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国境の街 デイル 12


―――――サァァァァ


 山の谷間だからか、強めの風が吹き私の髪を揺らす。 こんな状況じゃなければ、気持ちのいい朝だ。 私は気持ちを切り替えて杖を構える。 廃鉱に向かう前に、必要な魔法をかけなければ。




「Act.3 静音の衣」


「Act.3 幻影の衣」


「Act.3 移動補助」


 一度に三人分の魔法を唱えた。 これで侵入する準備は万全だ、あとは向かうだけ。 キースは微動だにしないが、ハイアンさんは初めての経験なのだろう。 しきりに体を見回し、驚いている。




「それで、音も小さくなるし姿も見えない筈よ。 あと、移動を風が補助してくれるから飛びすぎないように気をつけてね」


「あ、ああ」


 ハイアンさんは、その場で小さくジャンプしたり動き回ったりしている。 感触を確かめているようだ。 ふと、キースを見ると何か言いたそうな目でこちらを見ている。 私は何も返さず、目を逸らすことにした。




「そろそろ行くぞ」


 キースの合図に私とハイアンさんも頷く。 まずは昨日の廃鉱近くで止まり、付近を確認。 問題なければ、内部に入り屋敷に潜入だ。




―――――ザッ タッ タンッ


 魔法の補助もあり、山道を難なく進んでいく。 前方に目的の鉱山が見えてきた、この辺りで一旦止まろう。




「……問題なさそうだ」


「そうね」


 キースは周りを確認するが、慌しい様子もない。 まだ昨日の幻影がバレていないのだろうか。 私達はゆっくりと慎重に、廃鉱に侵入する。




「Act.3 静音の衣」


「Act.4 動作」


 前回と同じように隠し扉に静音の魔法をかけてから扉を開いた。 そっと中を覗くが、近くに誰かがいる気配はない。 私達は頷きあい、奥へと進む。




「警備兵が居た部屋には誰もいないみたいね」


 昨日、私が眠らせた警備兵達が居た場所には誰もいない。 ただ、酒瓶だけが机の下に転がっている。 もう少し中を見ようと身を乗り出すと、キースに肩を捕まれ引っ込められた。




「どうしたの?」


「しっ。 兵士だ」


 キースの指している方を見る。 すると、屋敷に続いているであろう通路から兵士が一人、こちらに向かってきていた。 手には何か持っているようだ。 私達はそのまま潜み、耳を済ませる。




『おら! 飯だ! さっさと食わねえぇか!』


 どうやら、牢屋にいるハイアンさんに朝食を持ってきたようだ。 あの様子ならまだ幻影はバレていないだろう。 兵士は返事をしないハイアンさんの幻影に、苛立つように声を荒げる。




『おい! 聞いてんのか? ……ちっ。 酒飲んで寝たくらいでキレやがって、ライツの野郎』


 苛立っているのは別の理由もあるようだ。 話を聞くに、昨日私が眠らせたせいでライツに叱られたのだろう。 しかし、あのまま放っておいても酒で潰れて眠っていそうだった。 結果は、変わらない気がする。




『……。 てめえ、いつまでもそんな態度でいられるとおもうなよ』


 ついに堪忍袋の緒が切れたのか、腰についている鍵をガシャガシャと鳴らし始めた。 牢を開けるつもりだろう。 ここで幻影がバレて騒がれるのは不味い。 私はキース達に目配せをし、杖を構える。




「Act.2 睡眠」


 霧が兵士に纏わりつき、彼は再び眠りに落ちる。 またライツに怒られ、次は牢屋に入れられるかもしれない。 けれど国から調査が来たら、すぐに解放されるはずだ。 ……違う牢屋に移されるだけかもしれないが。




「ハイアンさん」


「こっちだ」


 他に警備兵がいないことを確認し、通路を進む。 此処から先は彼の案内だ。 暫く進むと、屋敷の地下に辿りついた。 なるほど、ここに繋がっていたのか。




「ライツの部屋は上の階だ。 まずはそこを目指そう」


 ハイアンさんの後ろを歩き、地下から階段を上る。 屋敷の内部は随分の兵士が少ない。 あまりにも警戒しなさすぎではないだろうか?




「おかしい。 警備の兵士が少なすぎる……。 街で何かあったのか?」


 やはり、ハイアンさんも同じ考えのようだ。 まさか罠? 悪い考えが頭をよぎる。 いや、幻影の魔法は気づかれていなかった。




「進みましょう。 今さら引き返す方が危険だわ」


「そうだな、行けるところまでは進もう」


 来るときに眠らせた兵士も、さすがに今回はおかしいと思うだろう。 次に来るときは警戒されてしまう。 バレて無いのならば、今が絶好のチャンスだ。




―――――カッ カッ


「あそこだ」


 順調に屋敷内を進み、ハイアンさんは前方の部屋を指差した。 どうやら、あれがライツの部屋らしい。




「居ないわね」


「好都合だ、書類を探そう」


 ちらりと部屋を覗きこみ、誰も居ないことを確認する。 今のうちだ、書類を探そう。 私達は部屋に入り、辺りを調べ始めた。




「前はここにあったんだが……。 やはりないな」


 同じ場所に置いておくほど、ライツもバカじゃないらしい。 その後も隈無く探したが、書類は見付からなかった。




「見つからないわ」


「ふむ……」


 私達は一息つき、一度集まった。 警備兵を警戒しながら書類を探すのは中々気を使うものだ。 普通に探すより疲れた。




「もしかすると……」


 ハイアンさんが何か思い付いたようだ。 私とキースは彼に顔を向けた。




「ゼイルが持ち出したかもしれない」


 そうか、ハイアンさんを捕まえたのはゼイルだ。 そのまま、自分の部屋に隠していても不思議ではない。




「行ってみましょう。 ゼイルの部屋は……」


「一階だ」


 私の問いに、キースが答えてくれる。 逆戻りだ、とんだ無駄骨だった。 思わずため息が出そうになるが、なんとか抑えた。




「向かおう、ついてきてくれ」


 今度はゼイルの部屋に案内してくれるハイアンさんに続いて、私達も階段を下る。 やはり、警備の兵士は少ない。 なんなく、ゼイルの部屋までたどり着いた。



 中を伺うが、この部屋も無人だ。 ここにあれば良いけれど……。 再び大量の書類を漁らなければならない事に、私は辟易した。


 

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