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ノーランの街 9


翌朝。 マイアさん達の家に泊まった私達は、身支度を整えて家の前に集まっていた。 昨夜はジェムズさんに米料理まで御馳走して貰った。 相変わらず、彼の作る料理は美味しい。 その時に、お米の美味しい炊き方も伝授してくれたので、次の旅で早速やってみようと思う。




「忘れ物はないかい?」


「店の方にもいつでもきてくれ、歓迎するよ」


 マイアさん達が出迎えてくれている。 もう一度位、ジェムズさんのお店によっても良いかもしれない。 今度は別の具を頼もう。




「ええ、ありがとう」


「世話になった、感謝する」


 そう言って、彼らの家を後にした。 振り向くと暫く手を降ってくれていたので、私も同じように振り返した。 まずは、ギルドに行って達成の報告だ。


 畑に残っていた魔物の残骸は、キースが朝早くに解体してくれた。 私も最初のうちは眺めていたが、すぐに我慢できなくなって退席した。 ……あれは、戦闘で魔物を倒すのとは別の慣れが必要だ。




街へと続く橋まで戻ってくると、何やら騒がしい。 よく見ると、昨日釣りをしていた人が居た場所に兵士が集まっていた。 彼らは武装していて、何やら物々しい雰囲気が漂っている。 まさか、昨日逃げた魔物がここに?




「ねえ、キースあれって……」


「俺もそう考えたが、違うようだ。 あれを見てみろ」


 キースの指差す方を見ると、魚を大きくしたような魔物が大量に打ち捨てられていた。 どうやら、魔物による襲撃があったらしい。 兵士たちの中には怪我をしている者も居た。




「魔物が街を襲ったのかしら?」


「そのようだ。 ……街にはかかりつけの治療魔術師が居るはずだ、俺達はまず報告をすませてしまおう」


 私の顔から察したのだろう。 そう言う事ならば、私達は依頼を報告しに行くことにしよう。 あそこに居た人も無事だと良いけれど……。




 橋の警備兵に木の板を返し、街の中に入る。 その後は寄り道もせず、真っ直ぐ冒険者ギルドに向かって歩いた。 噴水広場に着いた辺りで、冒険者の一団が多数集まっているのを発見した。 その中にはエイリオのグループも居る。




「……少し待ちましょう」


「そうだな」


 また絡まれるのも厄介だ、このままやり過ごしてしまおう。 暫く見ていると、彼らは他の冒険者グループと合流して門の方へ行ってしまった。 複数人で依頼を受注したのだろうか。




「行ったわね」


「俺達も行こう」


 通り過ぎたのを確認して、私達は冒険者ギルドに入る。 懐から依頼書を出してテーブルに持っていくと、直ぐさま受付さんが迎えてくれた。




「依頼の達成報告をしたいの」


「はい、お疲れ様でした。 確認させて頂きます」


 私が渡した依頼書のサインと、テーブルの下から出した別の紙とを比べている。 その際に何か使っているような仕草をしたが、あまり見ているのも失礼なのですぐに目をそらした。 恐らくあれが、偽造を調べる魔道具だろう。




「確認しました。 確かに、ご依頼主様のサインですね。 それでは、此方が報酬となります。 お受け取り下さい」


 お金の入った小袋を受け取り、キースに手渡す。 金銭の管理は彼に頼んでいる。 続いて受付さんは、持ってきている魔物の素材に視線を向けた。




「そちらは、魔物の素材でしょうか? もしよければ、あちらのテーブルで換金することが出来ます。 ご利用の際は、素材をそのまま、あちらの受付にお渡し下さい」


「ええ、わかったわ。 ありがとう」


 自分で何かに使うつもりもないし換金してしまおう。 席を立った私達は、そのまま換金所の受付へと向かう。 テーブルに着くと、中から人が出てきた。




「素材の換金でしょうか?」


「ええ、キース」


 キースは机の上に、倒した魔物の素材をおいた。 換金所の机は広く、鑑定用らしき道具が沢山置いてある。 査定が始まると、"この部分はどうされますか"等と聞かれるが、あいにく私達はその手の知識は全く無い。 なので、全て売り払ってしまうことにした。




「それでは、此方が換金額になります」


「ありがとう」


 渡された小袋を再びキースに渡す。 次はどうしようか……。 昨日の疲れは特に残っていないので、このまま別の依頼を受けても良いかも知れない。




「次の依頼を受けようかと思うんだけど……」


「レティが平気ならば大丈夫だ。 俺も特に疲れは残っていない」


 よし、それなら続けて受けてしまおう。 私達は初日と同じように掲示板で依頼を探す。 何かできそうな依頼は……と見ていると、一つの依頼書が目に止まった。




「"警備兵の治療"?」


「治療魔法が使えるものを求む、詳細は門の警備詰め所にて……か。 場所からして、先程見かけた兵士たちだろう」


 どういう事だろう。 キースの話では、街には専属の治療魔術師が配備されているはず。 その人も怪我をして動けなくなってしまったとかかしら?




「何かあったのかもしれないな。 レティなら打って付けの依頼だ、俺は役立たずだが」


「そんな事ないわ。 貴方は私の大切な護衛なの」


 苦笑いをするキースを窘めて、依頼書を掲示板から剥がす。 それを受付へと持っていくと、見覚えのある女性が奥から現れた。




「依頼の受注ですか? ……あ、昨日の新人さん?」


 昨日、私達の冒険者登録を請け負ってくれた人だ。 向こうもそれに気づいたようで、笑顔で出迎えてくれた。




「ええ、昨日ぶりね。 これを受けたいのだけれど、良いかしら?」


「はい、お預かりします」


 彼女はそう言って、依頼書を受け取る。 そのまま机の下から色々と書類を出し始めたので、私達は椅子に座って待つことにした。




「確認しました。 此方の依頼は、治癒魔法が使えることになっています。 そちらの点は、大丈夫でしょうか?」


「ええ、大丈夫よ。 それと、敬語じゃなくて構わないわ。 その方が話しやすいもの」


 彼女は事務的に話しかけてくる。 治療魔法に関しては問題ない。 それよりも、敬語じゃなく普通に話して欲しい。 そう考えた私は、彼女に提案した。




「そう? なら、普通に話すわ。 私はレイラ、宜しくね? ええと……レティさんとキースさん?」


「ええ、此方こそ」


 打ち解けた所で、依頼の話を進める事にした。 レイラさんは、何枚かの紙を机の上に並べて説明を始める。 ざっと見たところ、やはり橋で見た魔物の残骸が原因のようだ。




「この依頼は、街の警備から来ているわ。 昨日の夜、外壁の水堀付近で魔物の姿が確認されたの。 遅い時間だったから、釣りをしている人達は居なかったらしいけど、応戦した警備の兵士が何人か負傷したそうよ」


「この街には専属の治療魔術師が居るって聞いたのだけど……」


 昨日の夜と言うと、私達が畑の魔物と戦っていた辺りか。 同じ時間に複数箇所で襲撃があったらしい。 住民に被害が出なかったのは良いことだが、兵士は負傷してしまったようだ。 それでも治療魔術師が居るのなら、こんな依頼を出す必要はないと思うのだけど……。




「ええ。 詳しいことはわからないけど、その魔術師さんは出払っているらしいの。 それで、急遽依頼が回ってきたみたい」


「そう……。 なら、早めに行ってあげたほうが良いわね」


 出払っている……。 国に召還されたのだろうか? ともかく治癒魔術師が居ないなら、早めに行って治してあげたほうが良いだろう。 怪我をした人は今も苦しんでいるはず。




「私からもお願いするわ。 いつも街を守ってくれている人達だもの。 あとは……ごめんなさい、規則だからギルドカードを掲示してもらえる?」


 申し訳なさそうに言うレイラにギルドカードを掲示する。 それを確認した彼女は、私達に依頼書と一緒に返してくる。




「治療するだけだから、危険はないと思うけど気をつけてね。 また襲撃があるかもしれないから……」


「大丈夫よ、もし来たら追い払ってあげる。 彼も居るしね」


 そう返す私を笑いながら、レイラは見送ってくれた。 場所はさっき通った門だ、早めに向かうとしよう。 私はキースと共に、橋の方へと向かって歩き出した。



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