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ノーランの街 2


―――――チチチチチ


 目をゆっくりと開くが、まだ少し眠い。 そう感じてしまうのは、昨日の夜中の事があったからだろう。 思い出してため息が出てしまう。


 結論から言えば、夜中に一度叩き起こされた。 魔道具が誤作動を起こしたのだ。 誤作動と言うか、小動物に反応してしまっただけだが。 しかし、起こす能力は評価できる。 なにしろ凄まじい爆音だった、辺りの鳥が逃げ出すほどの。 ……調整が必要だ、音も感度も。




「う……ん~!」


 体を起こし、テントから抜け出す。 隣をみると、キースはもう起きているようだ。それにしても、昨日の夜中の彼は面白かった。 爆音が鳴り響くと同時に、私のテントに来て安全を確認しにきた。 その後、魔道具に反応した小動物を見た時のなんとも言えない顔は、今でも鮮明に覚えている。




「Act.1 火」


 焚き火に火をつけ手をかざす。 この辺りは少し肌寒い、馬車から上着を持ってこようかと考えていると、荷台からキースが姿を表した。 手には上着が二着握られている。




「眠れたか?」


「ありがとう、なんとかね」


 キースから上着を受け取って着込んだ。 彼の顔には珍しく、疲労の色が見えた。 昨日のあれで、余計な気を使ったのだろう。 ……無理もないが。




「少ししたら、出発しよう」


「ええ、そうしましょう」


 朝食を作るのも億劫になってしまい、馬車にあった簡単なもので済ませた。 その後、道具を片付け馬車に乗り込む。 私が荷台に座ったのを確認したキースは、馬車を動かし始めた。




―――――ガラ……ガラガラ……


 馬車は山道を抜け、草原地帯に入った。 気温も幾分かあがり、心地の良い風も吹いている。 上着はもういらないだろうと、畳んでしまった。




「あれがノーランの街?」


「そのようだ」


 草原の先に街があった。 平地で見晴らしが良いので、遠くからでもはっきりと見える。 ノーランの街の城壁の外側には、穀物地帯があるようだ。 大きな畑と水車、それに納屋が確認できる。




「大きな畑ね……」


「ここまでの畑は始めてみたな」


 街へと続く道の左右に広がる畑を、窓から眺める。 ここまで近づくとわかるが、街の外壁の周りに水堀がある。 そこから畑の方に向かって、細い水路が引かれていた。 ここまでの規模の畑は始めてみた。 ここで採れた穀物が、ガーキウスの国の各地へと送られているのだろうか。




―――――ガラガラガラ……ガラ……


 水堀から門へかかっている橋を渡ると、馬車や旅人の列があった。 私達もそこに並ぶ、街へ入る手続きの列だろう。 見たところ、商人風の馬車が多く見られた。




「商人が多いのね」


「国境沿いだからな、交易の起点になっているのかもしれない。 俺達には都合がいい、商人として街に入るぞ」


 馬車の荷台にダミーの商品もあるし、問題ないだろう。 荷台に座り直して大人しく待っていると、すぐに私達の順番が回ってきた。




「この街には何の御用で?」


「商売だ、デイルの領主から紹介状もある」


 キースはハイアンさんから受け取った証書を門の兵士に渡す。 彼は受け取って中身を見るや、緩かった態度を少し正してキースに返した。




「これは、失礼しました。 どうぞお通り下さい」


「ああ」


 特に確認もなく、街へと通された。 後ろを見ていると次の商人は荷台を確認され、通行料を払っている。 街の領主からの紹介状だ、それなりに優遇されたのだろう。




「まずは宿屋?」


「そうだな。 馬車をとめたら、まずは冒険者ギルドに登録だけ済ませてしまおう」


 そう言って宿屋を探す。 そうか、ギルドで依頼を受けるには登録を済ませないといけないのだった。 その後、街を回ってもいいかしら。




「登録し終わったら、街を見て回るか」


「そうしましょう!」


 視線があちらこちらに向かっている私を見て、キースは笑いながら提案してきた。 すぐさま同意したが、少し声が大きくなってしまったかもしれない。


 街の中は人が多く、馬車の通行量も多い。 道は白っぽい石で舗装されていて、明るい雰囲気が漂っていた。 見える限りは住宅が少なく、殆どは商店だ。 奥の方に広場も見える、中心にあるのは……噴水だろうか。




「随分賑わっているな」


「あのお店は何を売っているのかしら……」


 通りには何を売っているのか分からないような店もある。 後で

見物するのが楽しみだ。




 宿屋を探して三軒目。 ようやく、馬車を泊めることが出来た。 どこも混んでいて、中々空いている所が見付からなかった。 私は、話をつけて此方に合図をしているキースを見て、馬車道駅から降りる準備をし始めた。




「んー……。 ようやくね」


「荷物を置いたらギルドに行くぞ。 思っていたより時間がかかってしまったからな」


 荷台から降りた私に、キースが近づいて話しかけてきた。 そろそろ昼時だ。 ギルドに登録したら、お店でお昼御飯を食べよう。




 借りた部屋に荷物を置き、宿屋を後にした私達は冒険者ギルドを目指して歩き始めた。 キースが宿屋の主人に場所を聞いていたが、さっきの噴水広場の方らしい。




「登録って何をするの?」


 歩きながらキースに聞く。 商人ギルド、冒険者ギルド、魔術師ギルド。 ギルドの数は多々あるが、どれにも登録したことなど無い。 試験なんてあったりするのだろうか。




「俺もギルドに登録した事は無いからな。 行ってみないと分からない。 だが、聞いた話だと、登録だけなら大したことはしないらしい。 昇級なら話は別だが」

 

「昇級?」


 昇級とはなんだろう。 字のままなら、冒険者としての格が上がるという事?




「冒険者にも、ランクがある。 ブロンズから始まり、シルバー、ゴールドと上がっていくそうだ。 ランクを上げれば、より高額な報酬の依頼を受けられるようだが、達成難易度も上がる」


 なるほど。 つまり、実力の足りない冒険者が、達成難易度の高い依頼を受けられないようにしているわけか。 褒賞金に目がくらみ、実力以上の依頼を受けてしまう冒険者が居たのだろうか。




「昇級は、自分のランクの依頼をいくつか達成していると、ギルドから打診される。 規定の試験を受け、合格すれば晴れて上のランクになる」


「昇級試験は、ギルドから話が来ないと受けられないのね」


 私はふと、疑問が思い浮かんだ。 いくら依頼をこなしても、ギルドから話が来なければいつまでも昇級出来ないのだろうか?





「昇級には、実力はもちろんの事、人格や行動も考慮される。 実力だけの冒険者を弾く為のようだが……。 本性を隠されたら、分からない。 あまり機能しているとは、言いづらいようだな」


「人を管理するのも大変なのね」


 冒険者ギルドが出来た当初は、こんな制度はなかったのだろう。 魔物は人の敵として存在する。 だか、人もまた、人の敵として厄介なものだ。


 そんな会話をしているうちに、噴水広場にたどり着いた。 近くには、大きな建物があり、見覚えのある看板が入り口についている。 これが、冒険者ギルドだ。 キースが扉を開けて中に入る、私もそれに続いてギルドへと足を踏み入れた。



 


 

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