戦闘開始
口から泡を吹き、戦意揚々に鋏を鳴らすカニは、飛び出た目でリク達を見下ろす。
「全員戦闘態勢!」
リクの掛け声に全員が即座に応え、それぞれが武器を構える。
「でかいカニだな。カニ鍋何人分だ?」
「まずはいつも通りで、様子見だ。全員行動開始!」
抜刀して、ニヤッと笑いながら軽口を叩くカイリ。同じく抜刀しているリクが、全員に号令をかける。リクとカイリが同時に走り出した。カニの巨大な鋏が、二人に振り下ろされる。容易に地面をえぐる一撃を、二人は軽々と避けた。そのまま鋏に飛び乗ると、鋏を伝って、胴体へと走り込んでいく。戦闘を走るリクの前に、シャボン玉のようなものが突然現れた。
「!?」
避けきれず、そのシャボンはリクの右肩にあたる。接触の瞬間はじけると、リクの体は吹き飛ばされる。
「カイリ!進め!」
右肩がえぐれ、そのまま地面に落下していく。地面にたどり着く前に、ミクが滑り込みリクを受け止めた。カイリは、頷くと正面を向く。そこには、シャボンがいくつも浮かんでいた。
「全速力で行くぞ」
カイリは、その場で屈むとさらに速度を上げていく。シャボンを曲芸のように避けながら、カニの頭へと到達する。
「片目、もらった!」
ガキン
「マジかよ」
鈍い音とともに、刀が弾かれ、その衝撃で体が投げ出される。驚くカイリに、影が差した。見上げると、そこには振り上げられた鋏があった。
「やば!」
無情にも振り下ろされた鋏は、カイリを捉える。またもなる鈍い音とともに、カイリが地面に叩きつけられる。
「びびったぁ。リサありがとう!」
土煙が晴れると、そこには、白い球場の籠に包まれたカイリが頭を掻いていた。
「二人も持って行かせませんよ」
リサは、手に持っていた札を投げる。人形の札が、ミクに運ばれているリクに張り付く。たちまち、抉れた肩が治った。完全に傷がふさがると、リクの体から札が剥がれ落ちる。地面に落ちた札の肩の部分が、破り取られたようになっていた。
「リサ助かった」
リクが立ち上がり、肩を回す。
「いえいえ」
リサは、追加で札を出す。
「【琥珀】【翡翠】」
リサの言葉に呼応し、札がそれぞれ染まっていく。染まった札を、三人へ飛ばす。
「シャボンはこれで問題ないと思います。あのカニの甲羅は無理かもしれませんが、間接の部分ならこれで切り離せるはずです」
「問題は、アイツのコアがどこにあるかと、あの鋏だな」
「鋏は私が何とかします!」
意気込むミクは、身の丈以上の斧を以て意気込んでいる。
「これ以上は、待ってくれなそうだぞ」
カイリがカニを、指さす。カニは、先ほどの攻撃が不快だったのか、体が赤く染まっている。両の鋏をぶつけ合わせ、口から大量のシャボンを出していた。一瞬体が前傾になったかと思うと、勢いよくこちらに走り出した。
「横歩きじゃないのかよ!」
カイリがツッコミを入れつつ、刀を再度構える。こちらに向かってくるカニに、誰よりも早く走り出したのはミクだった。シャボンに当たりながらも直進し、カニの正面い躍り出る。シャボンは破裂はするも、ミクを傷つける頃は無い。服がわずかに破ける程度だ。自分の目の前に現れた少女に、カニは容赦なく鋏を振り下ろす。ミクは、その体には見合わない膂力で、斧を振りあげる。ぶつかった衝撃が、風になってあたりに吹き荒れる。
「はぁ!」
気合の入った声が聞えると、カニの鋏は弾かれ、体勢がわずかに崩れた。大斧を振りぬいたミクの脇をリクとカイリが走り抜ける。そのまま、カニの足を斬り飛ばした。体の支えを失ったカニは、うつ伏せに倒れこんだ。
「これで、どうだぁ!」
ミクが両手で振り下ろした、己が、カニの頭を捉える。頭に突き刺さった斧から、背中の甲羅まで一気にヒビが奔る。背中の甲羅が砕け散ると、体内に怪しく光る玉があった。リクがそれを真っ二つに切り捨てる。カニの体が光に包まれ、消えていく。
「これって……」
「今のカニは、ダンジョンモンスターだ」
ミクは驚いた顔で、リクを見る。
「すぐにエリーゼたちと合流しよう。もうここはダンジョンの中だ」
四人は、集合場所の市街地へと向かう。先ほどまで戦闘があったとは思えないほど、波は、穏やかに寄せては返していた。
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