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国境の街 デイル 17


―――――ボフッ


 私は寝返りを打った。 懐かしい、感触。 これは……屋敷のベッドだ。 まだ飛び出して数日だが、ベッドの感触は恋しいかもしれない。 ……屋敷? ベッド? 夢!?




「あっ……。 ……うっ」


 思い切り上半身を持ち上げたので首を痛めた。 そんな私をキースは何も言わずに、再びベッドに寝かせる。私は、辺りを見渡す。 ……良かった、デイルの宿屋だ。 夢じゃない。 私はほっと息を吐いた




「……キース?」


「お前はあの後、気を失った。 ここは最初に泊まった宿屋だ、運んできた。 ……そのベッドはハイアンからだ」


 なるほど、部屋に似合わないベッドなはずだ。 きっと、宿屋の主人に無理を言って配置したのだろう。 キースは苦笑いをしていた。 ……そうだ、ハイアンさん!




「ハイアンさん達は無事だったの!?」


「落ち着け、順を追って話そう。 結果から言えば全員無事だった」


 ……よかった。 あれだけ私がやると言いながら、気を失っている間に何かあったら申し訳が立たない。 私が安堵したことを確認して、キースは話を続ける。




「あの男が消えた後、お前は気を失った」


 あの男。 やはり、あの時の事は夢ではない。 魔物の核を掌に吸収していたように見えた。 あれは一体何だったのだろう。 魔物の核の回収。ジェナと同じ目的だ、偶然では無いと思う。




「そして、俺はお前を抱え。 ハイアン達の方に向かったんだ」


 そうだ、外にはライツが待ち構えているとゼイルは言っていた。 キースは私を抱えたまま、戦ったということ?




「いや、違うぞ。 俺がついた時には既に終わっていた」


 怪訝な私の顔を見て、キースは笑った。 既に終わっていたとは……? なおさら、怪訝な顔になる私をキースは再び笑った。




「鉱山で労働を課せられていた作業員達は、どうやら街の警備兵だった者達だったようだ。 新しくライツが連れてきた者たちによって職を奪われ、鉱山送りにされていたらしい。 彼らが一斉に反旗を翻した。 指揮を取ったのはハイアンだ。 彼らは勝利を収め、ライツは縛り上げられた。 今はハイアンが居た牢屋に入れられている」


 なるほど、そう言う事か。 それならば良かった、彼らは自分たちの手で街を取り戻したんだ。 私は安心して、ベッドに身を預けた。




「よかった。 これで解決ね」


「ああ。 数日後には国から調査が来るだろう。 俺達はその前に国を出るとしよう」


 そうだ。 国から調査が来るというのは、私にとってよろしくない。 その前に街を出て置かなければ……。 抜け出した身であるという事を、すっかり忘れていた。




「大丈夫だ。 既に証は既に貰ってある。 ついでに物資と次の国への紹介状もな、これで入国手続きが楽になる。 言ったら直ぐに用意してくれた」


 疲れた顔をしているキースの様子から察するに、他にも色々と待遇を打診されたのだろう。 やんわりと断って、必要なものだけ頂いたというわけか。




「もう出るの?」


「はは、もう夜だぞ。 今日はゆっくり休め。 明日はパレードがあるそうだ。 その騒ぎに紛れて街を出てしまおう。 次の引き止めの使者が来る前にな」


 窓から外を見ると、確かに真っ暗だ。 結構長いこと気を失っていたらしい。 それなら、今日はしっかりと体を休ませよう。 簡単な食事を済ませ、私は再び眠りにつくことにした。




―――――ガヤガヤ……


 翌朝、外の喧騒で私は目が覚めた。 体を動かして感触を確かめてみる。 ……うん、もう大丈夫。 ゆっくりとベッドから体を起き上がらせた。




「もう大丈夫か?」


「ありがとう。 もう、平気よ。 なんともないわ」


 キースから紅茶のコップを受け取りながら、返事を返す。 そのまま窓際に寄り、外を眺めた。 最初に来たときとは違い、街には活気が溢れている。 ……あ、露天が出てる。




「……気になるか?」


「……いいえ? そんな事ないわ。 早めに街を出ましょう?」


 後ろに来ていたキースが、私の視線を追って笑いかけてくる。 気を取られてなんていない、ちょっと何が売っているか知りたかっただけだ。




「よし、それなら準備をして馬車に乗り込むぞ」


「ええ」


 馬車のとめてある小屋の方へと向かう。 ハイアンさんに挨拶をしたかったが、今はパレードで忙しいだろう。 せっかくの街のお祭り、ハイアンさんは主役だ。 水を指すのは止めて、私達は静かに街を出ることにしよう。 ……あ、一つ欲しいものがあった。




「ねえ、キース? 貰った物資の中に……」


「保存の魔法がかかった箱だろう? 貰ってきている、既に馬車に積んであるぞ」


 扉を開けて階段を下りながらキースに聞くと、そんな返事が返ってきた。 さすがキース、頼りになるわね。 言わなくても分かっていたなんて。 ……なぜ、わかったのかしら。




「よく私が、あれが欲しいってわかったわね?」


「はは。 レティが山小屋で料理を片付けた後、箱を大事そうにしまっていたからな」


 私は顔が赤くなるのを感じた。 確かに山小屋で、あわよくば貰えないかと使い終わった箱を隅に寄せていたが……。 そんなに大事そうにはしてなかったはず。 キースのニヤケ顔が憎たらしい。




「そんな風にはしていなかったわ。 ただ、ハイアンさんに後で話そうと思っていただけ」


 結局、それどころじゃなくなってしまった。 私も今まで忘れていたくらいだ。 思わず変な態度をとってしまったが、キースには感謝しないと……。 彼は少し笑みを浮かべたまま、何も言い返しては来ない。




「……キース、ありがとう」


「ああ」


 箱の事もあるが、気を失った私を運んでくれたこと。 平静を装ってはいるが、随分心配させてしまったと思う。 彼は私が目覚めた時、珍しく安堵の表情を顔いっぱいに浮かべていた。 改めて感謝を伝える、彼は特に何を言うわけでもなく一言だけ返事を返してくれた。

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