表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/93

国境の街 デイル 13


―――――ガサ……


「それらしいのはないな、そっちはどうだ?」


「ないわね」


 ゼイルの部屋を暫く漁るが、中々目的の書類は出てこない。 ここにもないのだろうか、と諦めかけているとハイアンさんが声を上げた、




「あったぞ」


「ほんと!?」


 私は思わず声が大きくなってしまった。 慌てて手を覆い、部屋の入口を伺う。 ……大丈夫なようだ、人が近づいてくる様子はない。 改めて小声でハイアンさんに話しかける。




「……あったの?」


「ああ、魔法で隠蔽したあったようだ。 ここをこうして……」


 ハイアンさんが持っている白紙を、手に魔力を込めて触る。 すると、かかっていた魔法が乱れ文字が浮かび上がってきた。 この程度で魔法が乱れてしまうのは、イメージが弱い証拠だ。




「ほんとね、お粗末だわ。 ……でもこれで目的は達成ね」


「そのようだ、後は転送機で送るだけだ」


 これで後は送るだけ。 その魔道具は何処にあるのだろうか? 確か街に一つずつと言っていたけれど、貴重なものだ、わかりやすい所にあるとは思えない。




「その魔道具は何処にあるの?」


「この一階の奥の会議室だ。 戦争時には作戦会議室として使われるのだが、そこに設置してある」


 なるほど、それならばすぐだ。 誰かに見つかる前に送ってしまおう。 ふと、振り返るとキースが部屋の壁を触っていた。 彼は暫く眺めた後、こちらに向かって歩いてくる。




「どうしたの?」


「いや……どうやら隠し扉のようだ」


 キースの言葉に、私とハイアンさんは壁に近寄る。 確かに、廃鉱の隠し扉と同じように擦れた跡がある。 小さいが風の通る音も聞こえる。




「確かに、何かあるわね。 ……どうするの?」


「……開けられるだろうか? 正直、この書類ではライツしか咎められないかもしれん。 ゼイルの情報も出来るだけ欲しい」


 ハイアンさんはそう言った。 確かに、これで難を逃れられてしまったらゼイルは逃げるだろう。 復讐を考える可能性もある。 そう言う事ならば話が早い、さっさと扉を開けてしまおう。




「じゃあ、開けるわね」


「Act.3 静音の衣」


「Act.4 動作」


 壁の隠し扉が淡く輝き、手前に少し動いた。 それを慎重に開き、中を確認する。 ……どうやら地下のようだ。 扉の先には長く暗い、下り階段があった。




「地下か」


「こんな所に……。 ゼイルめ、何をしている?」


 地下を覗いたキースは剣を構える。 ハイアンさんの様子から察するに、地下室の存在は知らなかったようだ。 領主も知らない部屋となると……。 何かあるのは間違いなさそうだ。




「Act1.灯」


 灯の魔法を発動させ、足元を照らした。 キースを先頭に私、ハイアンさんと続いて階段を下る。 ハイアンさんは後ろを警戒しつつ、私とキースで前を確認する。




―――――コツ……コツ……


 暫く進むが、中々先が見えてこない。 かなり深い所まで繋がっているようだ。 耳を澄ませ、警戒しながら薄暗い階段を進むのは精神がすり減る。




「……!」


 キースが手を上げて、制止する。 何か見つけたようだ。 私も前を確認すると、見辛いが階段の先に扉のようなものがあった。 私達は、お互い顔を合わせて確認しあい扉に近づく。




―――――キ……キィィ


 キースが扉を静かにあける、どうやら鍵はかかっていないらしい。 中の部屋は広く、小さな檻が並んでいる。 ずらりと並べられた机の上には、赤い宝石のようなものが容器に入って置いてある。




「これは、まさか……魔物の核か?」


 キースが机に近づき、容器を手に取って言った。 その言葉に驚いた私は、慌てて彼に駆け寄って容器を確かめる。 確かにそうかもしれない、大分色は薄いけれど。




「そんな……。 なんで魔物の核なんて……」


「……どうやら、何か実験をしていたようだ」


 私とキースが容器を眺めていると、檻の方にいるハイアンさんから声がかかった。 私達は振り向き、彼の方へと向かう。 檻の中のを確かめた私は言葉を失った。




「……なるほどな。 魔物でも作ろうとしていたのか?」


 同じように檻を確認したキースは、そう漏らす。 折の中には動物の死骸が閉じ込められていた。 ……体の中心に赤い核を埋め込まれて。




「実験開始、対象は猪。 核を埋め込んだが、拒絶反応はなし。 だが、変化する様子もない。 失敗だ、二日後には生命活動が停止してしまった」


 ハイアンさんが、近くにあった机から取り出した書類を読み上げる。 やはり、実験を行っていたようだ。 人工的に魔物を作り出すなんて、それこそ魔王でなければ無理なはずだ。 この死骸の山が、それを物語っている。 それでも続ける理由があったのだろうか?




「この書類があれば、ゼイルも投獄できる。 ……いや、極刑かもしれないな」


 ハイアンさんは書類を見た後、牢を眺める。 こんな実験、許されるはずがない。 バレたら即、処刑されるような行いだ。


 この大量の核は何処から持ってきたのか、実験の果に何を得たかったのか。 未だ疑問が残るが、これで報告する内容は十分だ。 一度戻って、魔道具を探そう。




「……一旦戻りましょう。 ここを調べるのは解決してからでもいいわ」


「そうだな。 会議室に……」


―――――『う……うう……』


 帰る算段をつけていた私達は、奥から聞こえるうめき声に固まった。 私達は戦闘態勢を取り、声の方を灯の魔法で照らす。 すると、牢屋の中に人影が見えた。




「あ……婆ちゃんに……手を出すな……!」


 牢屋に近づいた私達をゼイルだと思ったのか、憎しみの困った声をぶつけて来る。 彼は血だらけだ、早く助けてあげなければ。 ……うん? 婆ちゃん? まさか、この人は。




「もしかして、貴方ラズさん?」


「……ゼイル……じゃない? 誰だ、どうして俺の事を……」


 ゆっくりと顔を上げて彼は答えた。 やはりそうだ、彼は裏路地のお婆さんの息子のラズさんだ。 早く助けてあげよう、まずは牢屋を開けなければ。 すぐに私は魔法を発動させた。




「Act.4 解錠」


 牢屋の鍵が音を建てて地面に落ち、扉が開く。 ラズさんは驚いた表情で、私を見ている。 次は治療だ、続けて私は魔法を唱えた。




「Act.2 治癒」


 ラズさんの体が光り輝き、傷が治っていく。 彼は信じられないものを見るような顔で、自分の体を確かめていた。 そうして立ち上がれるようになると、私の前に来て跪いた。




「……ありがとうございます、女神様! 貴方は一体……」


 反応はお婆さんと一緒だ、私は少し笑ってしまった。 何度も頭を下げる彼を、どうしようか。 困った私は後ろを振り返るが、ハイアンさんとキースは苦笑いで見ているだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ