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国境の街 デイル 5


―――――ジ、ジジジ……


 夜中を迎え、準備を整えた私は部屋の蝋燭の火を眺めていた。 私もキースもフード付きの黒いローブに身を包んでいる。 夜中に紛れやすいように用意した衣装だ。 キースは窓から外を眺め、巡回兵の様子を伺っていた。




「レティ、準備はいいか? そろそろ行こう」


「ええ、大丈夫よ」


 ふっと息を吹いて蝋燭の火を消し杖を構える。 まずは部屋から抜け出さなければ始まらない。




「Act.3 静音の衣」


 ふわりと、私達を風の衣が包む。 屋敷を出る時に使った静音の魔法では、その地点の音しか消すことが出来ない。 だから、私はイメージを変えることにした。 静音の魔法を衣状に身にまとい、私達が移動しても効果が続くように。 どうやら、成功したようだ。 その場で足音を立ててみるが、何も聞こえることはない。




「……」


 キースが窓を指す、出る合図だ。 静音の魔法は便利だが、こちらも意思の疎通が難しくなってしまうのが課題だ。 まぁ、私達はお互いで決めた合図があるので大丈夫だが。 屋敷を出るために考えた方法が、こんな所で役に立つとは思わなかった。




―――――ガラガラ……


 実際には音はなっていないが、窓はあいた。 下の巡回兵の視線に気をつけながら、隣の家の屋根に登る。 キースは軽々と進むが、私には結構辛い。 なので、靴の裏側に鉄の突起を仕込んでいる。 これを壁に引っ掛けながら登る予定だったが……。




「……っ」


 やはり、辛いものはつらい。 最終的にはキースに引き上げてもらった。 これでは駄目だ、もう一つ魔法を使うことにしよう。




「Act.3 移動補助」


先ほどと同じく、ふわりと風が私達を包む。 これは補助の魔法だ。 効果はその名の通り、移動する際に身にまとった風が体を補助してくれる。 これを使えば……。




―――――タンッ!


 この通り。 隣の屋根までひとっ飛びだ。 続いてキースがこちらの屋根に飛び移ってくる。 そして、私の頭を軽く叩いた。 ……わかってる、飛びすぎということでしょう? バレなかったのだから良いじゃない。




 そのまま、私達は次々と屋根を渡り歩き、目的の屋敷近くまで辿り着いた。 此処から先は、警備の目が厳しい。 どうやって進むべきか……。 キースは、屋敷を覗き見て進める道を探している。


 そこまで考えて、私は重大なことに気づいた。 そのまま、流れるように杖を構え魔法を唱える。 キースが何をするつもりだと言わんばかりの目で見てくる。




「Act.3 幻影の衣」


 その瞬間、私達は夜空と完全に同化した。 これは幻影の魔法。 景色を写し込み、紛れるためのものだ。 お互いがわかるように、顔の部分にはかかっていない。 見つかりそうになった場合はフードを深くかぶれば、完全に風景の一部とかす。 キースが非難の目を向けてくる。 ……違う、忘れていたわけじゃないの。 そう、魔力の節約よ、節約。


 ため息を吐いたキースは、私に向かって指示を飛ばす。そして屋敷の壁の外側に降りた。 続いて私も降りる。 彼は壁の上を指差し、続いて中庭の木を指した。 そう進むということだ。 私は頷き、彼に続く。




―――――タッ タン ガサ


 壁に飛び乗り、上を走る。 そのまま中庭の木に飛び移り、屋敷を伺った。 ここの何処かにハイアンという人がいれば良いけど……。 屋敷を眺めていると、三階の部屋の方で人が動くのが見えた。 キースも気づいたらしく、お互いに頷く。




―――――タッ タタタタ タンッ


 木から飛び降り、警備兵をやりすごしつつ屋敷の屋根に登る。 そして先程、人影が見えた部屋が見える位置に付く。 部屋の窓が開いている。 これは都合がいい。 私は杖をかまえた。




「Wait.3 集音」


―――――『……だ。』


 話し声が私達に聞こえるように調整した。 どうやら誰かと話しているようだ。 よく見てみると、綺羅びやかな服を着た男が、兵士から報告を受けていた。 あの男がライツだろうか。 私とキースは一言も聞き逃さないように耳を澄ませる。




『全く、余計な事をしてくれおって……』


『幸い鉱脈は埋まりませんでしたので、瓦礫を片付け次第すぐに再開できるでしょう』


 鉱脈……埋まる……? もしかするとお婆さんの息子のラズさんの事だろうか。 瓦礫を片付けたら、すぐに再開する? そんな事をしたら、また崩れる可能性があるのに……。




『まぁいい……。 それで? 今日入った客は?』


『はい。 商人と名乗る男女二人が一組。 傭兵の一団。 国境を越える申請をしてきた旅人。 以上です。 商人以外は早期に手続きを済ませ、門へ通しました』


 その商人とは私達の事だろう。 やはり、最初から目をつけられていたようだ。 このまま何もなく外へ出るのは無理だと証明されてしまった。




『商人?』


『ええ。 門の警備兵によると若い男女で、女の方は中々のものだったようで』


 私は眉をひそめる。ぞわっとして隣を見ると、キースが怒気が私にも伝わるほどの不快な表情を浮かべて睨んでいた。 そう思ってくれるのは嬉しいが、今はまずい。 彼の方に手を置き、頭を振って宥める。 分かってくれたようで、少し深呼吸をして落ち着いた。




『女? あいつらからは、酒と食料しか上がってこなかったが?』


『それが……。 馬車に接触はしたようですが、目先の酒に目が行ってしまったようで……』


『ちっ。 使えん奴らだ』


 どうやら、あの場で隠れたのは正解だったようだ。 見つかっていたら、面倒な事になっていたかもしれない。




『あいつはどうだ』


『ハイアンの事でしょうか? 相変わらず鉱山の牢屋で、ライツ様を呼べとわめき続けております。 日に日に弱っているようですが、声だけは大きいままでして……』


『ふん、やかましい奴め。 そのまま誰にも見つからんように、閉じ込めておくんだ。 だが、死んでしまうと都合が悪い。 食事は与えておけ』


 確定だ。 あの男がライツ、そして牢屋に入れられているというのが前領主のハイアンだろう。 それにしても鉱山の牢屋か。 これは良いことを聞いた。 私は隣のキースに顔を向ける、彼もこちらを向いて頷いた。 屋敷に居ないのはわかった、一旦ここを離れよう。

  

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