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ウイユの村 5


「こちらになります」


 そう言って村長は村の真ん中にあった大きな家の扉を開ける。 ここは集会場の役割を持っているようだ。 椅子やテーブルが沢山置いてある。 しかし今、それらは端に寄せられ代わりにあるのは所狭しと置かれたベッドだった。 その上には、怪我をした村人が何人も寝かされている。




「ひどい……」


「最初のうちは数匹でした。 ですが日を跨ぐ毎に、徐々にその数は増え怪我人も多くなり……。 死人が出なかったのが幸いです」


 そしてシエラ達をに望みを託して街へ送ったのだろう。 間に合って良かった。 そう思っていると、後ろについてきたシエラ達が中に駆け出した。 その先には治療をしている男女が見えた。




「お父さん! お母さん!」


「シエラ! リズ、エイク!」


 どうやら、シエラ達の両親だったようだ。 再会を抱きしめあって喜んでいた。 父親の方は、右腕に包帯を巻いている。 怪我人に怪我人を治療させるほど、切羽詰まっていたのだろうか。 私は、彼らに近づいた。




「お父さん、お母さん。 この人が助けてくれたの。 レティさん!」


「レティ・エイルです。 彼はキース・メスト。 今回、依頼を請け負わせて頂きました」


 シエラに紹介され、私とキースは会釈をする。 シエラの両親は、自分達よりだいぶ若い私達を見て驚いていた。 無理もない、冒険者と言ってすぐに想像がつくのは大柄の男性と言った所だろう。




「あなた方が……。 いえ、申し訳ない。 私はテレズ・フリント、シエラ達の父です。 今回は助けていただき有難うございます」


「私は、ユエラ・フリントと申します。 お蔭で助かりました、子供達も無事に届けて頂いて……。 なんとお礼をすれば良いものか……」


 テレズと名乗った父親は、最初は信じられない様子だった。 しかし、すぐに切り替え深々と頭を下げてくる。 ユエラという母親は、シエラ達を抱き涙ながらに言葉を述べる。 そこまで畏まらなくても……。 まずは治療をしてしまおう。 私はテレズさんに顔を向ける。




「ふふ、お礼なんて良いですよ。 それよりテレズさん。 包帯を取って腕を見せて下さい、治療します」


「治療というと……?」


 彼は疑問に思いながらも腕を差し出してきた。 そこには裂傷が刻まれ、爪で引っかかれた後だとすぐにわかる。 私は少し下がり傷に向かって杖をかまえた。




「Act.2 治癒」


 放たれた水球は、テレズさんの傷に張り付いた。 それは、下に流れることもなく傷口で留まる。 すると、透明な水球の下で傷が徐々に治っていくのが見える。 完全にふさがった後、水球はふっと消えた。 ……よし、成功だ。 この調子で他の人も治してしまおう。




「……! 痛みが消えた……傷口もない!」


「あなた……!」


 テレズは治った傷をユエラに見せる。 彼女は自分の事のように喜んでいた。 私は振り向き、集会場の中の人に向かって叫ぶ。




「これから順番に回っていきます! 重症の方は優先しますので、教えて下さい!」


 私はそう言い放ち、村人達の治療を始めた。 後ろから声がかかり振り返る。 テレズとユエラが何度も私に頭を下げ、感謝の言葉を口にしていた。 シエラ達も笑顔だ。 目立ってしまうが仕方ない。 このことに関して私は後悔はしていない。






―――――パチッ!


 治療を初めてどれほど経っただろうか。 全員の治療を終えた私は、焚き火を眺めながら椅子に座っていた。 怪我をした人達はすっかり回復し、大事を取って寝てもらっている。 魔法で傷は治ったが、体力まで戻るわけではないのだ。


 流石に疲れた私は、少々休ませて貰っている所だ。 目の前の机には、彼らが用意してくれた食事が沢山置いてある。 なんでも感謝の気持ちを少しでも受け取って欲しいとの事だ。




「ほら、飲むか?」


「ええ、頂くわ」


 キースが私に紅茶を持ってきてくれた。 有り難く頂こう。 彼はそのまま椅子に座り込んだ。




「決まったの?」


「ああ、明日の昼過ぎに森に調査に出る。 向かうのは、案内役の村人一人と俺達だけだ。 あまり大人数で行っても、かえって邪魔になるだろう」


 キースには村長さんと、今後の事について話し合って貰っていた。 確かに守りながら戦うのは難しい。 それに少人数なら、もし危険だった場合も逃げるのが容易だ。




「そうね。 それがいいわ」


「レティ。 一つ言っておくぞ。 もし魔物が俺達で太刀打ちできない相手だったら、すぐに逃げろ。 俺が殿を務める」


 つまりキースは自分を犠牲にしてでも私を逃がす、という事だろう。 ……こうなった彼は意地でも自分の意見を変えることはない。 全く困ったものだ。 ……それなら、私にも考えがある。




「わかったわ。 なら、私からも一つあるわ。 必ず生きて帰ること。 もし帰ってこなかったら、一人でも探しに行ってやるんだから」


「それは……。 ……はぁ、わかった。 全員無事に帰る、約束する」


 キースは困った顔をして口ごもる。 そして諦めたように息を吐いた。 それでいいの、こういう所はいつまで経っても変わらない。 ……それが良い所でもあるんだけど。




「なら、それを飲んだらなるべく早く寝るんだ。 明日は今日より激しい戦闘になるかもしれないからな。 しっかりと体を休めておけ。 今日は魔法を行使して疲れただろう」


「そうね、そうするわ。 この料理は……食べきれそうもないから、つめて貰おうかしら?」


「はは、そうだな」


 こんなに沢山食べられるはずもない。 保存の魔法をかけて、明日にでも皆と分けて食べよう。 大量の食事を見て、私とキースは苦笑いをしていた。


 そして私達は翌日に備えて就寝した。 寝床はシエラ達が是非私の家に、と誘うのでお世話になることにした。 キースは私と同じ寝室で寝ることに必死で抵抗したが、魔法で無理やり連れて行った。







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