課外授業
王都襲撃から、二週間が経っていた。学園も街並みも、ほぼ元通りになっている。学園内の職員室では、職員会議が始まっていた。
「副理事長の不祥事により、人員整理のため、職員の内部調査を実施します。徹底的に調査し、くだんの団体またはそれに類するものと接触、もしくは接点が確認されたものは厳しい処分を下します」
理事長であるライラは、教師たちへ宣言する。部屋の空気が一気に重くなる。今回の事件をきっかけに学園内にも広まっていた、【苦痛のない世界の会】の締め出しを本格的に始めるようだ。その本気度がライラの態度からヒシヒシと伝わってくる。自分の学園でこのような事件が起こったことが相当腹に据えかねているらしい。
「授業は友情通り行います。夏季休業までの後二か月。よろしくお願いしますね」
そう告げると、職員室を出ていった。トムはそのライラの背を見送る。彼女の背が寂しそうに見えた。副理事長とは運営方針でぶつかることは多々あったものの、お互い学園のためにと働いてきた同志だったらしい。彼女は副理事長の事情を知っていた。だから、取り込まれてしまった彼の気持ちを理解できてしまう。理解できてしまうからこそ、止められなかったことが悔しいのだろう。トムは、最後に謝りながら消えていった彼の表情を思い出す。彼の最期は申し訳そうにしながらも、どこか吹っ切れた顔をしていた。
『痛みってのは厄介なもんだな』
そういいながら、手元にある資料を見る。そこには【ダンジョン学 課外授業について】と書いてある。
『課外授業はあそこに行くか……』
そういって、教室へと向かった。
トムが講義室に行くと、もう見慣れたメンツがそろっていた。未だにダンジョン学を専攻している十名だ。先の襲撃でも各々自分にできることをこなしていたらしい。ドレット達はトムに手を挙げて挨拶をしている。全員無事に切り抜けた様子にトムも安心した。トムは教壇に立ち、エリーゼたちにプリントを配り始める。
「この前の襲撃はあったが、授業はこのまま、夏季休業まで継続して行う。なので来週は課外授業に行く。全員外泊許可はとってきたか?」
教室を見渡すと全員が頷いている。
「良し、じゃあ今配った資料を見てくれ」
「ここって……」
資料を見たエリーゼが声を漏らす。
「今回行くのは、エルヴェスト王国の南西に位置する島。ビオラ諸島にあるダンジョンだ」
「やったー!!」
「ビオラ諸島って確か、最近リゾート地として有名なところですよね?そんなところにダンジョンが?」
ほかの生徒たちリが、リゾート地に行けると喜ぶ中、リコが首をかしげている。
「ちゃんとダンジョンがあるぞ。今回行くダンジョンは、【スイートホーム】だ」
その名前を聞いて、マリーがわずかに固まった。その様子に気づいたクロムがマリーの顔を覗き込む。
「マリー?」
「なんでもないよ?クロム」
「ほんとー?」
「ほんとほんと!」
「怪しいな~」
この前の一件でクロムはマリーが独自に動いていたことが大層不満だったらしい。個々のところマリーへやたらと疑い深くなっている。
「書かれた日付にちゃんと集合するように。船で行くから、遅れると合流がめんどくさいぞ」
「はーい!」
元気な返事にトムは頷いて授業を始めた。
授業が終わり、トムが講義室から出ると、マリーが追いかけてきた。
「兄さん!」
「マリーどうした?」
「本当に【スイートホーム】に行くんですか?」
「あぁ」
「でもあそこは」
「もう限界なんだそうだ」
トムの言葉にマリーは俯く。そんなマリーの頭に手を置く。
「そんな事より、お前はやら仲やいけないことがあるんじゃないか?」
そういって、マリーの後ろを指さす。マリーが顔を上げて、トムの指さす方を振り返る。そこにはジト目でこちらを見ているクロムがドアから半分顔を出してこちらを見ていた。
「ちゃんと話し合え。大事な友達だろ?」
「は、はい」
そういって、マリーはクロムのところへ戻っていく。クロムに詰められるマリーは苦笑いで謝罪を繰り返すだけだった。
久々の更新になってしまい申し訳ございません。
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