補習開始
ダンジョン内に入ったトムは、髪を後ろにまとめ動きやすい格好になる。
「エリーゼとドレット、それからクロムも学園が襲撃されたとき何で戦った?」
突然の質問にエリーゼたちは首を傾げる。
「私とマリーは襲撃の瞬間にその場にいて、マリーが戦う選択をしたので私も協力しようと思って」
「何でクロムは逃げなかった?マリーの実力なら分かるが君はまだ中等部の学生だ。逃げても誰も責めないだろう」
「友達を置いてにげられません」
トムの追求に真っすぐと見返し、力強く返す。
「そうか……マリーは友達に恵まれたな。お前らは?」
クロムに優しく微笑み、視線をドレット達に向ける。
「俺達は、どうにかしなきゃと必死だったな。転移陣が出てモンスターが入り口に向かってるのが見えたから時間稼ぎしようとエリーゼと一緒に……なぁ?」
ドレットがエリーゼに同意を求める。
「そうね、非難するように言われたけど教師陣は間に合いそうになかったし、あのままだと校舎に入られてしまうと思ったから」
「その時、魔物の種類や数は確認したか?」
「いや、覚えてないな」
「そうね、あの時は時間稼がなきゃって必死だったから」
「時間稼ぎの割には本気で戦ってたけどな」
そう言いながら、トムのリコを見た。
「リコは何で戦わなかった?リコの実力なら戦っても良かったと思うけど」
「私は、自分の武器を持っていませんでしたし、それに……」
「それに?」
「敵の情報が皆無の状況で戦うのは、死ぬ可能性高くなります。お二人が戦ってるというのに気づいたときには、もう避難先の講堂から動けなくなっていたので……」
リコは顔を伏せながら答える。トムはリコの話を聴いた後、リルイに出してもらった包帯を自分の拳にぐるぐると撒いていく。
「エリーゼ、ドレット、クロムお前らはその時の自分の行動は正しかったと思うか?」
「間違っては無いと思うぜ」
「そうね」
「ハイ!」
ドレットの言葉に他の二人も同調する。その言葉に少し残念そうにする。
「お前らの判断は間違いだ。モンスターが入り口に入ったところで、このアカデミー内には要所要所に魔法の壁が張られている。講堂に避難できれば講師陣が戻るまでの時間は十分に稼げる。それと、中等部のグラウンドだって、マリーとナタリア先生の二人がいれば十分だ。お前らが戦う必要は一ミリもなかった。でもお前らはそこに飛び込んだ。お前らは勇気を出したつもりでいるだろうがそんなものは勇気じゃない。おまえらあの時一瞬でも自分が死ぬ可能性を考えたか?」
トムは淡々と語る。厳しい言葉に反抗心が沸き上がるが、言われたことに心当たりがあったため、言葉に詰まる。
「お前らはなまじ実力がある分、勘違いしやすい。戦闘に常に付きまとう死の恐怖がお前らには足りない。だからこの補習だ。さぁ、全員陣形組んで武器構えろ」
トムの号令の元リコの隣にドレット、その後ろにエリーゼとクロムが並び、それぞれが武器を構える。それを確認したトムは愛刀を置き、包帯でぐるぐる巻きにした拳を握り構える。すると、ドレットたちの体が小刻みに震え石のように固まってしまう。頬を冷や汗が伝い、歯がガチガチと鳴る。ドレット達は自分たちの前に立つ学友に大鎌を構える死神の姿を幻視した。
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