もう一人の兄
自由参加の高等部予選では、ドレットやエリーゼが参加している。リコは個人で戦うのは苦手らしく観客席で二人の応援をしている。
「ドレットさん!エリーゼさん!ファイトです!」
可愛らしく拳を握り応援するリコの隣に、予選を終えたマリーとクロムがやってきた。
「ドレットせんぱーい!エリーゼせんぱーい!がんばってください!」
「お二方共、がんばってください!」
二人も闘技場に声援を送りながら、腰を下ろす。
「マリーさん、クロムさんお疲れさまでした!二人とも本戦出場おめでとう!」
祭りの雰囲気にあてられたのか、いつもよりテンションの高いリコが二人を祝う。
「ありがとうございます。リコ先輩!」
「ありがとうございます」
「マリーさんの魔法はすごかったですね」
マリーに褒められ、照れたように頬を染める。
「冷静さを欠いてしまい、お恥ずかしい所を見せました」
「そんなことありませんよ。あれほどの魔法技術一体どちらで?」
マリーの言葉に少し言い辛そうにしながら口を開く。
「兄さんのダンジョン探索についていっていた時、もう一人魔導士の同行者がいたんです。彼から学びました」
「トムさんについていける人が、マリー以外にもいたんだ」
クロムは意外そうな顔をしながら、その人物に興味が湧いたようだった。
「そうですね、兄の親友のような人でした。わたしには魔法を基礎から教えてくれて。私のもう一人の兄と言っても過言ではありません」
「マリーがそこまで言うってことは、スゴイ人なんだなぁ」
クロムが感心していると、ふと、何かに気づいたリコが顎に指を置いて首を傾げる。
「今はどうされてるんでしょうか?トムはアカデミーに来てしまっていますし……」
「探索中に亡くなったそうです」
「え……そうだったんですね……ごめんなさい」
リコはマリーに頭を下げる。
「気にしないでください。確かにショックでしたが、ダンジョンはそう言う場所ですから」
「トムさんについていけるほどの人でも、死んじゃうんだねダンジョンって」
改めて、ダンジョンの怖さを認識したクロムが体を震わせる。
「そうね、無くなってしまえばいいのに……」
マリーの呟きは、突如大きくなった歓声にかき消されてしまう。ステージでは勝者が決定したようだ。エリーゼが手を挙げている。
「マリーさん今何て……」
「すみません、私は生徒会の用があるのでここで失礼します」
リコの言葉をさえぎって、マリーは立ち上がる。クロムにも離れることを告げ、暗い通路へと消えていく。
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