伝言
全力で飛ぶ傷だらけの黒竜の上、二人の魔人が座り込んでいた。
「う~やっぱり……むりだったんだよ……」
「うるせー!こっちはもう少しで倒せそうだったんだ!」
涙を流す隻腕の少女とボロボロな少年は、言い合いをしていた。
「グァァァアアアア」
黒竜の鳴き声に、二人はハッと上を見上げる。燦燦と輝く太陽のわきにきらりと光る何かが見えた。それは徐々に大きくなる。落ちてきている者が人だと気づいたときには、黒竜の背に衝撃が走る。
「ガァァァァァァァ!」
苦しそうな黒竜の鳴き声と共に、大きく揺れる。二人はバランスを取りながら、落ちてきた人物に目を向けた。
「ヒッ」
「てめぇなんだ!」
顔を見た少女は青ざめ、少年は全身に炎を纏う。
「落ち着け戦闘したいわけじゃない」
そういいながら、黒竜の背に刀を突き立て、それに捕まることで姿勢を保っているアキラが手を前に出して、二人を宥める。
「だったら何しに来た!」
「伝言を頼みたい」
未だ怒りが収まらない少年に、アキラは伝えた。
「伝言だと?」
「お前ら魔王のところの奴らだろ」
目を丸くする少女がアキラに尋ねる。
「なぜ……それを……」
「もう魔人なんて、魔王のところにしかいないからな。それよりも伝えてくれ」
「なにを?」
「魔王城のことは必ずどうにかする。だから、もう少し待っててくれ」
伝言の内容を察した少女が涙を流してアキラを見る。
「本当?」
「あぁ。あともう少しだ」
「信じられるか!」
少年はアキラに飛びかかろうとする。しかしそれを、少女が止めた。
「もう私たちには時間がない。もし策があるなら急いでほしい。間に合わないと思った時には、こちらも動く」
「あぁ」
少女はさっきまでのタドタドしい様子から一変し、真剣なまなざしでアキラを刺す。
「伝言は伝えとく」
「フン!さっさと降りろ!」
少女は、それだけ伝えると、少年が手を払う。
「お前も、悪かったな」
アキラはそういうと、黒竜から淡く光る刀を引き抜き、その背を撫でる。傷が消えたのを確認したあと、そのまま跳んだ。
「信じてよかったのか?」
「あの人は前に、お姉さまが言ってたダンジョン貴族だと思う。このままあいつらのいうこと聞くよりマシだと……思う……」
少女がまた、元通りになって、少年は舌打ちして頭をガシガシと掻いた。黒竜は先ほどより速度を上げ、黒雲が渦巻く不気味な大陸へと消えていった。
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