表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/93

ノーランの街 11


「はい、これが今回の報酬ね」


「ありがとう」


 冒険者ギルドに戻った私達は、レイラさんに報告して報酬を受け取っていた。 ギールさんが言っていた水路の調査依頼について聞いてみようかしら。




「ねえ、レイラさん。 今朝、水路調査の依頼が届いてなかった?」


「水路? ……あったわね。 何組かの冒険者グループが請け負っていたわ」


 それだ。 ギールさんが言っていた依頼だろう。 もし次があれば、私も受けられるか彼女に聞いてみよう。 振り返ってキースに目線をやると、彼は無言で頷いてくれた。




「その依頼だけど、もし進展があったら私達も参加したいの。 出来るかしら……?」


「そうね。 あなた達の実力は、ここ二回の依頼で確認しているし……。 いいわ、もし次の依頼が来たら、連絡してあげる。 ただし、余りにも危険な内容だったら受けられないから、そのつもりでね」


 よし、これで次の依頼には参加できそうだ。 もっとも、今回で解決してしまったら出番はない。 街からすれば、それが一番良いのだけれど……。




「貴女達、何処に泊まっているの? そこに使いを出すわ」


「ああ、ここの宿屋だ」


 レイラさんの問いにキースが地図を取り出して答える。 後は、今の調査依頼が終わるのを待つだけだが……。 すぐには戻ってこないだろう、今日は大人しくしている事にする。




「わかったわ。 それじゃあ、またね」


「ええ、無理を言ってごめんなさい」


 レイラさんに見送られ、私達はギルドを後にした。 さてと、この後はどうしようか。 そうだ、この街には魔術の本なんて売ってないかしら。




「キース、この街に魔術の本って売ってるかしら」


「魔術の本? あるにはあるだろうが、どうする気だ?」


 それなら探してみよう。 私としては、使える魔法の種類は増やしておきたい。 最近、戦闘することが多くなってきたからだ。 冒険者ギルドにも登録した事だし、知識は多いに越したことはない。




「最近、戦うことが多くなってきたでしょう? だから、何か新しい魔法の使い方でも載っていればって思ったのよ」


「……本を見るだけで魔法を使えるようになるのはお前くらいだな。 わかった、探してみよう」


 通常、魔法というのは習得に相当な月日がかかる。 誰かに師を仰ぎ、基礎から順番に学んでいく。 そして仕組みを理解し、頭に叩き込んでようやく使えるようになるものだ。 ただ、私にはそれが理解できない。 本を見て使う様子をイメージできれば、大体使うことが出来る。 もしかすると、人の使う魔法を見れば真似できてしまうかもしれない。




「それじゃあ、商業区に行きましょう! ……その前にもうお昼ね。 何処かでご飯を食べるわよ」


「ふっ、わかった」


 お腹が空くと思ったら、もうお昼近い時間だ。 商業区に向かうついでに、何処かでお昼を済ませてしまおう。 ニヤけているキースを目で牽制しつつ、私達は商業区へと向かった。




―――――『良いのが入ってるよ!』 『ほら、そこのお兄さん!』


 商業区へ着いた私達の耳に、いたる所から客引きの声が聞こえてくる。 いつ来てもこの辺りは混んでいる。 とりあえず、腹ごしらえだ。 良いお店がないものかと探していると、屋台が私の目に入ってきた。




「キース、あれ。 美味しそう」


「どれだ? ……"おにぎり"? 聞いたことはないな」


 香ばしい良い匂いにつられて、屋台の方に近づいた。 そこには、お米を三角形固めたものがいくつも並べてある。 おにぎりと言うらしい。




「いらっしゃい」


「このおにぎりって、お米なの?」


 近づいてきた私に、屋台の店主が気づいて迎えてくれた。 早速、おにぎりなるものについて聞いてみることにする。




「そうだよ、お嬢ちゃん達は見るのは初めてかい? ほら、食べてみな」


 そう言って、おにぎりをひとかけら渡してくれた。 確かにお米だが、表面が焼いてあって固い。 それに何か塗ってあるようだ。




「美味しい!」


「確かに……。 これなら持ち運びにも便利だな」


 食べてみると、表面は硬いが中はふっくらとしている。 表面に塗ってあるのは醤油だ、これがまた米によくあって美味しい。




「気に入ったかい? 中身を選んでくれれば、それを入れて握るよ」


 彼が指している中身というのは、店先に並んでいる食材のことだ。 魚の切り身や、細かく切った肉。 それによく煮詰めて味付けされたであろう野菜や煮物なんかもあった。




「これにしましょう! キースはどれにする?」


「俺はレティと同じものでいい。 選んでくれ」


 どれも美味しそうだけど……。 まずは無難に味の想像がつくものと、一つは冒険してみよう。




「それなら、この魚の切り身と肉。 後は、これを二つずつお願い」


「わかった、ちょっと待っててくれ」


 私が選んだのは、肉と魚。 そして黒っぽい煮物のような食材だ。 最後に関しては、全く味が想像できない。 それでも、一つ位は良いだろう。




「ほっ」


 注文を受けた店主は、炊いてあるお米を掌に乗せる。 真ん中に窪みを作り、そこに選んだ具を入れていた。 私が驚いたのは、ここからだ。 彼が掌を軽く合わせるように動かしていくと、みるみる内にお米が三角形になっていく。




「どうやっているのかしら……?」


「あの動きで形が整うのか」


 キースも軽く驚いたように、店主の掌を眺めていた。 そうこうしている内に、あっという間に全て形作られてしまった。 出来たおにぎりを、今度は網の上にのせて焼いていく。 表面に醤油を塗っていく。 火が通ってくると、それが良い匂いを漂らせてくる。




「ほら、出来たぞ」


 焼き上がったおにぎりを皿に乗せ、私達へと渡してくれた。 香りも見た目も良いし、持ち運びにも便利だ。 早速頂こう。




「ん! パリッとしてて美味しい!」


「なるほど。 お米に合う具材を別に用意せずに、直接中に入れてしまうのか。 これなら、旅路にも丁度良いな」


 確かに。 持ち運びもしやすいし、食べやすい。 出先でさっと食べるのにも持ってこいだ。 あっという間に二つ食べてしまった。 残るはあの黒っぽい食材が入ったおにぎりだ。 意を決して、かぶり付く。




「……。 塩辛くて美味しい……!」


 これはなんだろう。色んな食感が混ざっている。 これだけ食べたら塩辛くいだろうが、おにぎりと一緒だと丁度良い。 私はこれが一番好きかもしれない。




「気に入ったかい? この黒いのは、海でとれた海藻類と魚のほぐし身を醤油をメインにした特製調味料で、煮付けたもんさ。 旨いだろう?」


 予想外の美味しさに、何度も頷いてしまった。 隣でキースが笑っている。 ……作り方とか、教えてもらえないかしら。




「ねえ、その調味料だけれど……」


「駄目駄目! これは、うちの秘伝の調味料だ。 教えられないよ!」


 うっ。 仕方がない……。 あれは料理屋にとって立派な武器だ。 おいそれと教えてくれるわけが無いか……。




「……これの作り方は教えられないが、材料なら海沿いのリディルって街に行けば見つかるかもしれないぞ」


「……! ありがとう!」


 落ち込む私を気にやんだのか、苦笑しながら教えてくれた。 リディルか、覚えて置こう。 次に向かう街の候補だ。




 おにぎりを食べ終わった私達は、代金を支払い店を離れた。 お腹も膨れた所で、本来の目的だった魔術書を探しに行こう。 決して、おにぎりが美味しくて忘れかけていた訳じゃない。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ