ダルケン
トムが現れる数分前、上空で行われてい黒竜との戦闘に変化が生じていた。三人の眼前にいる黒竜は無傷ではあるものの、苦しそうな息遣いをしている。相対するレベッカ、ティナも肩で息をしている。唯一ダルケンのみ、疲弊の色が全く見えない。
「かたいなぁ~!」
「思うように魔法打てない……面倒……」
不満を垂れる二人に黒竜が攻撃態勢をとる。三人が防ごうと動き始めた時、ダルケンが目の前の黒竜から視線を外し、遠くを見た。レベッカはその様子に気づいたが、黒竜の攻撃を防御することを優先した。黒竜からのブレスを、ティナが魔法で防御し、レベッカが飛び出した。地上での移動よりスピードが出ない。レベッカの剣は黒竜の爪に阻まれた。
「時間切れだな」
ダルケンの声が戦場によく響いた。
「【枯山水】白昼夢」
最初に黒竜は異変に気付いたのは黒竜だった。高度が下がっている。必死に羽ばたき、空を望んでも落ちている。次第に落ちるスピードが上がっていく。ついには地面へと勢いよく落下した。落下の衝撃でえぐれた地面がこれが現実だということを告げている。眼前にダルケンが降り立った。ダルケンから放たれる圧に息苦しさを覚えた。そして黒竜は理解した。
相手は本気を一切出していなかった事を。
「逃げなさい。君たちの問題はいずれ解決する」
周りに聞こえないようにそう告げると、踵返して今度はレベッカ達のもとへ向かう。
「さて、すまないけどそろそろお暇するよ」
「へ?」
キョトンとするレベッカをよそに、身支度を整えたダルケンは良い笑顔で手を振った。
「息子のこと、よろしくね」
そういうと、ダルケンの体が景色の溶け込むように消えていく。
「え~!ダルケンさ~ん!」
レベッカが叫ぶがもうダルケンからの返事がない。その上を影が通った。レベッカが見上げると、そ
れはトムだった。
「なるほどね」
レベッカがダルケンの消えた理由に納得がいくと同時に、ティナが隣に降りてきた。
「ダルケンさんは?」
「トムが来たから帰ったわ」
「なるほど……」
ティナが呆れた顔でため息をつく。ガラガラと音を立てて、黒竜が立ち上がった。
「二人でやるよ!」
「うん……」
レベッカとティナは黒竜との戦闘を再開しようとした。
「グワァァァァァァァァァァァァン」
今まで一番大きな声で黒竜が吠える。それも、威嚇というより、遠吠えに近い鳴き声だった。
遠吠えが終わると、黒竜は翼を広げ一瞬で空高くへと飛び上がった。
「また空~?」
レベッカが心底嫌そうな声を上げる。しかし、黒竜はレベッカ達を相手することなく飛び去っていく。
「え!?逃げた!待て!」
追いかけようとするレベッカの手をティナがつかむ。
「ティナちゃん?」
「逃げたなら追う必要ない……それよりも……この惨状どうにかしないと」
そういって周りを見る。戦いの影響でそこら中が瓦礫だらけだ。レベッカも肩を落として頷く。二人
は、敵を黒竜から散乱する瓦礫へと変え戦いを再開した。
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