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国境の街 デイル 7


「ええ、大丈夫。 ちょっと気持ち悪いだけ」


「まぁ、無理もない」


 キースは苦笑いをして、倒したムカデの方を見た。 この先にもあんなのが居るのだろうか。 思わずため息が出てしまいそうだ。




「レティ。 こいつは魔物だ」


 そう言ったキースの方を見る。 彼は残った下半身に埋め込まれている赤い石を剣で指している。 なぜ、こんな所に魔物が? 廃鉱と言えど、街の中だ。 なにやらきな臭い雰囲気が漂ってきた。




「なんでこんな所に魔物が……」


 魔物は飼いならすことは出来ないはず。 そう言い切りたいが、ジェナのことが頭にちらついて言い切れない。 まさか何か関係があるのだろうか……。




「分からないが、少なくとも誰かが関与しているのは確かだな。 ただの一貴族に、こんなマネが出来るとは考えづらい」


 魔物を施設の防衛に使うなんて、常人には考え付かないだろう。 ただ、この魔物は殆ど反射的に襲ってきた。 これでは警備兵も襲われかねない。 何か魔物を意のままにする方法がありそうだ。




「そうね……。 ジェナが関係してるのかしら」


「断言は出来ないが、可能性は高い。 とにかく今は、先を進もう」


 ここで考えても解決出来そうにない。 それに、今はハイアンさんを見つけに来たんだ。 まずは彼を探すとしよう。 この先に居れば良いけど……。




―――――ヒュオオオオ……


 先に進むと突き当たりにたどり着いた。 これ以上、先へ進む道は見当たらない。 まさか、ここで行き止まり?




「風の音がするな。 どこかに道がある、探すぞ」


「風の音?」


 ……確かに、聞こえる。 もう少し明るくしてみよう。 私は明かりの大きさを調節し、廃鉱を照らす。 大分奥に来たし、少しくらいは大丈夫。


 そのまま手分けして、行き止まりの壁を調べ始める。 すると、キースが壁側の地面を見ながら私を手招きした。 なにか見つけたようだ。




「ここに何かを動かしたあとがある」


「擦れた跡……かしら?」


 キースが指している地面には、何かを擦りつけたような跡が残されていた。 跡は壁の下に潜り込むように続いている。 もしかして……?




「試してみるわ」


 そう言った後、明かりを元の明るさに戻す。 そして、壁に向かって杖をかまえた。 キースも剣を持ち直し、いつでも動けるように待機する。




「Act.3 静音の衣」


「Act.4 動作」


 続けて二つの魔法を発動した。 すると、目の前にあった壁が音もなく扉のように動いていく。 隠し扉だ。 この跡は、重い扉を動かした跡だったようだ。




「……」


 キースは空いた扉から中を伺う。 とりあえずは誰も居ないようだ、彼の手招きに応じて私も扉をくぐる。 ……明らかに廃鉱とは違う空間になった。 石造りの壁を見ながら考える。 これは、明らかに作られた施設だ。




「当たりだな」


「ええ、そうみたいね」


 更に奥を見ながら、小声で話す。 中は明るい。 もうこの明かりはいらないだろう。 灯の魔法を消して、代わりに幻影の魔法を発動させる。




「Act.3 幻影」


 再び私達を幻影が覆う。 また魔物が居ないとも限らない、慎重に進もう。 私はキースと頷きあい、ゆっくりと奥へ進み始めた。




―――――『……が、まだ』 『……のやろう』


 いくつか道を曲がると、前方から声が聞こえてきた。 そっと覗くと、見えたのは牢屋と見張りの兵士だ。 兵士は二人、椅子に座って机に酒を並べて談笑している。 牢屋の中は暗くてよく見えない。 まずは見張りをどうにかするとしよう。




「Act.2 睡眠」


 放たれた霧は二人を多い眠らせる。 そのまま机に突っ伏して眠った。 はたから見れば酒で酔いつぶれて寝たように見える。




「行きましょう」


「ああ」


 それを確認した私達は、牢屋の方へと進む。 どうやら見張り達は、この先から来たようだ。 私達が来た方向とは逆側に続く道が伸びているのが見えた。




「誰か来る前に、探そう」


 キースは牢屋の方へ向かい、私もそれに続く。 端から順番に牢を確認していくと、一番奥側の牢屋にボロボロの衰弱した男性が閉じ込められているのを発見した。 彼は牢屋の中央に胡座をかいて座り、顔を伏せて目を閉じている。




「ハイアンか?」


「……?」


 キースは問いかける。 彼は顔を上げてこちらを見るが、すぐに視線を外し困惑した顔であたりを見渡した。 ……恐らくこの人がそうだろう。 私は幻影の魔法を解除することにした。




―――――スゥゥ……


「ハイアンか?」


 幻影の魔法が溶け、すっと姿が見えるようになる。 キースはもう一度、同じ質問を口にした。 彼は驚いていたが、すぐに落ち着いて口を開いた。




「ああ、俺がハイアンだ。 ……お前達は何だ?」


 やはり彼がハイアンさんだったようだ。 その顔には警戒の色が見える。 無理もない、見張りでもない見慣れない男女がいきなり現れたのだから。




「私はレティ、彼はキースよ。 ハイアンさん、私達は街の人達に頼まれて貴方を助けに来たの。 この街で何が起きたか教えて貰える?」


 適当に考えた嘘だが、街の総意であることには違いないはずだ。 ハイアンさんは口を開けたまま放心している。 そんな彼にキースは、声を掛ける。




「とりあえず、ここを出るぞ。 どこか落ち着ける場所へ行こう」


「あ、ああ」


 ハッとしたハイアンさんは返事を紡ぎ出す。 よし、決まりだ。 まずはここから抜け出そう。 牢屋の鍵は先程の見張りが腰につけていた。 起こさないようにキースが取り外し、牢屋の鍵を開ける。




―――――キ……キィ……キィ……


 牢屋の扉を開け、中に入る。 ハイアンさんは立ち上がろうとするが、長いことここに閉じ込められていたのだろう。 うまく体が動かないようだ。 キースが近くに寄り、肩を支える。 傷跡だけでも治してあげよう。




「Act.2 治癒」


 水球が飛び、ハイアンさんにかかる。 彼は目をつぶるが、すぐに自分の傷が治ったことに気づき驚いた表情をする。 続いて、牢屋の方に杖を構える。




「Act.3 幻影」


 牢屋の中にハイアンさんそっくりの幻影が現れる。 すぐにバレるだろうが、これで暫くは持つはずだ。 外へ全員出たのを確認して、キースが牢屋の鍵を閉める。 鍵は見張りの腰に返しておいた。




「驚いたな、君は魔道士なのか。 とても優秀なようだ」


「ええ、ありがとう」


 ここに来た道を戻り、隠し扉を魔法で戻す。 その様子を見て、ハイアンさんは話しかけてくる。 魔道士とは魔法が使える者の総称だ。 ここまで魔法が多彩に使える魔道士は少ない。 私は少し優越感を覚えたが、顔には出ないように気をつけた。

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