくて動きづらい。 何も言わずに半目でキースを睨むと、彼は両手を上げて他の防具を探し始めた。
「やあやあ、すまないね。 防具を探しているんだろう? なら、これなんかはどうかな?」
通路に顔を出したのは、先程奥に引っ込んだ店主さんだ。 どうやら用事は終わったらしく、私達に防具を勧めてきた。 彼が持っているのは、皮の防具だ。 女性用らしく少しお洒落に飾ってあるが、そこまで主張の強いものではない。 確かにいいかも知れないが……。 私は一つ不満があった。
「要所も強化されている。 軽いし、動きやすそうだ。 良いんじゃないか?」
キースは防具を手に取り、強度を確かめている。 彼の言うことはもっともだし、私も見てみたが特に問題はなさそうだった。 このままでは決まりそうなので、その不満を言うことにした。
「私、スカートは嫌なんだけど……」
そう、その防具はスカートなのだ。 今履いているのもパンツタイプで、足は出ていない。 昔はドレスを来たこともあったが、この防具はその半分以下しか丈がない。
「そうかい? とても似合うと思うんだけど……」
私の一言に、店主さんは残念そうな顔をする。 キースは笑いをこらえているようだ。 あとで彼にもスカートを履かせてやろうか。 どれだけ嫌かがわかるはずだ。
その後、小一時間店を回ったが目ぼしいものはなく。 結局スカートタイプの防具を買うことになった。 私の最大限の譲歩で、下にレギンスタイプの防具を着ることで妥協した。
「まいどあり!」
店主の声を聞きながら、店を後にする。 キースも防具を新調し、同じ革製の物を買っていた。 腰部分には、ベルトや小物入れが複数着いている。 機能性重視だが、十分似合っている。
「落ち着かないわ」
下にレギンスを履いているのに、スカートが気になって思わず抑えてしまう。 私がそんな仕草をしているせいで、通りの人の視線を集めてしまっていた。 そのせいで余計に恥ずかしさが増す。 負の連鎖だ。
「そうか? そういう衣装も似合ってるぞ」
「……ほら、早く行くわよ。 見られてるじゃない」
キースから顔をそらして、通りへと進み出た。 赤くなった顔を冷まして、改めて彼の方を向き直す。 次はキースの武器だ。 彼にどうするかを尋ねる。
「剣も新しいのを見ていく?」
「そうだな……。 研磨するだけでも良いかも知れない。 それよりも、小物をいくつか買いたい所だ」
そう言ってキースは腰の小物入れを指差す。 せっかく新しい防具を買ったのだから、最大限活用しなくては。 武器や小物を売っているお店を探そう。
「あの店に入ってみるか」
「ええ、わかったわ」
武器のお店はすぐに見つかった。 と言うより、殆どの店がそれだ。 何処が良いなどは分からないので、最初に目に入ったお店に入ることにした。
「あら、いらっしゃい」
出迎えてくれたのは、長い髪の若い女性だ。 どう見ても武器を売っているような店の店主には見えない。 どちらかと言えば……。 そう、魔道具店だ。 私は思わず、店先の看板を確認するために振り返ってしまった。
「ふふ、大丈夫よ。 ちゃんと武器も売っているわ。 魔法道具や小物なんかも置いてあるけどね」
「投擲用のナイフは売ってるか?」
よかった、間違っていなかったようだ。 キースは彼女に連れられて、棚の方へと向かっていった。 目的のものはあったようだ、新調に確かめながら物色している。 私は近くにあった棚に目をやった。
「これ……」
そこにあったのは小瓶で、魔法を刻印するための粉が入っている。 対象に専用の道具を使って印を刻み、この粉を詰めて魔法を流す。 簡単に言ったが、少しでも魔力が乱れれば正常に魔法は込められない。 印がずれるのも駄目だ、込めた魔力が他へと流れてしまう。 大きな効果を付与しようとすればするほど、印は大きくなり込める魔力も増す。 つまり難易度があがる。
「魔力粉か」
「っ! ……キース、驚かさないで」
吃驚した、思わず瓶を落としそうになった。 私は睨むようにキースに目を向けた。 もう必要なものは選び終わったのだろうか。
「もう良いの?」
「ああ、小物をいくつかと……剣を研磨してもらっている」
剣を? あの人が? 驚いて奥を覗くと、別の男性がキースの剣を研磨していた。 もうひとり居たのか。 確かに一人で管理するには、品揃えが豊富すぎると思った。 という事は、まだ時間がかかりそうだ。 私達は、暫くお店の中を物色することにした。 こういう店を回るのも楽しいものだ。




