絶望の淵、兄妹の再開
マリーとクロムは硬直していた。クロムに至っては気絶寸前だ。
「何で火竜が?!」
クロムが半狂乱に叫ぶと、それに反応するように火竜がマリー達をその目に納める。同時に威嚇するように吠えた。
「ヴァアアアアアァァァァァァァアアア」
心臓を直接叩かれるような、低い大音量の咆哮が二人を襲う。クロムは気を失い、それをマリーが咆哮に耐えながら支える。
「まずいわ、さっきコキュートスを使ったばかりだから火竜を仕留められるような上位魔法が使えない」
火竜はマリーが倒れていないことを確認すると、プライドに障ったのか口に真っ赤な炎をため始めた。それを見たマリーが焦る。
「ブレス!ダメ、今使える魔法じゃ止められない!とりあえず避けないと」
避けようと考えたところで倒れているクロムが目に入った。
「クロムを担いでは避けられない!防ぐしかない!」
マリーは杖を構え詠唱する。
「流麗なる流れのもとに我を苛む炎熱から守り給え、『ハイ・アクアルウォール』!」
呪文を唱え終わると渦巻く水の壁がマリーの前に現われる。と同時に火竜からブレスが放たれる。ブレスは周囲の空気をチリチリと灼きながら、水の壁とぶつかった。水が蒸発し水蒸気が上がる。
「ダメ!持たない!」
マリーは杖を上に振り上げ、ブレスが上方にそらす。ブレスはマリーの頭上を越え校舎の天井を一部焼き飛ばした。その様子を見ていた火竜が羽ばたき上空に飛んでいく。マリーは一瞬、逃げてくれたのかと安心するが、すぐに杖を構える。明らかに火竜の目がマリーを忌々しい物を見るような目で見てくるからだ。火竜は上空で止まると、マリーに目掛け滑空する。マリーは自分の死を悟り目をつむる。すると、暗転した視界の中で聞き覚えのある声がした。
「トカゲの分際で、誰の妹に手ぇ出してんだ?」
マリーが目を開けるとそこには、片方の角を切り落とされた火竜と自分をかばうように立っているトムだった。トムはマリーを見ると優しく微笑んだ。
「火竜相手によくやった。あとは任せろ」
トムの袖からリルイが顔をだし、マリーの頭の上に乗る。
「久しぶりー♪マリーちゃん♪」
「兄さん?!リルイちゃんも!?」
トムは火竜に向き直り刀身に手を添える。
「行くぞ、『枯山水』」
トムがつぶやくと刀身が蒼に染まり水が滴る。
「『斬波・鉄砲水』」
トムが刀を横なぎに振ると、無数の雫が凄まじい速さで火竜に目掛けて飛んでいく。雫は火竜の翼に無数の穴をあけ、火竜は地に落ちた。火竜が落ちると同時にトムは火竜の首元まで走る。立ち上がろうとする火竜の首に、刀を振り下ろし切り落とした。火竜を一瞥した後、マリーの元へ戻る。
マリーはトムの戦闘を見て、力の差に肩を落としていた。『私が追い詰められていた火竜をこうも容易く』マリーは魔力も残り少ない状態での戦闘だったため、仕方ないのだが、兄の力の大きさに凹んでいた。
「久しぶりだな、マリー」
トムの声に顔を上げ、精一杯の笑顔を兄に向ける。
「お久しぶりです。兄さん」
「私もいるよー♪」
「久しぶり、リルイちゃん」
マリーは気持ちを切り替え、兄とリルイとの再会を喜んでいるとトムがマリーの後ろを指さしながら尋ねた。
「その子、大丈夫か?」
『その子?』と思いながら、マリーがトムの指の先を追っていくとクロムがいた。
「あぁ!クロム!大丈夫ですか!」
マリーが慌てて呼びかけるが気絶したままだ。
「すみません兄さん、私の友達なんです。医務室に運ばないと!」
マリーがクロムを担ごうとすると、トムがクロムをお姫様抱っこする。
「俺が運ぼうその方が速い。医務室の場所は変わってないか?」
「あ、いいな・・・じゃなくて!ありがとうございます!医務室はこっちです!」
マリーは赤面しながらトムを案内する。クロムの下には『私も運ぶー♪』と言ってリルイが必要ない支え役をしていた。
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