トムとリルイ
「テロン先生!?」
「おい!魔方陣がおかしいぞ!」
テロンが転移し、焦るエリーゼにドレットが呼びかける。エリーゼ魔方陣を見ると、魔方陣が怪しい光を発している。
「反撃魔法?!魔方陣から離れるわよ!」
エリーゼのセリフが終わると同時に、魔法陣から黒い靄が一気に噴き出た。エリーゼとドレットはいったん距離を取り、武器を構える。靄が晴れるとそこには、四体の一つ目の巨人と真紅の龍がいた。それを見た瞬間エリーゼたちは体中から血の気が引いていくのを感じた。武器を持つ手は震え、体は倒れることもなくただただ硬直していた。
「嘘だろ・・・・・・あれは・・・・・・」
ドレットは震えながら声絞り出す。
「サイクロプスと火竜・・・・・・ダンジョン深層のモンスターが何で・・・・・・」
青い顔で硬直する二人をよそに、火竜は中等部の方へ飛び立った。四人の巨人は悠然と二人に向かって手にしている棍棒を振り上げる。
「エリーゼ!逃げろ!」
ドレットの声で我に返ったエリーゼは、四人のサイクロプスに向かっていくドレットを見つけた。
「ドレット、やめて!」
エリーゼは手を伸ばしながら叫ぶが無常にもこん棒は振り下ろされた。ドォォオンという重厚なおとが鳴り響く。
「ドレット、ドレット!嘘でしょドレット・・・・・・」
何度も呼ぶが返事は無い。最悪の事態に足がすくむ。サイクロプスの一体がエリーゼの前まで来る、その手に握られたたこん棒を振り上げた。エリーゼは自分の死を悟り、目を固くつむる。すると、体が後ろに勢いよく引っ張られた。
「あんた、死にてぇのかよ」
聞きなれない声に目を開けると、自分の服を引っ張られていることが分かった振り向くと、見覚えのない真っ白なローブを着た青年がいた。後ろに引っ張られる勢いのまま引き倒された。背中が何かにぶつかり、見てみると気絶したドレットがいた。
「ドレット!」
エリーゼの声にドレットが目を覚ました。
「エリーゼ?俺は・・まだ生きてるのか?」
「えぇ!」
エリーゼが喜んでいると声が掛かる。
「そこの二人、イチャイチャするのはいいけど立てるか?」
「イ、イチャイチャなんてしてない!」
「なんか助けられたみたてぇだな、礼を言う。あんたの名前は?」
青年が振り返り、二人を見る。
「トムだ。トム・ヘイカー」
「トムさん、ありがとう」
エリーゼもお礼を言うと、トムは少し不機嫌そうに口を開いた。
「お礼はいいけど、今、そんな状況か?」
トムの言葉で二人は今の状況を思い出し、グラウンドを見る。するとこちらの様子を窺っているサイクロプスたちがいた。
「チッ、やってやる」
そう言って走り出そうとするドレットに、トムが足をかける。ドレットは顔面から地面に激突した。
「何すんだよ!」
「お前死にたがりかよ、あいつらはオレがやる」
トムは何でもないように言う。
「やるって?一人で?サイクロプスを?ダンジョン深層の魔物よそんなの無茶よ」
「あーもう、リルイ!二人に治療と防御の結界を貼ってやれ」
トムのローブのフードから小さな光が飛んでくる。よく見るとピンク色の髪をツインテールにし、全身真っ白なノースリーブのワンピースを着ている小人だった。
「妖精?」
エリーゼがつぶやくと、リルイと呼ばれた小人は底抜けに明るい幼い声で返事をした。
「はーい!じゃあ二人とも動かないでね~、『痛いの飛んでけ~』それと『バーリア!』」
「じゃあ二人の事宜しく」
「はーい!」
リルイの返事を聞いたトムは抜刀し、陣形を組んでいるサイクロプスに向かって勢いよく走っていく。
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