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国境の街 デイル 2


―――――ガラガラガラガラ


 ウイユの村を出て三日。 ゆっくり進んできたので、少し遅くなってしまったが、私達はデイルの街の近くまで辿り着いていた。 前方には山に組み込まれるように形成されている街が見える、あれがデイルだ。




「あれがデイルの街?」


「ああ。 国境の街、鉱山都市。 クアーラほど大きくはない街だが、そこで取れる鉱物は貴族に好評だ。 加工されて、彼らの装飾品として高値で売買されている」


 なるほど。 わざわざ、原石を見に来る貴族は少ないかもしれないが、一応警戒したほうが良さそうだ。 ……まぁ、このネックレスで私だと気づかれる心配は少ないのだが。 念には念を押しておこう。




「あれが見えるか? 鉱山だ。 この街の主要施設だな」


 キースの指した先を見る。 街の山側にいくつもの洞穴があり、補強されているように見える。 あれが、鉱山か。 確かにこれなら鉱山都市と呼ばれるのも納得がいく。




「随分沢山あるのね」


「それだけ、需要があるということだろう。 掘れば掘るだけ儲かるからな」


 鉱山を眺めながら、馬車は進む。 街の入り口に到着し、キースが通行証を見せた。 クアーラと同じ様に、私は荷台に座り、目立たないように構える。


 デイルの街は、主に石造りの家屋が多く見える。 鉱山での採掘で、石材は有り余るほどあるんだろう。 門から見える街道には、クアーラのような商店街は見えない。 代わりに酒場の看板が到るところにあった。 次点で宿屋だ。 国境沿いの街だけあって、ここで泊まっていく客は多いようだ。




「デイルの街には何用で?」


「商売だ。 良い取引先が見つかってな」


 キースは適当に言い訳を言う。 そのまま警備兵は荷台を覗く。 私と一瞬目があったが、特に何も言われることも無くすんだ。




「よし、通っていいぞ」


「ああ」


 どうやら無事に通れたようだ。 これで二回目だが、やはり緊張する。 暫くはこれが続くのだろうか。 そう考えると、ため息が出てきそうになる。




「そこの馬車! 止まれ!」


 突然、そんな声がかかった。 辺りには馬車は居なかったはずなので、私達の事だろう。 声は先程通った門からではなく、前方からだ。 私は気付かれないように前を覗くと、馬に乗った兵が数人こちらに近づいてきていた。




「レティ、私兵だ。 隠れておけ」


 キースは、こちらを見ずに支持をする。 私兵、そう聞いて私は門を通ったときよりも緊張する。 私兵は、この街を管理する貴族直属の兵士だ。 豪華な衣装に身を包んでいるのですぐにわかった。 さっと、近くにあった荷物の中に隠れる。




「荷台を調べさせて貰うぞ」


「はい、商品しかありませんが……」


 そう言って彼らは、馬車の後ろに回り荷台を見る。 そして、直ぐ側にあった果物と酒を積んだ箱を見つけ、それを運び出した。




「貰っていくぞ、構わないな?」


「え、ええ。 どうぞ」


 明らかに横暴だ。 通行料とでも言うつもりなのだろうか。 キースは、怯える商人を演じながら返事をする。 彼らは、それ以上荷台を調べることも無く馬に戻ってしまった。




「よし、行くぞ」


 そのまま、来た道を引き返して行ってしまった。 あれが貴族直属の兵士? 信じられない、あれではまるで山賊だ。 周りに居る人達は憐れむような目で、こちらを見ていた。 すると、近くに居た男の人が近づいて話しかけてきた。




「災難だったな。 まぁ、運が悪かったと思え」


「ここではいつもあんな事が?」


 彼の話しぶりからすると、普段からこんな事があるんだろう。 キースは彼に聞き返した。 彼は辺りを見回して、警戒しながら小声で話してくれた。




「……ああ。 ここではあいつらの言うことが絶対だ。 逆らうと鉱山送りにされるぞ」


「鉱山送り?」


 聞き慣れない言葉を聞いた。 鉱山送り? 働かせるということだろうか。 そんな権限が私兵にあるとは考えられない。 彼らの長である貴族が、腐敗している可能性がありそうだ。




「そうだ。 だいぶ前に、ここのお偉いさんが変わってな。 それからは連れてきた兵士が我が物顔で街を仕切ってるんだ。 ……新参か? なら、用が済んだらすぐ街を出たほうが良いぞ。 これ以上、目をつけられる前にな」


「ああ、そうしよう。 感謝する」


 彼はそう忠告してくれた。 確かに、ここで騒ぎを起こすのはまずい。 だが、この様子だと街道へ出るのにも一苦労しそうだ。 すんなり入れたのは、搾取の対象を増やすためだろう。 だから門を通ってすぐに私兵に捕まったのだ。 街を出る時には、色々と難癖をつけてくるに違いない。




「レティ。 そのまま隠れておけ。 とりあえず馬車を駐める宿屋を確保するとしよう」


「ええ、わかったわ」


 ここでじっとしていても、また目をつけられかねない。 まずは目立つ馬車を駐める場所を確保しよう。 私は、言われたとおりに暫く隠れていることにした。 少し狭いが仕方ない。 面倒に巻き込まれるよりはマシだ。




―――――ガラガラガラガラ


「あそこにする。 揺れるぞ、捕まっていろ」


 ガタガタと宿屋の敷地に馬車が入る。 捕まれと言うが、動ける範囲は限られている。 お蔭で背中を少し打った。 まったく……この街に来てからろくな事がないわね。




「―――……」


 外では宿屋の主人と話すキースの声が聞こえてくる。 もう箱からは出てもいいだろう。 私は荷台に座り直し、ちらりと外を伺った。




「レティ、もう良いぞ。 ここに泊まろう」


 話はついたようだ。 キースは鍵を持って私に話しかけてくる。 荷台を降りて、体を伸ばす。 思わずあくびが出てきそうになるが、手で口を抑えてなんとか耐えた。




「とりあえず、部屋に行こう」


「ええ」


 背後では宿屋の主人が馬車を連れて小屋へ入っていった。 私達は宿屋へ入る。 扉を開けるとすぐ階段があり、キースはそれを登り始める。 部屋は二階のようだ。




「ここだ」


 ガチャ。 と鍵を開けて扉を開く。 あまり広くはないが、贅沢はいってられない。 中に足を踏み入れて、私はある一点に視線が向いて固まった。




「……」


「ここはクアーラと違って、治安が悪いようだからな。 何が起こるかわからない、大事を取って俺もここに泊まる」


 そう、その部屋は二人用。 ベッドは二つ置いてあった。 キースは当たり前のように話す。 普段、私がからかうと狼狽えるくせに、こういう時は動じない。




「そ、そうね。 しっかり警護しなさい」


「ああ、分かっている」


 声が上ずってしまった。 私のほうが動揺してどうする。 思わず妙な言葉遣いになってしまった。 ちらりと彼を見るが、当たり前のように荷解きを始めている。 変に意識した私が馬鹿みたいだ。 ため息を付いて、私も荷物を広げ始めた。 ……後は、この街をどう切り抜けるかだ。 この街では観光もできそうにない。 窓から外を見ながら、もう一度ため息を吐いた。

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